年齢別に矯正治療を知る
成人と小さなお子様では、矯正治療の目的が異なるため治療方法や使用する装置、治療期間などが異なります。また、成人の矯正治療についても、金属を歯の表面につけるブラケット矯正だけでなく透明なマウスピース型の矯正装置もあります。このページでは、年齢に応じてどのような選択肢があり、どのようなゴールを目指すことができるのかをご紹介していきます。
1.未就学児に行う矯正治療
・未就学児の治療のポイント
・使用する矯正装置
2.小学生に行う矯正治療
・矯正治療の対象となる歯並びについて
①上顎前突(出っ歯)
②下顎前突(受け口)
③叢生(デコボコの歯並び)
3.中高生に行う矯正治療
4.成人に行う矯正治療
5.中高生~成人の治療で使用する矯正装置
①歯の表面につけるブラケット装置(唇側からの矯正治療)
②歯の裏側にブラケット装置(舌側矯正)
③マウスピース型矯正装置
1.未就学児に行う矯正治療
未就学児に行う矯正治療では、
「1.口呼吸の改善」
「2.舌癖の改善」
などを主な目的とします。
口呼吸をしていると前歯が前に出てしまい出っ歯になったりします。また、舌で歯を押す癖があると、歯が前の方に倒れていって隙間のあいた歯並びになってしまいます。専用の装置を就寝時に使用することでこれらを改善していきます。
未就学児の治療のポイント
矯正治療はご本人の協力が必要です。治療期間も数年かかりますし、毎日の歯の手入れも必要です。ご本人のやる気がある程度ないと良い結果をえることが難しくなります。また、未就学のお子様ですと、ご家庭の協力がとても重要です。矯正治療自体は何歳でも可能ですので、どうしても嫌であれば、無理にいま始める必要はないでしょう。小学生期に、顎の骨の成長を利用した矯正治療をすれば、より理想的な歯並びとかみ合わせを得られます。
使用する矯正装置
・口呼吸の改善
・舌癖の改善
これらを目的として、写真のような装置を就寝時に使用することで症状の改善を行います。
2.小学生に行う矯正治療
小学生に行う矯正治療は、「1.顎の成長を促進or抑制」「2.歯列弓の拡大」「3.悪習癖の改善」をなどを主な目的にします。
この時期のお子さまの矯正治療は、取り外し可能な装置も使いますし、接着剤で付ける外せない装置も使います。使用する矯正装置は歯並びのタイプは様々に異なるため、同じ人はいませんので、同じ年齢や似たような状態に見えても違う装置を使うことがあります。装置の種類はある程度ご希望に添うことができますから、相談してください。
矯正治療の対象となる歯並びについて
①出っ歯のお子さまをお持ちの保護者は…
上顎前突は、いわゆる出っ歯の状態で奥歯をかみ合わせた状態で、上下の前歯が離れて前後的な隙間がある状態のことを指します。
詳しくは上顎前突ページにて「1.顎の成長を促進or抑制」についてご確認ください。
②受け口のお子さまをお持ちの保護者は…
下顎前突(受け口)とは、奥歯をかみ合わせた際に上下の前歯の位置関係が逆になっており、下の前歯が上の前歯よりも前方に位置している状態のことを指します。
詳しくは下顎前突ページにて「1.顎の成長を促進or抑制」についてご確認ください。
③デコボコの歯並びのお子さまをお持ちの保護者は…
叢生とは、歯並びがデコボコの状態のことを指します。
歯並び・かみ合わせが悪い状態を不正咬合といいます。
その不正咬合の原因はひとつではありません。
詳しくは叢生ページにて「2.歯列弓の拡大」についてご確認ください。
マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)では、6〜10歳の学童期のお子さまの矯正治療にも対応しています。詳しくは以下の専門ページでご紹介しています。
3.中高生に行う矯正治療
中高生の患者様の治療は、基本的に成人の矯正治療と同じものになります。「歯の移動」を目的として、1本1本の歯を動かして歯並びを整えます。
