おしゃぶりは、お子さんがグズった時や寝かしつけの際に役立つ、育児のお助けグッズでもあります。毎日、育児や家事に追われて大変という親御さんにとっても、お子さんにおしゃぶりを使うメリットは多いでしょう。
しかしながら、おしゃぶりには注意すべき点もあり、長期間使うことでお子さんの歯並びに悪影響を及ぼしかねません。特に「出っ歯」や「開咬」になりやすいという調査報告もあります。

今回は、「おしゃぶりと歯並びの関係」や「おしゃぶりを使う上での注意点」「おしゃぶりをやめさせる方法」などについて解説します。

【目次】
1.おしゃぶりと「出っ歯」の関係
 1-1 おしゃぶりは「出っ歯」や「開咬」の原因になることも...
2.おしゃぶりの使用で気をつけること
 2-1 ストレスを最小限におしゃぶりをやめさせる方法
 2-2 おしゃぶり対策にあせりは禁物!気長に進めることも大切!
3.2歳頃にお子さんの出っ歯や開咬に気づいたら
4.試してみて!遊び感覚でできる「お口の体操」
5.当院では痛みを感じにくい小児矯正も行っております!

おしゃぶりと「出っ歯」の関係

1歳半、2歳、3歳、5歳において行われるおしゃぶりについての調査で、2歳で指しゃぶりをしていたお子さんは出っ歯(上顎前突)、おしゃぶりをしていたお子さんは開咬(かいこう)が多く見られた、という報告があります。
5歳のお子さんにおいては、さらに高い確率でこの傾向が見られました。
このことから、おしゃぶりの使用は歯並びに影響しやすく、中でも「開咬」になりやすいことがわかります。
また、おしゃぶりの使用期間が長くなればなるほど、症状が強くなりやすいとも言えます。

「開咬」とは、奥歯を噛み合わせた時に上下の前歯の間に隙間ができる歯並びのことを言い、「不正咬合」の1つに分類されます。前歯で食べ物を噛み切れない、奥歯でしか食べ物を噛めないため奥歯に大きな負担がかかり、将来的に顎関節症や、歯が磨り減る、欠けるなどのリスクが考えられます。

しかし、おしゃぶりは、赤ちゃんの寝付きが悪い時などに役立つアイテムでもあり、育児をされている親御さんの助けとなることもあります。ミルクや母乳を飲む時期には「吸う」ことがメインになるため、使用していただくのも良いでしょう。
ただし、食事をする時期になり「噛む」がメインになる頃には、少しずつおしゃぶりを使う回数を減らせるようにしましょう。4歳頃まで使っていると、永久歯の歯並びに影響しやすくなるので要注意です。

おしゃぶりは「出っ歯」や「開咬」の原因になることも...

おしゃぶりを長期間使用していると、おしゃぶりを吸う力で、上の前歯が前方に、下の前歯が内側に傾きやすくなるため、「出っ歯」や「開咬」になりやすいです。指しゃぶりにも同じことが言えます。他にも、舌を前歯に当てる、舌を咬む癖などがある場合も、「開咬」や「出っ歯」になりやすいです。

「開咬」は、奥歯を咬み合わせた時に、上下の前歯の間に隙間ができる歯並びの状態を言います。
「出っ歯」は別名「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」とも呼び、奥歯を咬み合わせたときに前歯が前方に突出している状態を言います。どちらも、見た目や発音、咬み合わせに影響しやすいです。

癖や習慣は無意識の動作であることが多く、このような動作で歯が動くとは考えにくいかもしれません。しかし、歯に小さな力が長期間継続して加わると、正常に生えている歯でさえも動いてしまい歯並びを悪化させることがあります。お子さんのお口周りの癖や習慣は早めに気づいてあげられることが大切です。

おしゃぶりの使用で気をつけること

おしゃぶりは、歯並びに影響を及ぼすことがあるため推奨はされていません。しかし、お子さんの寝付きをよくしたり、ぐずっている時に落ち着かせるのに役立つグッズとして、忙しい子育ての助けとなることもあります。

おしゃぶりを使用する場合は以下の注意点を守って使用するようにしましょう。

①言葉を発する時期になったら、おしゃぶりを使う頻度を減らしましょう
言葉を発することで舌や口が動き、お口周りの筋肉が鍛えられるようになります。しかし、おしゃぶりを長時間使用していると、言葉を発する時間も減ってしまうので、使用時間を減らすように促してあげましょう。

②使用は2歳半までにしましょう
乳歯が生え揃うのは、2歳半から3歳頃にかけてです。その頃にもおしゃぶりを使い続けていると、乳歯の咬み合わせに影響します。「出っ歯」や「開咬」以外にも、「交叉咬合」の可能性も高まります。そのため、おしゃぶりの使用は長くても2歳半までが目安です。

※「交叉咬合」とは、奥歯を咬み合わせた時に、上下の歯が部分的に互い違いに咬み合っている状態を言います。

③お子さんにたくさん話しかけてあげましょう
おしゃべりをたくさんすれば、口がよく動くのでおしゃぶりを使用する頻度も自然と少なくなります。お子さんも親御さんと話せることで安心感を得られ、無理に意識させなくても、おしゃぶりがやめやすくなるでしょう。

④4歳以降の使用は要注意
永久歯の生え変わりは、6歳頃に始まります。4歳以降もおしゃぶりを使用していると、永久歯の歯並びにも影響しやすいため注意が必要です。お子さんにおしゃぶりをやめる気配がなければ、歯科医院に相談してみましょう。

ストレスを最小限におしゃぶりをやめさせる方法

おしゃぶりを吸っている間、お子さんは安心感を得られます。急に使えなくなると、大きなストレスを感じる子もいるでしょう。そのため、お子さんの気持ちに寄り添いながら、おしゃぶりをやめられるように促すことが必要です。おしゃぶり対策に効果が出やすい方法をご紹介します。

