年とともに歯並びが悪化!原因と改善方法を矯正医が解説
口元の様子が以前と変わっていることに気付かれる方の共通点は「若いころは歯並びが良かった」というところです。年齢を重ねたお口に何が起きているのでしょう。
年齢とともに歯並びが悪くなる原因は?噛みにくくなってきたのはなぜ?
大人の口元の悩みから改善方法まで詳しくお話ししていきます。
【目次】
1、歯並びを悪化させる5つの原因
①歯周病・虫歯の悪化
②日常生活の悪習慣・癖
③親知らず
④歯科治療の中断
⑤加齢による口周りの筋力の低下
2、悪い歯並びを放置するリスク
3、歯並びが悪くなったら
①ワイヤー矯正
②マウスピース型矯正装置
③部分矯正
4、歯並びを悪化させないために
歯並びを悪化させる5つの原因
若いころに歯列矯正をして歯並びを整えた方でも、年齢を重ねて「歯茎が下がってきた」「食べ物がよく詰まるようになった」「歯並びが悪くなった気がする」などの症状があらわれる方がいらっしゃいます。
原因には
- 歯周病・虫歯の悪化
- 日常生活の悪習慣・癖
- 親知らず
- 歯科治療の中断
- 加齢による口周りの筋力の低下
主にこの5つが挙げられます。
①歯周病・虫歯の悪化
歯周病や虫歯は気付かないうちに進行します。特に奥歯の虫歯は目に見えにくいので痛みが出てきた頃には大きく削る必要があるくらいまで進む場合があります。
また歯周病が悪化すると歯を支えている周りの骨が溶けることで歯がグラグラ動いてきて噛みにくくなります。
②日常生活の悪習慣・癖
普段何気なくしている頬杖は、下から支える手と頭の重さに歯列が挟まれる状態になり歯列に偏った力が加わるので歯並びが悪くなることがあります。これはうつぶせ寝・横向きで眠ることも同様で、歯列の一部に大きな負担がかかり歯並びに影響します。
寝ている間にしている歯ぎしり、無意識で歯を食いしばることは、歯がすり減る原因になり噛み合わせも変わってきます。また食いしばる力が強いと歯が割れることもあり、ひどい場合は抜歯に至るケースもあります。
③親知らず
親知らずは歯列の一番奥に生える歯です。大人の歯が生え揃って綺麗な歯並びであっても、後から生えてくる親知らずに押されて歯並びがガタガタになることがあります。
特に親知らずが横向きに前の歯を押す状態で生えてくる場合、大人になってからも歯並びを悪くする原因となります。
④歯科治療の中断
虫歯や歯周病の悪化によって歯列の途中の歯を抜歯したまま放置すると、空いているスペースに隣の歯が傾いてきて歯並びが悪くなることがあります。
また、仮歯が取れたままになっているとかみ合うはずの歯が伸びてきて噛み合わせのバランスが悪くなる場合があります。
⑤加齢による口周りの筋力の低下
年齢を重ねると体力が落ちてきますが、お口の周りの筋肉も衰えてきます。頬と舌のバランスで保たれている歯列は、舌の筋力が低下すると内側に傾き、頬の筋肉が弱くなると外側に傾いてくることがあります。お口周りの筋力低下によって口角が下がることにもつながります。
悪い歯並びを放置するリスク
・食べ物がうまく噛めない
歯の最も重要な役目は「物を噛む」ことです。歯並びが悪いままだと噛み合わせのバランスが悪くなり、しっかり噛めなくなります。よく噛まずに食べると胃腸の負担にも繋がります。
・虫歯や歯周病の原因になる
歯並びがガタガタしていると歯ブラシが届かない部分に汚れが溜まりやすくなります。汚れが溜まると虫歯や歯周病が進行する原因になります。
・顎関節症になる
歯並びが悪いと噛みやすい片側で噛む癖や、一部の歯ばかりに噛む力が偏ると顎に負担がかかり顎関節症になる場合があります。顎関節症になると口の開け閉めがしにくくなり、顎関節に痛みが出ることもあります。
・発音がしにくくなる
噛み合わせ・歯並びが悪いと舌の動きが制限されてしまうことで、特定の発音がしにくくなったり滑舌が悪くなったりします。
歯並びが悪くなったら
普段、何も異常がない時から定期的に歯科医院で検診を受けることが大切ですが、それでも歯並びが悪くなった場合は歯科医院で検査をしてもらい原因の追究と適切な治療を受けることが重要です。
頬杖や横向きで寝るなどの悪い習慣を治すことも歯科医院での治療と同様に大切なポイントです。
