「子どもの歯並びが自分に似てきた気がする…」
「親の歯並びは子どもに遺伝するの?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
実は、歯並びは“遺伝だけ”では決まりません。普段の姿勢や口の使い方、食習慣など、生活習慣の積み重ねでも変わることが分かっています。
本記事では、矯正医が「遺伝と生活習慣、それぞれが歯並びに与える影響」をわかりやすく解説。
さらに、家庭でできる予防法や自分で意識できるポイントも紹介します。

【目次】
1.歯並びと遺伝の関係
2.歯並びに影響する生活習慣
 2-1 悪い歯並びを招きやすい生活習慣チェックリスト
 2-2 生活習慣が歯並びに影響する理由
3.親子でできる歯並び予防のポイント
4.自分でできる歯並び予防のポイント
 4-1 毎日の習慣で意識したいこと
 4-2 矯正歯科での定期チェックも重要
5.生活習慣+早めの相談できれいな歯並びを育てよう
6.よくある質問(Q&A)

歯並びと遺伝の関係


歯並びに「遺伝」が関係するのは事実です。顎の骨格や歯の大きさ、顔の筋肉のバランスなど、親から受け継がれる特徴が歯列に影響することがあります。
遺伝しやすい例としては、次のような傾向が挙げられます。

  • 顎が小さく、歯が並ぶスペースが足りない
  • 歯が大きく、重なって生える(叢生)
  • 上下の顎のバランスが合わず、出っ歯や受け口になりやすい

例えば、親御さんが出っ歯や受け口の場合、子どもにも似た骨格的な傾向が現れることがあります。
ただし、これはあくまで“傾向”であり、早い時期の生活習慣改善や咬合育成によって、歯並びの悪化を防げるケースも少なくありません。

歯並びに影響する生活習慣

歯並びを悪くするのは、遺伝だけではありません。
実は、毎日の小さなクセが、歯や顎の成長に影響してしまうことがあります。
まずは、以下のチェックリストで当てはまるものがないか確認してみましょう。

悪い歯並びを招きやすい生活習慣チェックリスト

  • 指しゃぶりや爪を噛むクセがある
  • 口をポカンと開けていることが多い
  • 鼻より口で呼吸している
  • 食事中にあまり噛まずに飲み込んでいる
  • 舌で歯を押したり、前に出したりするクセがある
  • 柔らかい食べ物ばかり食べている
  • 頬杖をついたり、横向きで寝ることが多い

ひとつでも当てはまる場合は、将来的に歯並びの乱れが進むリスクがあります。

生活習慣が歯並びに影響する理由


○指しゃぶり・爪噛み
前歯を前方に押し出す力が長期間かかることで、出っ歯や開咬(前歯が噛み合わない状態)を引き起こします。

○口呼吸・口の開きっぱなし
口周りの筋肉(口輪筋)が弱くなり、顎の成長バランスが崩れてしまうことがあります。出っ歯や受け口の原因にも。

○舌を前に押し出すクセ
舌の力で前歯が外に押され、歯と歯の間に隙間ができる「すきっ歯」や開咬につながります。

○柔らかい食事・噛まない食習慣
噛む力が発達せず、顎の成長が不十分になりやすい傾向があります。結果的に歯が並ぶスペースが狭くなり、ガタガタした歯並び(叢生)を招きます。

○頬杖・寝る姿勢の偏り
長時間同じ方向から圧がかかると、顎の形や歯の向きに左右差が出ることがあります。

このように、「クセの積み重ね」が歯並びの形を変えていくことも少なくありません。
ただし、これらはどれも意識や環境を整えることで改善できる習慣です。
早い段階で気づき、少しずつ直していくことが、将来の歯並びを守る第一歩になります。

