COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

インビザラインの効果はいつから実感できる?矯正治療を成功させるには?

【監修:歯科医師 増岡尚哉】


1999年にアメリカのアライン・テクノロジー社で販売が開始されたマウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)。ワイヤー矯正に比べて、比較的新しい治療方法なので、本当に効果があるのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。

しかし、この治療方法はワイヤーと比べて目立ちにくく、取り外しも可能なことから、2024年9月現在、これまでに世界100カ国以上、1800万人以上(同社調べ)に使用されてきました。

今回はそんなマウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)治療の仕組みや、効果が実感できるタイミング、治療を成功させるコツについてご説明します。

【目次】
1.マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の効果はいつから実感できる?
2マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の特徴と効果
  ・マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の効果はいつから実感できる?
3.マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)で歯が動く仕組み
4.マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の矯正治療を成功させるための4つのポイント
5.マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の効果が実感できない場合

インビザラインの効果はいつから実感できる?

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)でも、ワイヤーによるブラケット矯正でも、長期にわたる治療が必要なため、効果がいつから実感できるのか気にする方も多いようです。

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)による治療では、歯の移動に合わせて作られた複数のマウスピースを定期的に交換していきます。一つひとつ、若干、形が異なるため、マウスピースを取り替えるごとに、歯が移動していることを実感できるでしょう。

歯列矯正によって歯が動く距離は、1ヵ月でわずか0.5mmほどといわれています。そのため、例えば「歯と歯の間に隙間があったのが埋まってきた」というような、目に見える変化を感じられるまでの期間には個人差がありますが、早い患者さんだと「2カ月で効果を感じた」という患者さんもいらっしゃいます。

なかなか変化を実感できなくても、治療前と後の歯並び画像を見比べることで、明らかに改善を感じることができるでしょう。

インビザラインの特徴と効果

歯列矯正というと、歯に銀色の金具を取り付ける「ブラケット(ワイヤー)矯正」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

ブラケット矯正は口を開けた時に目立ちやすく気にされる方も多くいらっしゃいますが、透明なマウスピースを使用した矯正治療では、治療中の見た目や装置の使用感などに違いがあります。

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)では、以下のようなメリットが挙げられます。

  • 透明なマウスピースを装着するため目立たない。
  • 食事や歯磨きの際には取り外せる
  • 矯正器具が金属ではなく、柔らかいプラスチックでできているため、口や唇の粘膜を傷つけることなく、痛みも少ない。

このような多くのメリットがあります。

一方で、従来のブラケット矯正よりも肝心の効果が弱いのではないかと考える方もいらっしゃるようです。しかし、マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は、従来のブラケット矯正以上のメリットを持ち合わせ、高い治療効果が実感できます。

インビザラインで歯が動く仕組み

そもそも、マウスピースによってなぜ歯が動くのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

人間の歯は、それぞれが歯槽骨という骨で支えられていて、歯と歯槽骨の間には「歯根膜」という繊維が存在します。通常、歯根膜は一定の間隔を保っているのですが、マウスピースによって歯に力が加えられると歯槽骨の中で歯が動き、それに合わせるように歯根膜も引っ張られます。

歯根膜は、このバランスが崩れた状態を修正しようと細胞の力を借ります。歯と歯根膜の間隔が窮屈になった側には骨を溶かして隙間を作り、間隔が広がった側には、骨を作って間隔を埋める…こうして歯は移動したまま、歯と歯根膜の距離も元通りになります。矯正治療では、骨を溶かしたり作ったりする、私たちの体に備わっている仕組みを利用して歯を移動させるのです。

しかしながら、歯にかける力は強ければいいというわけではなく適切な力があります。マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)では、マウスピース1枚あたり0.25mmというわずかな移動量で設計していくことで、力をかけすぎたり力が弱くなりすぎたりすることがありません。常に適切な力をコントロールすることができるのがインビザラインの強みの一つです。

また事前にシミュレーションを行って治療を進められるため、後から無駄な微調整を行う必要がありません。これにより、ワイヤーとマウスピースで感じる痛みや違和感が違うのにも関わらず、トータルの治療期間はほとんど変わりません。症例によってはマウスピースの方が早くなる場合もあるほどです。

目標となる歯の位置まで、回り道をせずに歯を動かしていけるのも、この治療方法の大きなメリットの一つではないでしょうか。

インビザラインの矯正治療を成功させるための4つのポイント

1.医師の指示を守る

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)の大きな特徴の一つとして、患者様自身で矯正装置(マウスピース)を管理することがあります。そのため、患者様ご本人がきちんと医師の指示を守ることも、治療成功の秘訣となります。

2.1日22時間以上装着する

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は、担当医の指示のもと、自宅で定期的にマウスピースを交換します。ただ交換するだけでなく、装着時間も重要です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)が推奨する装着時間は1日22時間以上。この装着時間を守らないと、歯を動かすのに必要な力がかかりません。

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は、患者様ご自身で自由に取り外しが可能ですが、食事や歯磨きの際に外したまま放置してしまうと、決められた装着時間を下回ってしまうことがあります。

装着時間が短くなると、マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)治療の効果に影響するだけでなく、マウスピースの形と実際の歯並びが一致しなくなる原因にもなります。外す時間は最小限にしていただくのが、治療成功のポイントだといえるでしょう。

3.器具の装着に慣れる

もう一つのポイントは、マウスピースの装着に慣れていただく必要があるということです。

マウスピースを指ではめた後、よりフィット感を高めるために、「チューイー」というチューブを噛んでいただく場合があります。装着時にアライナーチューイーを使用した場合と使用しなかった場合ではわずかな差が生まれ、そのわずかな差が積み重なると、最終的な治療の結果を左右する可能性がありますので、担当医の指示に従っていただく必要があります。

4.通院頻度を守る

最後にもう一つ。

これはどんな矯正治療にもいえることですが、通院頻度を守り、経過を確認しながら治療することが大切です。とはいえ、マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)は数か月に1度程度の通院回数ですみ、負担が少ないのも嬉しいところです。

インビザラインの効果が実感できない場合

マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)では軽度から複雑な歯並びの方まで効果を実感していただける治療方法です。

もし、「これだけ時間をかけたのに思うような変化を感じられなかった」という方の場合は、どこかに問題があった可能性が考えられます。

例えば、治療計画に無理があったり装着時間が足りなかったために、想定していた通りに歯が動かせず終わってしまうようなケースも考えられます。

まずは治療の前に行うシミュレーションで歯並びのイメージを確認しておくこと、そして、治療中は担当医の指示に従って装着時間を守ることを徹底していきましょう。

用法・装着時間をしっかりと守ったのに、それでも効果が実感できない場合は、治療計画自体に問題があったのかもしれません。

担当医に相談し再度説明を受けたり、他院にセカンドオピニオンを求めてみるのも一つの手でしょう。

当院ではセカンドオピニオンにも対応しております。

当ブログでは、マウスピース型矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)について、皆様により深く知っていただきたいと考えています。インビザラインについて疑問や不安がありましたら、ぜひお気軽に当院にご相談ください。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。