虫歯があっても歯列矯正はできる?矯正中に虫歯になったらどうなる?
矯正を始める前の検査で虫歯が見つかった、あるいは矯正中に虫歯が見つかる場合もあります。
虫歯が出来てしまっても、矯正治療を進めることはできるのでしょうか?今回は、「虫歯がある場合の矯正の流れ」についてご紹介いたします。
虫歯があっても歯列矯正は受けられる?
虫歯の進行度は、COからC4で表示されますが、進行度によって対処法が変わります。
初期虫歯「CO」ならそのまま矯正可能
歯のエナメル質が白濁等色の変化が見られるものの、穴が空いていない「CO」の場合は歯を削らずに様子をみていくため、そのまま矯正治療を進めていきます。「範囲が小さい虫歯」は、虫歯を除去後、白い樹脂の詰め物をしていきます。
「C1」以降の虫歯は虫歯治療後に矯正をスタート
すでにエナメル質に穴が空いている「C1」以降の虫歯である場合は、矯正開始前に虫歯治療を終わらせます。
虫歯の治療方法は、虫歯を取り除いた部分に、金属やセラミックの「詰め物」や「かぶせ物」をしていきます。
「C4」のように虫歯が深部まで進行し、大部分が失われている場合は、虫歯を抜き、インプラントやブリッジ、差し歯等で修復します。
しかし、矯正方法によっては、対応できない方法もありますので、事前に矯正医に相談が必要です。
また、お口の状態や選択した素材によっては、矯正後に詰め物やかぶせ物のやり替えが必要となることもあります。
矯正をする前と後では、歯並びや咬み合わせは大きく変化します。その結果、歯と歯の間に隙間ができてしまったり、咬むと痛みがでてしまったりすることがあるため、治療後の歯並びに応じて詰め物や被せ物を作り替えが必要になるケースがあります。
虫歯の大きさや、どんな治療方法を選択するかによって矯正治療の前と後で、どのタイミングで虫歯治療を行うのが適切か検討する必要があります。
矯正歯科医院でカウンセリングを受けるタイミング
まずは、矯正歯科でカウンセリングを受けましょう。虫歯があることなどご不安に感じる点を矯正専門医に相談することもできます。
カウンセリング後、歯並びやお口の状態の診査・診断を受けてから、矯正専門医の指示のもと虫歯治療を始めるのがベストです。
もしも虫歯の痛みが強い場合は、まずは痛みを取ることが優先です。
一般歯科を受診し、痛みを落ち着かせましょう。その後、歯列矯正を考えていることを担当医に伝え、治療方針について相談することをお勧めします。
虫歯治療の目安の通院回数
虫歯の範囲が小さい場合は、虫歯を取ったあと白い樹脂の詰め物をして当日1回で治療を終えることができます。
しかし歯と歯の間に虫歯ができている場合は、詰め物や被せ物が必要になるため、2~3回の通院回数がかかります。
また、神経に達するほどの深い・大きい虫歯になると、神経の治療や歯を支える土台・被せ物の作製を含めて4回以上の通院が必要になります。
歯列矯正中に虫歯が見つかったら
矯正治療中でも、虫歯が見つかれば治療が必要です。ブラケット(ワイヤー)矯正とマウスピース矯正で対応が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
①ブラケット矯正で虫歯が見つかった場合
ブラケット矯正をしている場合は、「ワイヤーが邪魔になって虫歯治療ができない」というケースがあります。この場合は、一時的に矯正装置を外して虫歯治療を行い、治療後にまた装置を再装着するという流れになります。
ブラケットやワイヤーなど矯正装置に汚れや食べカスが残りやすく、通常よりも歯磨きがしにくく、虫歯を見つけにくい環境となっています。歯が動くにつれて、「歯と歯の間」に虫歯が見つかることがあります。
②マウスピース矯正で虫歯が見つかった場合
マウスピース型矯正装置を使った矯正の場合は、装置の取り外しが可能なので、もしも虫歯が見つかったときに比較的スムーズに治療を行うことができます。
また、初期虫歯であれば、虫歯治療と矯正が並行してできる場合もあります。
ただし、虫歯治療で矯正を一時中断した場合かみ合わせが変化していることが考えられるので、新たにマウスピースを設計し直すことが必要になる可能性があります。
どのような矯正装置を選ぶ場合にも、治療期間中は虫歯や歯周病にならないよう、お手入れをしっかりと行うことが大切です。
矯正歯科医院では矯正中に虫歯になった事を教えてくれない?