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親子でできる歯並び予防のポイント


子どもの歯並びは、家庭での習慣づけが大きく影響します。
親子で楽しく取り組める予防のポイントを紹介します。

◆食事中はしっかり噛む・姿勢を正す
 → 顎の成長を促し、歯が並ぶスペースを確保します。

◆鼻呼吸を意識する(寝ているときの口開きにも注意)
 → 口呼吸のクセを防ぎ、筋肉の発達を助けます。

◆ストロー飲み・指しゃぶりを長期化させない
 → 前歯を押す力が減り、開咬や出っ歯のリスクを軽減。

◆定期的な歯科検診で生え変わりをチェック
 → 顎の成長と歯列の変化を早期に確認できます。

自分でできる歯並び予防のポイント

「今からでもできることはある?」
そう感じている大人や学生の方も、日常生活の工夫で歯並びを守ることが可能です。

毎日の習慣で意識したいこと

◆口を閉じて鼻で呼吸する
 → 口呼吸による筋肉の衰えや歯列の前方移動を防ぎます。

◆頬杖をつかない・横向き寝を避ける
 → 顎の左右バランスを保ち、顔の歪みや噛み合わせのずれを防ぎます。

◆よく噛んで食べる(片側だけで噛まない)
 → 顎や咀嚼筋をバランスよく使い、歯列の安定を保ちます。

◆舌の正しい位置を意識する(上あごに軽く触れる位置)
 → 舌の押し出し癖を防ぎ、歯の前方移動を抑えます。

◆マウスピース(ナイトガード)で歯ぎしりを防ぐ
 → 咬合力の偏りや歯の摩耗を防止し、歯列維持に役立ちます。

矯正歯科での定期チェックも重要

自分では気づきにくい歯並びの変化や、噛み合わせのずれは専門医が見つけやすいものです。
特に次のような場合は、年に1回程度の矯正歯科チェックをおすすめします。

  • 歯並びが少しずつ変わってきた気がする
  • 矯正を終えて数年経つ
  • 歯ぎしりや顎の違和感がある
  • 口呼吸や姿勢のクセが気になる

矯正専門医による定期チェックは、“治療”ではなく“予防”としての受診です。
早期発見・早期対策によって、将来的な治療を最小限に抑えることができます。

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生活習慣+早めの相談できれいな歯並びを育てよう

歯並びの乱れは、遺伝だけでなく日々の生活習慣からも生まれます。
しかし、成長期の過ごし方や日常の意識を少し変えるだけで、将来の矯正費用や期間を大幅に減らせることもあります。
「少し気になるかも」と感じた時が、最初のチェックのタイミングです。
当院では、お子さまから成人まで、一人ひとりの生活習慣や成長段階に合わせた矯正相談を行っています。

よくある質問(Q&A)

Q1. 歯並びはどのくらい遺伝しますか?
A. 顎の骨格や歯の大きさ、歯の生える位置などは遺伝の影響を受けやすいといわれています。ただし、遺伝だけで決まるわけではなく、指しゃぶり・口呼吸・柔らかい食事などの生活習慣が加わることで、より歯列の乱れが顕著になることがあります。

Q2. 両親が出っ歯だと、子どもも出っ歯になりやすい?
A. 骨格や口元の形態が似ているため「なりやすい傾向」はありますが、必ずしもそうではありません。
乳歯期〜永久歯期にかけての舌の使い方・噛む力・姿勢などの要素も影響するため、成長期の生活習慣の改善で予防できる可能性があります。

Q3. 生活習慣で悪化する歯並びのサインは?
A. 以下のようなクセがある場合は注意が必要です。

・指しゃぶりや舌を前に出す癖
・片側だけで噛む
・口を開けたまま呼吸する(口呼吸)
・柔らかい食べ物ばかり食べる

これらは「開咬」「出っ歯」「受け口」などの原因になる可能性があります。

Q4. 子どものうちにできる予防法はありますか?
A. 口を閉じて鼻で呼吸する習慣づけ、よく噛んで食べる、姿勢を正す、舌の位置(上顎につける)を意識するなど、日常生活でできる対策が効果的です。
また、小児歯科や矯正専門医による咬合育成(かみ合わせの成長誘導)も早期の予防としておすすめです。

Q5. 大人になってからでも矯正すれば改善できますか?
A. はい。成長期を過ぎても、歯の位置を動かすことは可能です。
特に近年は、透明マウスピース矯正(インビザラインなど)によって、目立たずに歯並びを改善するケースも増えています。
生活習慣を整えながら、矯正治療でバランスを整えることで見た目と健康の両方を改善できます。

Q6. 矯正治療を始めるタイミングはいつが良い?
A. 目安は「永久歯が生え始める頃(6〜8歳)」または「中学生以降の歯列が安定した時期」。ただし、個人差があるため、早めに一度矯正専門医に相談して経過を見てもらうことが最も確実です。

【関連記事】
歯並びの悪さが遺伝する確率は2%程度。子どもの歯並びを良くするために注意すべきこと

★遺伝による歯列不正の割合や、タイプ別の特徴・改善のヒントを詳しく解説しています。


監修者:増岡尚哉

歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

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