【監修:歯科医師 / 矯正指導医 増岡尚哉】


スタートラインから成功と失敗への分岐の図

歯並びが悩みで歯列矯正を受けたいけれど、万が一の失敗を恐れているという方は多くいらっしゃいます。歯列矯正で失敗しないために、どのような失敗事例があるのか、また失敗が起きやすい状況についてチェックしておきましょう。

【目次】
1、こんな症状に要注意
2、歯列矯正で起こりやすい8つの失敗例
 2-1 ケース1.噛み合わせが改善しない
 2-2 ケース2.正中が合わない
 2-3 ケース3.顎が痛む
 2-4 ケース4.矯正後の歯の後戻り
 2-5 ケース5.矯正器具による歯の脱灰
 2-6 ケース6.歯根吸収
 2-7 ケース7.口内炎や歯肉炎、虫歯・歯周病が悪化した
 2-8 ケース8.歯ぐきが後退した
3、歯列矯正が失敗してしまう原因
 3-1 不適切な治療計画・検査不足
 3-2 矯正装置の管理不足
 3-3 虫歯・歯周病の発生
 3-4 リテーナーの使用不足
 3-5 過度な力や調整不足によるトラブル
4、歯列矯正で失敗しないために知っておきたいこと
 4-1 治療後に問題があった場合の対処方法
 4-2 信頼できるクリニックを選ぶ

こんな症状に要注意

噛み合わせをよくしたい、美しい歯並びにしたいという考え方から歯科矯正を考える方が増えています。しかし、中には歯科矯正はしたいものの、失敗するかも…と不安を抱えている方もいらっしゃいます。失敗しやすい症例には、それなりの傾向があるというもの。まずは、失敗が考えられる症状を挙げていきます。

歯列矯正で起こりやすい8つの失敗例


ケース1.噛み合わせが改善しない

出っ歯や八重歯などがあり、歯並びがデコボコの状態から矯正治療を受けた場合には、矯正によりデコボコは改善しても、上の歯が出っ歯のまま噛み合わず、改善しないケースがあります。

前歯が出てきてしまい噛み合わせが悪化する開咬(オープンバイト)は出っ歯が目立ち、口を閉じにくくなる症例です。咬合(こうごう)に隙間ができて前歯で食べ物を噛み切ることが難しくなるので、ほかの歯への負担も大きくなります。老け顔に見える場合もあり、矯正で美しい口元を目指すはずなのに、これでは逆効果ですね。

ケース2.正中が合わない

矯正治療が終了したのに、歯並びの中心である「正中」がずれているケースもあります。正中がずれていると、上下の顎や奥歯の噛み合わせもずれていることが考えられます。

顎がずれていると、顔を一目見ただけでも歪みがわかる場合があります。左右で均等に噛むことができないなど、噛み合わせの悪い状態をそのままにしておくと、顎のずれがひどくなってしまうこともあります。もしこのような症状が出てしまったら、早急に対処しましょう。

ケース3.顎が痛む

矯正後、見た目的には歯並びが改善されても、実際には噛み合わせが正しく改善されていない場合があります。噛み合わせが悪い状態をそのままにしておくと、顎に痛みを覚えることもあるので注意が必要です。

痛みのほか、顎を動かす際に音が鳴る、頭痛や肩こりがひどくなるなどの症状が出ている場合は、顎関節症になっているおそれもあります。

ケース4.矯正後の歯の後戻り

矯正治療が終了した後、リテーナー(保定装置)を適切に使用しないと、歯が元の位置に戻ることがあります。これは、歯や骨が安定するまでの期間に十分な固定が行われなかったために起こります。

ケース5.矯正器具による歯の脱灰

ブラケットやワイヤーが装着されたまま、適切な歯磨きができていない場合、歯の表面が脱灰し、白斑ができることがあります。これは、虫歯の初期症状であり、見た目の問題にもつながります。

ケース6.歯根吸収

歯根吸収は、歯列矯正中に歯に過度な力が加わることで、歯の根が短くなる現象です。矯正では、歯をゆっくりと動かすために、歯槽骨や歯根膜の代謝を利用して歯を適切な位置に移動させますが、その過程で少量の歯根吸収が起こることは通常問題ありません。

しかし、無理な矯正計画を立てたり、矯正によって過度な力がかかりすぎると、歯根吸収が進行し、歯の根が露出するなどの深刻な影響が出ることがあります。これにより、歯の安定性が損なわれ、最悪の場合、歯の喪失にもつながります。

