過蓋咬合は自分で治そうとしないで!歯科医師が勧める治療法とは?
笑っているのに下の歯が見えない…そんな経験ありませんか?これを自分で解決しようと思う前に専門家の意見を聞くことをお勧めします。
今回はこの「過蓋咬合」という状態を改善するための歯科医師が推奨する治療法について詳しくご紹介します。
【目次】
1、過蓋咬合とは?
2、過蓋咬合は自分で直すことはできない。
・過蓋咬合を放置したらどうなる?
3、過蓋咬合の最善の治療方法は「歯列矯正」
・歯列矯正の基本的な治療法
・必要があれば補助器具の併用も
・歯列矯正の種類
4、過蓋咬合を治すとしゃくれるって本当?
5、インビザラインでも過蓋咬合を改善できる
過蓋咬合とは?
過蓋咬合とはどんな歯並びなのでしょうか?
これは正常な噛み合わせに比べて過度に深く噛み合っている状態を指し、このため下の歯がほとんど見えずディープバイトとも呼ばれています。
この噛み合わせの特徴は食事をする際に上顎が下顎の動きを制限し、その結果、歯や顎に余計な負荷がかかることです。さらに、深く噛み込むことで下の前歯が上顎の粘膜に接触し傷をつくる可能性があります。
過蓋咬合は自分で直すことはできない。
過蓋咬合を自力で治すことは残念ながら不可能です。
ただし、以下のような日常の習慣を改めることで過蓋咬合の予防に繋がる可能性があります。
- 歯ぎしりや食いしばりを避ける
- 頬杖をつくことをやめる
- 下唇を噛む癖をなくす
- 口呼吸をしないようにする
これらはすべて、顎や歯に余計な負担をかける行為を減らし過蓋咬合を引き起こすリスクを抑えるためのものです。
自分で力を入れて噛み合わせを調整したり、無理に歯を動かそうとしたりすることは絶対に避けるべきです。かえって歯や顎にダメージを与え別の問題を引き起こす可能性があります。
過蓋咬合を放置したらどうなる?
過蓋咬合は自覚症状がほとんどないため放置されがちです。しかし、この状態を放置すると歯の機能に留まらず全身の健康にも様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
深い噛み合わせにより顎に過度のストレスがかかることで、顎関節症を引き起こすリスクがあります。
また、過蓋咬合の状態では特に奥歯に過剰な力がかかるため歯の過度のすり減りを招くことがあります。これは歯の寿命を縮める原因にもなります。
さらに深刻な状況として、下の前歯が上の歯茎、特に前歯の裏側に当たってしまうことがあります。これにより歯茎に傷がついたり感染症のリスクが高まったりすることがあるのです。
過蓋咬合の最善の治療方法は「歯列矯正」
過蓋咬合の治療には矯正治療が最善です。これは自力での調整が不可能であるため専門の歯科医による治療が必要となります。
矯正治療の目的は異常な噛み合わせを正常な位置に調整し適切な咬合関係を回復させることです。
治療では、過度に噛み込んでいる上顎の歯や奥歯の位置を調整することが一般的です。これにより、歯列が正しい位置に移動し正常な噛み合わせが得られるようになります。顎の位置の調整や、必要に応じて特定の歯を引っ張り上げることなど様々な方法によって行われます。
矯正治療には多くの方法があり、ブラケットとワイヤーを使用した矯正治療から見た目に配慮したインビザライン(透明なマウスピース型矯正装置)まで選択肢は様々です。どの治療法を選択するかは、患者様の具体的な状況、希望、必要性に応じて矯正歯科医との相談の上で決定されます。
歯列矯正の基本的な治療法
過蓋咬合の治療法は以下の方法で治療していきます。
挺出
奥歯の位置が低く噛み込んでしまっているため、奥歯の噛み合わせの位置を高くして前歯の噛み合わせの位置を正しい位置に移動させていきます。
圧下
噛み合わせが深いため食い込んでしまっている上下の前歯を歯茎に押し込む方法を「圧下」と言います。この方法で垂直に歯を押し込んでいきます。圧下の移動は難しく矯正用のアンカースクリュー(インプラントアンカー)を使用して移動させることが一般的です。
傾斜移動
前歯の傾斜移動をすることで上下の当たる位置を調整します。あまり前に移動させ過ぎてしまうと出っ歯になってしまうので、奥歯の挺出と傾斜移動を行うことで上下の噛み合わせを調整していきます。