歯並びの治療は多くの場合、歯列矯正治療を行います。矯正治療は子供がする治療と思われますが大人でも矯正治療はできます。
大人の矯正治療には大きく分けて
- ワイヤー矯正
- マウスピース型矯正装置
- 部分矯正
があります。
①ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は最も一般的な矯正治療です。歯の表面にブラケットという小さな器具とワイヤーを装着して歯に力をかけながら動かしたい方向に歯を移動させます。ワイヤー矯正には表面に装置を付ける「表側矯正」と裏側に装置を付ける「裏側矯正」があります。
〈メリット〉
- 矯正する力の調整が細かくできるので色んな症例に対応できる
- 矯正装置の取り外しが不要
- 歯の移動が速い
- 表側矯正だと費用を抑えられる
- 裏側矯正だと装置が目立ちにくい
〈デメリット〉
- 表側矯正は装置が目立つ
- 歯が動く時の痛みがある
- 表面に装置があるので歯磨きがしにくい
- 食事がしにくい
- 矯正器具が唇や頬に当たってケガをすることがある
【治療期間】
一般的には2年~3年くらいです(個人差や症例によります)
【費用】
60万円~130万円
➁マウスピース型矯正装置
マウスピース型矯正装置は透明なプラスティックのマウスピースを装着して歯を動かしていく矯正治療です。歯の移動を計算して作成されたマウスピースを数週間毎に交換して、少しずつ理想の位置に歯を移動させます。
〈メリット〉
- 透明なマウスピースなので装着していることが目立ちにくい
- マウスピースは取り外せるので食事や歯磨きが普段通りできる
- 歯が動く時の痛みが少ない
- 通院頻度が他の矯正治療より少ないケースが多い
〈デメリット〉
- 1日20時間以上の装着が必要
- マウスピース自体の洗浄が必要
- お水以外の飲み物や食べ物は毎回外して摂り、そのあとは歯磨きが必要
- 付け忘れが多くなると計画通りに進まないことがあり治療期間が長くなる
【治療期間】
一般的には1年~2年半(個人差や症例によります)
【費用】
60万円~120万円
③部分矯正
軽度のガタガタの歯並び、軽度の出っ歯やすきっ歯の様に前歯だけや気になる数本だけなど、部分的に歯並びを整えたい場合に行う矯正治療です。ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも治療ができます。
〈メリット〉
- 気になる部分だけを治療できる
- 一部分だけなので治療期間が短い
- 他の矯正治療より部分的なので費用を抑えられる
- 前歯の場合、根っこが単純な形なので移動しやすく痛みが少ない
- 抜歯をするケースがほとんどない
〈デメリット〉
- 部分矯正で治療できる範囲は限られる
- スペース確保のために歯を削ることがある
- 歯を動かす範囲が限定されるので、理想通りにならないことがある
【治療期間】
多くの場合、6ヶ月~1年半
【費用】
30万円~60万円
歯並びを悪化させないために
・定期検診を受ける
歯並びを悪くする原因である虫歯や歯周病は治療を完了、または定期的なチェックになるまで続けることが大事です。毎日歯磨きをしていても自分では気づかない汚れが溜まってくるので虫歯や歯周病を未然に防ぐには定期的な歯科検診がポイントになります。
・悪い癖や習慣をやめる
何気なくやっている頬杖やうつ伏せ寝・横向き寝、爪を噛む癖などに気付かれたときは意識してやめることで歯並びの悪化を防ぐことに繋がります。
・口周りの筋トレ
歯列は頬の筋肉や舌の筋肉で支えられています。内側と外側両方の筋肉を鍛えることで歯並びが悪くなるのを防ぐことができます。
すでに歯並びが悪くなっている、なっている気がする場合は、先述した悪い癖や習慣がないかまずは意識をして改善しましょう。治療を進めていても悪い癖が治っていないと後戻りしてしまう可能性があります。
年齢を重ねて歯並びが悪くなった場合でもできる治療はあります。
少しでも気になることがあれば当院にご相談ください。
関連記事:
「マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン完成物薬機法対象外)」とは?