矯正治療において、この時期は治療開始に適している時期とも言えると思います。
通院可能な時期を選択して集中して治療を行うことで、治療期間の短縮化を図ることができ、より高い治療効果が期待できる時期でもあります。
しかし、この時期のお子様は、学校行事や受験、最近では海外留学されるお子様も多くおられるなど、社会生活上で様々な状況変化があり、それらの影響で治療の進行状況が左右されることも多いようです。
マウスピース型矯正装置による矯正治療は、心と体が大きくする中学生・高校生のお子さまにとって多くのメリットがある矯正治療です。以下のページでは、小児矯正とも成人矯正とも違った特徴をもつ、中・高校生の矯正治療についてご紹介しております。
4.成人に行う矯正治療
成人の患者様の矯正治療は、歯並びを揃えてかみ合わせを整えるというのはもちろんですが、一般歯科との緊密な連携が必要な場合が多いです。親知らずの抜歯が必要であったり、虫歯や歯周病の治療を矯正治療と並行して行う必要がある場合もあります。
また矯正治療後に被せ物のやり直しをお願いしたり、ホワイトニングを希望される患者様もおられます。患者様のかかりつけ歯科医と連携をとって矯正治療が円滑に効率よく進められるように計画を立てることも矯正歯科医に求められるところだと思います。
5.中高生~成人の治療で使用する矯正装置
「歯を動かす」ことが目的の矯正治療では、大きく分けて以下の3つのタイプの装置を使って治療を行います。当院ではマウスピース型矯正装置を取り扱っておりますので、ご興味のある方はご相談ください。
①歯の表面につけるブラケット装置(唇側からの矯正治療)
- 特 徴 :費用が安い
- 通院間隔:〇 1ヶ月に1度
- 見た目 :× 目立つ
- 費 用 :◎ 一般的に安い
- 食 事 :▲ 制限がある
- 歯磨き :▲ 手間がかかる
②歯の裏側にブラケット装置(舌側矯正)
- 特 徴 :目立ちにくい
- 通院間隔:〇 1ヶ月に1度
- 見た目 :〇 見えにくい
- 費 用 :× 高い
- 食 事 :▲ 制限がある
- 歯磨き :× 裏側なのでより難しい
■舌側矯正にともなう一般的なリスク・副作用
・機能性や審美性を重視するため公的健康保険対象外の自費診療となり、保険診療よりも高額になります。
・装置に慣れるまで発音しづらいなどの症状が出ることがあります。
・矯正装置を装着している期間は、適切に歯磨きができていないと、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯磨き指導をしますので、毎日きちんと歯を磨き、口腔内を清潔に保つようご協力をお願いします。
・歯磨き、エラスティック(顎間ゴム)の使用、装置の取り扱い、通院などを適切に行なっていただけない場合、治療の期間や結果が予定どおりにならないことがあります。
・成長期の患者さまの治療では、顎骨の成長を予測し、現段階において適切な治療を行ないますが、まれに予期できない顎の成長や変化によって治療法や治療期間が大きく変わることがあります。また、顎の変形が著しい場合には、矯正治療に外科的処置を併用することがあります。
・歯を移動させることにより、まれに歯根の先端がすり減って短くなる「歯根吸収」を起こすことがあります。しかし、適切な矯正力で歯を移動させることでセメント質(歯根表面を覆っている組織)が修復されるため、歯根吸収のリスクを軽減できます。
・歯の周囲の組織は、治療前の状態に戻ろうと「後戻り」する性質があるため、治療後も数ヵ月から1年に1回ほどの頻度で通院いただいて歯の状態を管理し、後戻りを防ぐ必要があります。
③マウスピース型矯正装置
特 徴 :見えにくく取り外し可能
通院間隔:◎ 2~3ヶ月に1度
見た目 :◎ 見えにくい(外せる)
費 用 :〇 少し高い
食 事 :◎ 装置を外して食べられる
歯磨き :◎ 装置を外して磨ける
詳しくはマウスピース型矯正装置による矯正のページをご覧ください