必要があれば補助器具の併用も
治療をする際には必要があれば補助道具を併用する場合があります。
アタッチメント
歯の移動を助けるために樹脂(アタッチメント)が歯の表面に取り付けられることがあります。この樹脂は、歯に適切な圧力を均等に分配しよりコントロールされた方法で歯を動かす手助けをします。治療が終わるとこれらのアタッチメントは取り除かれます。
治療用ゴム(顎間ゴム)
一部の矯正治療では上下の矯正装置にゴムを取り付ける必要があります。これらのゴムは特定の方向への圧力を提供し歯列や顎の位置の調整を助けます。ゴムは引っ張り合う力を利用して顎のアライメントを改善し適切な噛み合わせをサポートします。
歯列矯正の種類
矯正治療にはさまざまな方法があり、その中でも「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正(インビザライン)」は非常に一般的な治療方法です。
ワイヤー矯正
- 歯にブラケットと呼ばれる装置を直接取り付け、ワイヤーを通して歯を徐々に移動させます。
- 装置がつき歯磨きが難しくなるため虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、歯の表面に装置がつくため見た目を気にされる方もいます。
- 治療期間は約2年程度が一般的ですが個々の状況によって異なります。
- 費用は約60万円から80万円程度ですが治療内容により変動します。
マウスピース矯正(インビザライン)
- 透明なプラスチック製のマウスピースを使用し、これを定期的に交換することで歯を段階的に動かしていきます。
- ほとんど目立たないため見た目の面で優れています。取り外しが可能なため食事の際や歯磨きの際には違和感が少なく日常生活に大きな支障をきたしません。
- マウスピースは20時間以上着用する必要があり自己管理が必要です。指示に従わないと治療期間が長引くことがあります。
- 治療期間は約2年程度ですが個人の状況により異なる場合があります。
- 費用は約80万円から100万円程度とワイヤー矯正に比べてやや高額です。しかし、その分見た目の自然さや使い勝手の良さが考慮されます。
どちらの方法も効果的ですが、患者さんのライフスタイル、予算、そして治療に対する具体的なニーズによって最適な治療法が異なります。
過蓋咬合を治すとしゃくれるって本当?
過蓋咬合の治療により顔がしゃくれるのではないかと懸念する方もいるかもしれませんがその背景にはいくつかの理由があります。
一部の人々は矯正治療後に自分の顔に変化を感じることがあります。これは、次の要因が影響している可能性があります。
顎が長く見える
過蓋咬合の場合、噛み合わせが深いため顎が短く見えがちです。治療により上下の歯が適切に噛み合う位置に調整されると顎が伸びたように感じられ結果として顔全体が長く見えることがあります。
顔がシャープになる
噛む力が強いと、特に顔のエラが張って見えることがあります。過蓋咬合の治療を行うと噛み合わせが改善されフェイスラインがシャープになることが多いです。
インビザラインでも過蓋咬合を改善できる
過蓋咬合の治療はインビザラインを使用した方法でも可能です。近年、その目立たない見た目と取り外しの利便性からインビザラインでの治療を選ぶ方が増えています。
インビザラインの利点
- 透明なマウスピースはほとんど見えず、日常生活でのコミュニケーションに影響を与えません。
- 食事や歯磨きの際には取り外し可能なため、これらの日常的な活動において大きな制限を受けることがありません。
考慮すべき点
しかしながら、インビザラインには自己管理が求められる側面もあります。指示された時間(一日に約20〜22時間)装置を口に入れていなければ治療効果が得られにくくなり、期待した結果に到達するための時間が長引く可能性があります。
また、全ての歯の状態や咬み合わせの問題がインビザラインで治療できるわけではないため治療開始前に詳細な診断が不可欠です。
治療法は患者さん一人ひとりのお口の状況やニーズによって異なります。
インビザライン治療を検討されている方は当院までお問い合わせください。