COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】


「うちの子受け口かも?」「子供の歯並びが気になる」など、お子さまのお口の状態を気にされている親御さんは多くいらっしゃいます。子供の予防矯正とはどんな治療なのか、どういった効果が得られるのか、詳しくお話ししていきます。

【目次】
1、子供の歯並びの悪化を食い止める「予防矯正」とは?
   ・予防矯正を検討すべき歯並びの例
   ・こんな癖があったら注意!歯並びに影響を与える癖・習慣
2、予防矯正は実際に効果があるものなのか?
   ・予防矯正のメリット・デメリット
3、予防矯正に使われる代表的な器具3種
   ・①プレオルソ
   ・②ムーシールド
   ・③マイオブレース
4、予防矯正でよくある質問
   ・いつ頃から始めればいい?
   ・保険の対象になるの?
   ・子どもが嫌がったらどうする?
5、お子さんの歯並びのお悩みもお気軽にご相談ください

子供の歯並びの悪化を食い止める「予防矯正」とは?

歯並びが悪くなる原因は遺伝や先天的な要因が3割、後天的な要因が7割といわれています。

後天的な要因とは、普段何気なくしている癖や生活習慣のことをいいます。

例えばいつもお口が開いたままであったり、柔らかい食べ物を好んで食べたりしていると、お口の周りの筋肉が弱くなりあごの発育が促進されず歯並びに大きな影響を与えます。

予防矯正は後天的な癖や生活習慣を改善することによって歯並びの悪化を防ぐ治療方法です。

マウスピースを装着して歯並びやかみ合わせを整えると同時に、将来歯並びを整えた後に後戻りしにくいように、お口の周りの筋肉や舌のトレーニングを行います。他にも正しくかむことや鼻呼吸、正しい姿勢、正しい舌の位置をチェックし、指導やトレーニングを行ってあごの良好な発育を促す治療方法でもあります。あごの発育と歯並びは密接に関係しているのです。

幼少期からこのような予防矯正を行うことによって、将来の矯正費用を抑えることも可能ですし、矯正治療そのものが必要ない場合もあります。

予防矯正を検討すべき歯並びの例

お子さまのお口が以下のような場合は予防矯正をお考えになる事をお勧めします。

【反対咬合】
反対咬合とは、上の前歯より下の前歯が前に出てかみ合う歯の状態です。「受け口」ともいわれることがあります。

【開咬】
開咬とは、奥歯はしっかりかみ合っている状態で前歯がかみ合わず閉じないかみ合わせのことを言います。食べ物をかみ切れないことがあります。

【上顎前突】
上顎前突とは、上の前歯が飛び出ている状態です。「出っ歯」ともいわれることがあります。

【乱食い歯】
乱食い歯とは、歯並びがガタガタな状態のことをいいます。歯磨きがしにくいため、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。

こんな癖があったら注意!歯並びに影響を与える癖・習慣

お子さまの普段の様子に、以下のような癖や習慣がみられるかチェックしてみましょう。

  • いつも口が開いてポカン口になっている
  • 口呼吸をしている、鼻で呼吸ができない
  • 頬杖をつくことが多い
  • 唇をかむ、上下の唇を丸める様にかむ
  • 指しゃぶりをする
  • 爪をかむ
  • 舌を前に出す
  • 話をするときに舌が見えることが多い
  • しっかり噛んで食べていない
  • 小さく切らないと食べない
  • よく水を飲みながら食べる
  • クチャクチャ音を出しながら食べる
  • 食べこぼしが多い
  • 硬い食べものが苦手
  • 姿勢が悪い、あごを前に出すような姿勢、猫背
  • 鼻が詰まっている
  • 発音しにくい言葉がある
  • 口臭がある
  • むし歯が多い

何点か心当たりがある場合は、あごの発育不良を招き、歯並びに悪影響を与えることが考えられるため要注意です。

予防矯正は実際に効果があるものなのか?