◆やめる日を事前に報告する
急にやめさせようとすると、お子さんがびっくりして泣き出してしまうこともあります。お子さんの心の準備をさせてあげるためにも、事前に「この日にはやめようね」と伝えてあげておくとスムーズにやめさせやすいです。日にちは、誕生日の日などお子さんがわかりやすい日にちを設定してあげると良いでしょう。「お兄さん、あるいはお姉さんになった」というきっかけによって、子供自身がやめようと意識することに繋がりやすいです。

◆目につかない所に保管
お子さまの目につかない所、手が届かない所に保管し、すぐに使用できないようにしてみましょう。最初は一生懸命探しますが、毎回探していると探す煩わしさを感じ、少しずつおしゃぶり自体が必要なくなってくることもあります。

◆使用するタイミングを決める
使用するタイミングをお子さんと決めて、使用頻度を少なくするようにしてみましょう。使ったらダメと伝えるよりも、昼寝や夜寝る前のタイミングだけ使っていいよと伝える方が、お子さんも受け入れやすくなります。

◆人との関わりを増やす
親御さんはもちろん、兄弟や祖父母、お友達など、人と関わることで、手を使って遊んだり、おしゃべりする機会も増えやすく、自然とおしゃぶりの時間が減りやすくなります。親御さんだけでやめさせようとすると大変なこともあり、他の人との関わりによって親御さんの気持ちも軽くなりやすいです。

◆外出してみる
公園など子供が遊びやすい場所にお出かけするのも良いでしょう。遊具やおもちゃを使って遊んでいるだけで、自然におしゃぶりを減らすことができます。親御さんと手を繋いで話しながら歩いているだけでも、おしゃぶりの使用が少なくなることもあります。

◆おしゃぶりの乳首部分を切り取る
おしゃぶりは、ちょうどいい柔らかさで、お口にフィットするため口にくわえるとお子さんは安心しやすいです。どうしてもやめてくれない場合は、そのおしゃぶりの先をはさみで少し切ると、口にくわえた時に違和感があり、おしゃぶりを嫌がることもあります。

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おしゃぶり対策にあせりは禁物!気長に進めることも大切!

おしゃぶりをやめさせる対策を行なっても、なかなかうまくいかず、やめさせるタイミングを逃してしまうこともあるかもしれません。そんなときには、お子さんが言葉を理解できるようなった時期に、指しゃぶりやおしゃぶりについての絵本を読み聞かせてあげると効果的です。

おしゃぶりを使わなかった時間は、数分であっても必ず褒めて、できたことを認めてあげてください。そして、少しずつ使わない時間を増やせるようにしましょう。最低でも、永久歯への生え換わりが始まる前にやめることができれば、永久歯の歯並びに影響を及ぼす確率は下がります。

どんなに小さなことであっても、お子さんができたことを褒めてあげながら、親御さんとお子さんがストレスを感じすぎないように、気長に進めるようにしてみましょう。

2歳頃にお子さんの出っ歯や開咬に気づいたら

2歳頃にお子さんの歯並びが「出っ歯」や「開咬」になっていることに気づいた時は、まずは歯科医院に相談してみましょう。年齢的に積極的な治療を行うことが難しい時期でもあるため、永久歯に生え換わる5~6歳頃までは経過をみることがほとんどです。

2歳くらいまでにできる歯並びの悪化対策としては、指しゃぶり、おしゃぶり、舌で前歯を押す癖などを改善するように促すことです。この時期に合った、舌やお口周りの筋肉を鍛える効果的なトレーニング方法を教えてくれる歯科医院もあります。
矯正治療に関しては、乳歯が生えている5歳頃から始められる治療法もあります。矯正治療が必要な場合は、定期的に歯科医院で歯並びの状態を診てもらいながら、お子さんに合った治療時期について相談しておきましょう。

試してみて!遊び感覚でできる「お口の体操」

歯並びの悪化を防ぐには、舌や唇、頬の筋肉を鍛えることが有効です。お口の体操を生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか?2歳くらいのお子さんには遊び感覚で取り組みやすい「あいうべ体操」がおすすめです!お口周りを動かしていると、おしゃぶりの使用も少しずつ減りやすくなります。

○「あいうべ体操」のやり方

  1. 「あ~」と言いながら口を大きく開けてみましょう
  2. 「い~」と言いながら口を横に伸ばしてみましょう
  3. 「う~」と言いながら口を小さくすぼませてみましょう
  4. 「べ~」と言いながら舌を口の外側へ伸ばしてみましょう

1~4の口の動きを1セットとし、1日30セット行うのが理想ですが、小さいお子さんであれば、できる範囲で構いません。声を出さなくてもトレーニング効果があり、必要な道具もないため、場所を選ばず行うことができます。大人の方も、お顔のタルミ、シワの改善、小顔効果が期待できるので、ぜひお子さんと一緒にやってみましょう!

当院では痛みを感じにくい小児矯正も行っております!

当院では、乳歯が生えているうちからできる小児矯正も行っております。矯正治療は痛いイメージをお持ちかもしれませんが、小児矯正では取り外しのできる装置や、軟らかいシリコン素材のマウスピースを使用するので、痛みはほとんど感じません。

お子さんの歯並びの悪化を防ぐために、舌や唇、頬など口周りの筋肉を鍛えるトレーニングにも力を入れております。お子さん1人につき担当スタッフがつくので、お子さんに合ったトレーニングを進められ、安心して治療に通いやすい環境も整えております。

また、お口に関して気になることや悩んでいることを相談していただきやすいように、無料カウンセリングも随時受け付けております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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監修者:増岡尚哉

歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

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