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歯列矯正の基礎知識コラム

歯磨きをする女性

「親知らずのまわりに痛みがある」「智歯周囲炎(ちししゅういえん)と診断されたけれど、いったいどういう病気?」と不安な方へ。実は親知らずのケアによって智歯周囲炎になる可能性を軽減できます。今回は、初期症状をはじめ、重症化するとどうなるのか、痛い時の応急処置の方法や予防法などを紹介していきます。

【目次】
1、智歯周囲炎ってお口の中で何が起きているの?
2、智歯周囲炎とは?
  ・智歯周囲炎の症状
3、智歯周囲炎が重症化するとどうなる?
4、智歯周囲炎の治療方法
5、智歯周囲炎を予防するには
6、正しい親知らずのケア方法
  ・親知らずを残すという選択肢

智歯周囲炎ってお口の中で何が起きているの?

智歯周囲炎(ちししゅういえん)は、多くの人には耳馴染みのない名称かもしれません。

智歯とは親知らずのことですから、親知らずのまわりで起きている炎症のことを「智歯周囲炎」といいます。

歯科医院で「智歯周囲炎」という診断を受けて、初めて知ったという人もいるかもしれませんね。まずは智歯周囲炎の症状や原因について解説します。

智歯周囲炎とは?

「智歯」とはお口の中の一番奥の歯、第3大臼歯のことでいわゆる「親知らず」のことを言います。その歯の周りの歯茎が腫れて痛むことを「智歯周囲炎」といいます。

親知らずはまっすぐ生えることが少なく、横を向いて生えたり斜めに倒れて生えたりします。そうすると親知らずの一つ手前の歯との間に隙間ができ、その隙間に食べ物のカスや汚れが溜まることで歯を覆っている歯茎に細菌が増殖し炎症を起こして痛みが出てきます。

また、物を噛むときに親知らずを覆っている歯茎に上の歯が当たって炎症を起こすことがあります。

智歯周囲炎になると、歯茎が腫れるだけではなく顔が腫れたり口が開きにくくなったり、顎下リンパや扁桃腺が腫れて痛むこともあります。親知らずは20歳前後で生えてくる歯なので智歯周囲炎も若い方に多く発生する症状です。

智歯周囲炎の症状

智歯周囲炎は親知らずが原因で引き起こされる症状です。親知らずが生えてくる際に横向きに生えたり、半分歯肉に埋まったままになっていたりするケースがあります。実は真っすぐに生えてこなかった親知らずは、清掃しにくいという問題を抱えています。

親知らずが生える場所は歯列の最も奥なので、歯ブラシが届きにくく、汚れが非常に溜まりやすいのは想像に難くないでしょう。しっかりと歯磨きができない状況が続くと、次第に細菌の温床となる歯垢が蓄積され、衛生状態が悪くなっていきます。そして、親知らずのまわりの歯茎に炎症が起き、智歯周囲炎へと発展していきます。症状の進行段階別の症状は次の通りです。


【進行段階①】軽度の炎症
初期段階で自覚症状を感じることは少ないでしょう。歯茎が腫れる、歯茎を触ると痛むといった症状が見られます。自覚症状を感じる方が少ないため、歯科医院を訪れる人は少ない段階です。


【進行段階②】急性期の初期
次の段階に進むと、食べものを飲み込む時に痛みが起こるようになり、口を開きにくくズキズキと痛むといった症状があらわれます。絶え間なく痛みを感じる状態にあるので、速やかに歯科医院を受診しましょう。


【進行段階③】急性期
さらに悪化すると口が開きにくい症状はそのままに、顎の下のリンパ腺や扁桃腺が腫れたり、食物を飲み込んだときに痛みが走るようになります。また、頭痛や不眠、食欲不振、発熱といった症状も併発します。

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智歯周囲炎が重症化するとどうなる?

智歯周囲炎は歯茎が腫れるだけではなく、重症化すると顎の下や喉のあたりまで腫れて痛みの範囲が広くなることがあり、それに伴って高熱が出ることもあります。

重症化することで次のような病気に繋がることがあります。

1.顎骨骨膜炎
顎の骨の周りにある膜に炎症が及ぶと顎から顔半分が腫れ上がり、脈を打つ痛みを伴うことがあります。

2.急性化膿性リンパ節炎
頸部のリンパ節に炎症が及ぶと、首筋に痛みと熱を伴ったしこりのような腫れが生じます。
顎骨骨膜炎と化膿性リンパ節炎は同時に起こることが多く「歯性感染症」と呼ばれます。

3.蜂窩織炎
口の中の底部や頬の内側の粘膜にむくみ・腫れ・激痛が生じ、38度以上の高熱が出たり身体全体がだるくなります。痛みがひどいせいで口を開けることが難しくなります。

4.敗血症
首のリンパが腫れることで増殖した細菌を食い止めているのですが、細菌が首のリンパを超えて全身に行き渡ってしまう「敗血症」と呼ばれる、命に危険な状態になることがあります。