よくインターネットの知恵袋で「矯正歯科医院では矯正中に虫歯になった事を教えてくれないの?」というような質問がありますが、そういったことはありません。矯正医も歯科医として患者様の歯の状態を第一に考えています。
当院も矯正中に虫歯が見つかれば、ただちに患者様に報告し、治療の有無を提案します。
ただし、矯正医院は歯並びの状態と矯正器具の装着状態を注視するため、小さな虫歯を100%チェックできるかといえばそれには限界があることも事実です。
虫歯になりやすい体質の方でしたら、一般の歯科医院で定期的にクリーニングを行っていただくことをおすすめします。
ワイヤーよりマウスピース矯正が虫歯になりづらいって本当?
「ワイヤー矯正よりマウスピース矯正の方が虫歯になりづらい」とありますが、確かにワイヤー矯正は常に器具が装着している状態で、ワイヤーの部分はブラッシングが不十分で虫歯になりやすい傾向があります。
その一方で、マウスピース矯正は、歯磨きする際にマウスピースを外せるため、歯磨きがしやすく、その観点で虫歯になりづらいといえます。
とはいえ、マウスピース矯正をすれば100%虫歯にならないのかといえば、そうではありません。マウスピースでご飯を食べた後に歯磨きをせずに装着してしまうと、付着した汚れがだ液で洗浄できないため、虫歯になるリスクを高めてしまうこともあるのです。
確かにマウスピース矯正はワイヤーと比べると虫歯になりづらい側面はありますが、それはしっかりと歯磨きができているという前提条件があります。
取り外せて歯磨きできるマウスピースだからこそ、そのメリットを活かして、矯正中はしっかりとブラッシングをしたいものですね。
自宅でできる虫歯予防
虫歯予防には、丁寧な歯磨きが最も効果的です。ワイヤーを使った矯正装置は1回で汚れや磨き残しを取り切ることが難しいので、歯磨きの回数を増やしたり細かく磨くようにしたりしましょう。
歯並びがデコボコしている箇所は、通常の歯ブラシよりも「ワンタフトブラシ」がおすすめです。毛先が筆のようにとがった小さな歯ブラシで、細かな部分の汚れも取りやすく、ワイヤーやブラケットの器具周辺も磨きやすくなります。
≪おすすめの磨き方≫
●バス法
プラーク(歯垢)が溜まりやすい「歯と歯肉の境目」「歯周ポケットの入り口」を重点的に磨く方法です。
歯と歯茎の境目に、歯ブラシを歯茎に対して45度の角度で当て、丁寧に動かします。歯茎へのマッサージ効果や、歯周病予防にも効果的です。
気を付けたいのは、歯ブラシで歯茎を強くこすってしまうこと。歯茎を傷つけてしまい逆効果になってしまいます。歯ブラシは「やわらかめ」を使いましょう。
●スクラビング法
歯ブラシの毛先を歯の面にピッタリと垂直に当てた状態で、細かく小刻みに動かします。大きく動かしすぎると、汚れを溜めこんでしまうので気をつけましょう。
歯列矯正中に虫歯にならないために
矯正を始める前でも、矯正中でも、基本的には歯列矯正は行うことができます。矯正治療の期間に影響を出さないためにも、虫歯で歯を削るリスクはできるだけ下げたいですね。
そのためには、「矯正歯科医医院などで歯磨き指導を受ける」「お口に問題がないか定期検診を受ける」といったことも虫歯予防には欠かせません。
「矯正治療が終わったけど、虫歯ができてしまった」とならないように、矯正前から虫歯予防を心がけましょう。