予防矯正は乳歯から永久歯に生え変わるタイミングを利用して歯を動かしたり、場合によってはあごの成長に合わせて顎の骨のサイズを拡大したりします。マウスピースの装着時間やトレーニングなど指示を守って行うことで効果が期待できる治療です。

乳歯が永久歯に生え変わる頃の早い時期から始めることで、歯並びを悪くする指しゃぶりやポカン口などの癖や悪い生活習慣が改善されます。その効果によって、将来永久歯の抜歯のリスクが低くなり、きれいな歯並びを目指すことができます。

トレーニングは親御さんと一緒に行うことや、マウスピースの装着時間の管理などが必要になります。小さいお子さまはマウスピースの装着を嫌がることもありますが、予防矯正はお子さまと親御さんの協力がとても必要になります。

予防矯正のメリット・デメリット

予防矯正をするとどんなメリット・デメリットがあるのでしょう。

以下にあげてみます。

【メリット】
成長期に合わせて歯並びを整えることができる
子供の成長に合わせて歯を動かし、場合によっては骨の成長を利用してあごの骨を拡大させて永久歯がきれいに並ぶスペースを作り、歯並びを整えることができます。

歯並びに影響する悪い癖を改善できる
指しゃぶりなどの悪い癖は、歯並びを悪くさせます。早くから予防矯正に取り組むことで、これらの悪い癖を改善し、正しい口の周りの筋肉の使い方が身に付くので成長していっても筋肉を保ち、綺麗に並んだ歯並びを維持することができます。

矯正治療にかかる費用を抑えることができる
高額な治療費がかかるイメージがありますが、歯が生え代わるころ(混合歯列期)にする予防矯正は、ワイヤー矯正のような装置ではなく、マウスピースなどの装置になるので通常の矯正費用より安価となります。

【デメリット】
お子さま本人の協力が必要
予防矯正は装置を付けることや舌・筋肉のトレーニングなど、お子さま自身の協力が不可欠です。装置に慣れるまで少し我慢が必要になります。

治療期間が長い
予防矯正の治療開始は永久歯が生えてくる5~6歳ころから永久歯が生えそろう12歳くらいまで続くことがほとんどです。

上記のメリット・デメリットをよく理解した上で治療の検討をされることをお勧めします。

無料カウンセリング予約

予防矯正に使われる代表的な器具3種

①プレオルソ

「プレオルソ」は永久歯に生え変わる前までに子供の歯並びを改善させるために作られたマウスピース型の矯正装置です。素材はポリウレタンで作れられているので柔らかく装着時の痛みがありません。

マウスピースを装着することで舌やお口の周りの筋肉を鍛え、正しい舌の位置、口呼吸を抑えるといった顎の発育に良い環境を与え、同時に歯並びも改善されます。

プレオルソの特徴は

  • 柔らかい素材で痛みが少ない
  • マウスピースなので取り外しができる
  • 既製品なので歯型を採る必要がない
  • 舌の機能が改善・向上が期待できる

以上のことが挙げられます。

プレオルソでの治療に適している年齢は4歳~10歳までが理想とされています。

マウスピースの装着時間は、寝ている間+日中1~2時間なので学校や保育園のときは外して行けます。

治療期間は6ヶ月~1年くらいで、効果が出るまでは1ヶ月1~2回程度、その後は2ヶ月毎くらいの通院回数となります。

費用は100,000円~150,000円(装置代含む)、別途、装置の調整費用等に3,000円~5,000円/月程度が必要なケースが多いです。

②ムーシールド

「ムーシールド」はマウスピースを装着し、子供の受け口(反対咬合)を改善する治療方法です。乳歯列期の3歳ころから装着が可能で、あごの正しい成長を促します。

受け口は2歳ころまではおよそ50%は自然に治るといわれていて、3歳を過ぎても受け口のままだと、全身の骨の成長と共に下あごが過剰に成長してしまう恐れがあります。

ムーシールドは透明なプラスチックでできていて、寝ている間に装着することで舌やお口の周りの筋肉が鍛えられて受け口(反対咬合)が改善されます。

ムーシールドの特徴は

  • 舌と唇の力のバランスを整える
  • 舌の位置の改善
  • かみ合わせを改善

以上のことが挙げられ、口の周りの筋肉、舌の力、舌の位置、あごのバランスを整えることで受け口を防ぎかみ合わせを正常に導きます。

治療期間は約1年で、お子さまの装着状況によっては長くなる可能性があります。1ヶ月に1回程度の通院が必要です。

費用は装置代が50,000円、別途装置の調整費用等に3,000円~5,000円/月程度が必要なケースが多いです。

③マイオブレース

「マイオブレース」は永久歯が生えそろう前からマウスピースを装着して歯並びに影響する悪い癖を改善し、あごと顔の正しい発育と正しい呼吸、飲み込み方を導くための矯正装置です。素材はシリコンなので柔らかいので装着の違和感が少ないです。