智歯周囲炎の治療方法

個人差はあるものの、親知らずの炎症がひどくなるとズキズキと耐えがたい痛みがともない、痛みで口が開けない症状が出てくると不安を感じてしまうでしょう。

歯科医院で行われる智歯周囲炎の治療として抗生物質が処方されます。しかし、これは炎症に対する対症療法であって、根本的な問題解決にはなっていません。一時的に痛みがなくなったとしても、根本的に治療しなければいずれ症状が再発するので、できるだけ早く親知らずの治療をします。まずは歯科医院へ行くまでにできる応急処置を紹介します。

家庭でできることとしては、水やイソジンでうがいし、口内の細菌を減らすのも効果的です。ただし、アルコール成分が強いうがい薬は刺激が強いため避けましょう。炎症の原因は細菌ですから、体の抵抗力を上げるために、睡眠や栄養をしっかり取る方法もあります。どうしても我慢できない場合は、鎮静作用がある市販の痛み止め薬を飲みましょう。

智歯周囲炎を予防するには

お口全体の清掃と汚れが溜まりやすい親知らずの周りを特に清潔に保つことが一番大切な予防方法です。

お口の一番奥の歯なので歯ブラシが届きにくいことで汚れが溜まり細菌が増えていきます。歯ブラシだけでは汚れが取れにくい場合は、デンタルフロスや毛先の細いタフトブラシなどの補助器具を使って清掃すると効果的です。

親知らずの多くを歯茎に覆われているケースだと、歯茎の中まで毛先が届きにくい場合が多いです。うがい薬でブクブクうがいをして汚れを取りのぞくことも効果があります。

しっかりケアをしているにもかかわらず炎症を繰り返してしまう場合は、炎症が落ち着いているときに抜歯をすることも一つの予防策と言えます。

また、体調を崩している時やストレスを抱えている時、体力が落ちている時に炎症は起こりやすいです。

普段から栄養バランスの取れた食生活、十分な睡眠時間を心がけ免疫を上げて炎症の起こりにくい抵抗力のある体作りをしていきましょう。

正しい親知らずのケア方法

親知らずの正しいケアの方法を知って智歯周囲炎を予防したいところですが、智歯周囲炎が起こりやすい人は、親知らずの抜歯が必要になるケースもあります。特に親知らずが横や斜めに生えている人や、親知らずが一部もしくは全部埋まっている人は周りに汚れが溜まりやすく、智歯周囲炎を発症するリスクが高く、抜歯を勧められる確率は上がります。

とはいえ、これらに近い状態であっても毎日の歯磨きでセルフケアを行えば、智歯周囲炎の発症リスクを抑えることができます。健康な歯を抜歯せずに置いておくことができれば、歯を失った時に移植することができるなどのメリットもあります。もし歯科医師の診断を受けて「親知らずを残せる」と言われたら、ていねいなケアを心がけて智歯周囲炎を予防しましょう。

親知らずのケアには「ワンタフトブラシ」という、毛先が丸い束になった歯ブラシがおすすめです。一般的なヘッドの大きい歯ブラシでは届きにくいところにもスムーズに届き、汚れを取り除けます。また、定期的に歯科検診を受けて、ブラッシングに問題がないか、智歯周囲炎が進行していないかを確認してもらうのもおすすめです。

親知らずを残すという選択肢

親知らずが痛んだり炎症を繰り返したりするときは、多くの場合抜歯が選択されます。

しかし親知らずを残して他の歯と同様に使うことができるケースがあります。

抜かずに残す親知らずを次に挙げてみます。

1.まっすぐ生えている場合

・親知らずがまっすぐ正常に生えている
・上の歯とのかみ合わせにも問題がなくしっかり噛めている
・他の歯の歯並びにも影響がない
・虫歯や重度の歯周病になっていない

以上の条件が当てはまる場合は抜く必要はありません。

2.他の歯の代替えとして利用できる場合
親知らず以外の大臼歯が虫歯で大きく失われていたり神経がない場合は、将来的に抜いてしまう可能性があります。その際に親知らずが虫歯や歯周病の影響がなく正常な状態でしたら抜いた歯の代替えの歯として使用することができます。

3.完全に埋まっている場合
親知らずが横を向いて骨の中に完全に埋まっている場合、顎の骨に通っている下顎管という神経の管と近接に位置することがあり、抜歯の際にその管を傷つける恐れがあります。また骨を大きく削る必要がある場合など、抜くことで他のリスクが上がる可能性があるケースでは、抜歯をするメリットと比較して抜かない選択をすることがあります。

智歯周囲炎を引き起こす親知らずが、時には歯並びにも影響を与えることがあります。

親知らずのせいで歯並びが悪くなった場合は、歯列矯正で歯並びの悪さを改善することもできます。その際は、日常生活への負担が少ないマウスピース型矯正「インビザライン」を検討してみてもよいですね。

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