ケース7.口内炎や歯肉炎、虫歯・歯周病が悪化した

ブラケットやワイヤーが口内に接触することで、口内炎や歯肉炎が頻繁に起こったり、歯周病や虫歯が悪化したりする場合があります。特に装置が不適切に調整されている場合や、清潔に保たれていない場合にリスクが高まります。

ケース8.歯ぐきが後退した

矯正による強い力が歯にかかりすぎると、歯ぐきが後退し、歯が長く見えることがあります。歯ぐきの健康が損なわれると、歯が不安定になり、将来的に歯の喪失リスクが高まります。

歯列矯正が失敗してしまう原因

不適切な治療計画・検査不足

十分な検査や診断が行われず、無理な矯正計画が立てられると、歯の健康に悪影響が及び、結果として治療がうまくいかないことがあります。適切な治療計画が立てられないと、後戻りや追加費用が発生することもあります。治療前の検査やシミュレーションをしっかりと確認することが大切です。

2. 矯正装置の管理不足

着脱式の矯正装置(マウスピース矯正など)の場合、指示された装着時間(通常1日20時間以上)を守らなければ、歯が予定通りに動かず、治療が長引いたり失敗することがありま
す。固定式の装置に比べ、自己管理が必要なため、注意が必要です。

3. 虫歯・歯周病の発生

ワイヤー矯正では装置が歯に固定されるため、歯磨きがしにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。これらが発生すると治療を中断しなければならず、結果として後戻りや治療期間の延長につながることがあります。マウスピース矯正では装置を外して歯磨きできるため、リスクが比較的低くなりますが、いずれにしても口腔ケアが重要です。

4. リテーナーの使用不足

矯正後の保定期間にリテーナーを適切に使用しないと、歯が元の位置に戻る「後戻り」が起こります。保定期間は矯正期間と同じくらいの時間が必要であり、リテーナーの装着を怠ると、再度矯正治療や追加費用が発生する原因となります。

5. 過度な力や調整不足によるトラブル

矯正中に過度な力がかかりすぎると、歯根吸収や歯ぐきの後退が起こり、歯の健康に深刻な影響を与えることがあります。また、定期的な調整が不足すると、治療の進行が遅れたり、噛み合わせに問題が生じることもあります。適切な力と定期的なフォローが成功のカギです。
これらの原因を防ぐためには、治療計画や検査の確認、矯正装置の管理、口腔ケア、リテーナーの適切な使用が非常に重要です。

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歯列矯正で失敗しないために知っておきたいこと

ここからは、矯正治療後に問題が発生してしまった場合の対処方法をご紹介します。もし、過去の矯正治療で失敗したと感じている方は、ぜひご参照ください。

治療後に問題があった場合の対処方法

1.再治療

治療中に噛み合わせに違和感があるなど問題が生じた場合、その都度担当医に相談することが肝要です。しかし、治療中は問題がなかったのに、治療後に噛み合わせの違和感や痛みを感じた場合、まずは担当医を受診するようにしましょう。場合によっては再治療の可能性もあります。再治療が始まる場合には、事前に、治療内容や期間、費用を具体的に聞いておくとよいですよ。

2..セカンドオピニオン

歯科医により治療方針や経験は異なるため、得意な歯列矯正の方法も異なります。通院中であっても治療方針や方法に不安を感じる場合には、セカンドオピニオンを受けてみましょう。

セカンドオピニオンを求める場合は、矯正専門医など、より専門知識が豊富な歯科医に相談するといいでしょう。新たな視点から問題に気づいてくれる可能性があります。

信頼できるクリニックを選ぶ

歯列矯正にはある程度まとまった費用がかかりますが、費用を抑えることだけを考えてクリニックを選ぶと失敗につながりやすいので注意しましょう。

矯正治療を受けるクリニックを探す際は、最初にインターネットや口コミで情報を収集します。その中でいくつかの医院を比較し、治療方針を確認した上で、複数の医院でカウンセリングを受けるとよいでしょう。治療を受けるなら、事前にきちんと検査を行い、画像や模型を使用して、治療計画をわかりやすく説明してくれるクリニックがおすすめです。

歯列矯正を失敗させないためには、自分の歯並びの特徴を理解し、医師に相談してから治療を進めていくことが大切です。
当院では、無料の初回カウンセリングでしっかりと患者様の症状を理解した上で、治療方法を説明してから、治療を開始します。LINEアプリからも気軽に予約できますので、ぜひご利用ください。


監修者:増岡尚哉

歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

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