マイオブレースの特徴は

  • 柔らかい素材なので痛みや違和感が少ない
  • マウスピースの取り外しができる
  • 子どものお口周りの悪い癖を取り除くことができる
  • 呼吸・舌の動き・唇の動き・頬の筋肉・飲み込み方などの筋肉を鍛えるプログラムがある

以上のことが挙げられ、あごが正しく発達することで全ての永久歯がきれいに生えそろう十分なスペースが確保されるように導く治療です。

マイオブレースの治療に適している年齢は3歳~15歳といわれています。

マウスピースの装着時間は、寝ている間+日中1時間で、1日2分間のアクティビティと呼ばれるお口周りの筋肉エクササイズを行います。1ヶ月に1回程度の通院が必要です。

費用は150,000円~220,000円で、別途装置の調整費用等に3,000円~5,000円/月程度が必要なケースが多いです。

関連記事:
インビザライン矯正とは?

予防矯正でよくある質問

いつ頃から始めればいい?

予防矯正を始める時期は5歳~6歳が目安で、早ければ3歳から治療を開始できます。あごの成長は9歳頃までといわれているので、それ以降に始めると効果は出にくいと考えられるため、他の方法を検討する必要があります。早く始めることで、あごの成長を促す期間が長くなるので比較的簡単な治療で終えることが多いようです。

保険の対象になるの?

予防矯正も通常の矯正と同じように保険が適用されません。ですが、医療費控除の対象になります。

医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払われた医療費の合計が10万円を超える場合、確定申告によって税金の一部が還ってくる制度です。これは生計を同じにしている家族の医療費を合算して申告ができます。

医療費控除の対象となる項目は一般的なものだと、けがや病気の治療費、入院費、通院費(公共交通機関)、入院時の食事代、薬代です。

大人の審美目的の歯科矯正は医療控除にはなりませんが、かみ合わせが悪く、食事がしにくいことや発音に問題がある場合などは医療費控除の対象となる場合があります。

子どもの矯正の場合は、悪い歯並びが原因で「しっかり噛めない」「発音がしにくい」「顎関節の痛み」など成長段階のお子さまに悪影響を与える可能性があり、その治療のために矯正治療が必要と判断される場合は医療費控除の対象となります。その場合は確定申告の際に歯科医師の診断書(有料)を一緒に提出することで医療費控除を受けられます

子どもが嫌がったらどうする?

お子さまが嫌がる原因はなんでしょう。主な原因と対応を挙げてみます。

1、マウスピース装着時の痛み
マウスピースにはサイズがありますが、既製品なので必ずしもどのお子さまにもフィットするとは限りません。また成長段階のお子さまのお口の状況も日々変化します。痛みの原因は何か?口内炎ができている、乳歯が抜けそう、マウスピースが大きいまたは小さいことなどが考えられます。マウスピースのカットをして調整することもできるので、まずは痛みを排除することを優先します。

2、飲み込みにくい、鼻つまり、話しにくいなどの機能的な不快感
唾液が飲み込みにくいことはトレーニングを行う上では少し我慢が必要ですが徐々に慣れてきます。風邪で鼻がつまっている時は風邪が治るまで装置の装着を休止します。話しにくい場合は、少しの時間外してお話をしてまた装着します。

3、お子さま本人のやる気がない
予防矯正は早ければ3歳から始められる治療もあります。低年齢の為に伝えたいことが理解できない場合もあります。年齢が大きくなっても日々の装着やトレーニングが習慣になるまではお子さまは嫌がることもあるでしょう。何れの場合も親御さんのサポートが重要になります。お子さまと親御さんが一緒に治療に取り組まれることで、お子さまの将来の歯並びのみならず姿勢や顔のバランス、呼吸など全身にいい影響を与えると考えられます。

お子さんの歯並びのお悩みもお気軽にご相談ください

今回紹介した予防矯正や子どもの歯並びについてはもちろん、「ポカン口になっている」「姿勢が悪い」「口呼吸ばかりする」「鼻が詰まっている」「頬杖をつくことが多い」などの歯並びに悪い影響を与えるようなこれらの気になる悪い癖や生活習慣がありましたら、ぜひお気軽に当院にご相談ください。

お子さまの成長は一人一人違い、お口の中も一人一人違います。

当院では随時、お子さまの矯正治療に関してのカウンセリング・ご相談を受け付けております。

お気軽に足を運んでいただき、まずはカウンセリングでご希望やお子様の歯並びに関する心配点や・疑問点などお聞かせ下さい。

関連記事:
インビザライン矯正とは?

無料カウンセリング予約