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歯列矯正の基礎知識コラム

子供の口の中を映す、歯科用の鏡

「うちの子、歯の矯正を考えた方がいいのかな?」と、子供の歯並びに悩む親御さんは少なくありません。矯正にかかる費用や期間もどれくらいかかるのでしょうか?今回は、「矯正の必要性」や「治療開始時期・期間」「矯正費用」についてお伝えしていきます。

【目次】
1、子どもの矯正に必要な費用や期間はどのくらい?
2、子どもの歯並びに矯正が必要な症例と不要な症例
3、子どもの矯正におすすめの開始時期と治療法

子どもの矯正に必要な費用や期間はどのくらい?

子供の歯列矯正は、乳歯から永久歯に生え変わる時期を目安に「第一期」と「第二期」の治療に分かれます。
「第一期治療」は、乳歯のみまたは乳歯と永久歯が混在している3歳~12歳頃。
「第二期治療」は、全て永久歯に生え変わった後の12歳~成人の時期を指します。

では、治療期間や費用にはどのような違いがあるのでしょうか?

第一期治療の矯正費用と目安の期間(3歳~12歳)

第一期治療の目的は、「顎のバランスを整えること」。主に「床矯正」と呼ばれる取り外し式の装置を使います。上下の永久歯が正しい咬み合わせになるように、お子さんの体の成長に合わせて装置を交換し、顎が拡がるように誘導していく治療です。
顎の発育不全は、咀嚼だけではなく滑舌や顔の形にも悪影響を及ぼすので、指しゃぶりや舌の癖などの習慣を正す指導も併せて行い、顎の発育を促します。
*以下、一般的な矯正治療の費用です。
【費用】およそ20~40万円
【期間】約1~3年。その後、「顎の成長」「歯の生え変わり」などを経過観察していきます。永久歯が全て生えそろった頃、第二期治療への移行が必要かどうかを判断します。

第二期治療の矯正費用と目安の期間(12~成人)

第二期治療の目的は「歯並び・咬み合わせの改善」です。第一期治療後、総合的にバランスのとれた歯列に整えることを目指します。一般的な大人の矯正治療とほとんど変わりません。
「歯並びがガタガタしている」など骨格の問題が無い場合は、第一期治療をせずに様子をみて第二期治療からスタートすることもあります。また、第二期治療に移行する年齢には個人差が大きく、正確な時期は身長や手の骨などの変化を見て開始時期を見極めます。
*以下、一般的な矯正治療の費用です。
【費用】およそ25万~65万円
【期間】約1~2年。治療完了後、歯並びを安定させる保定期間(1年ほど)が必要です。2~6カ月に1度のペースで来院し、経過を見ていきます。

装置代以外にかかる費用

*以下、一般的な矯正治療の費用です。
・初回相談料(カウンセリング料)・・・無料~1万円
・精密検査・診断料・・1万~5万円
・調整料・・・3,000円~5,000円
・保定装置代(リテーナー代)・・・2万円~5万円 

「お口の状態」「治療の難易度」なども含め、医院によって費用は異なります。不安なことはカウンセリング時に相談し、納得のいく矯正歯科医院を選ぶことが大切です。

費用についてくわしくはこちら

子どもの歯並びに矯正が必要な症例と不要な症例

歯並びが悪いと、「噛み合わせが悪く、しっかり噛めない」「見た目のコンプレックス」などの悩みを抱える方も少なくありません。本来の正しい咬み合わせの形は、上の前歯が下の前歯の外側に重なる状態です。

矯正が必要か早めに相談をすることをおすすめしているのは、以下の2つ。

  • 下の前歯が上の前歯の外側に重なっている「反対咬合(下顎前突、受け口)」
  • 奥歯が逆になる「交叉咬合(こうさこうごう)」

これらは顎の異常な成長を引き起こす可能性があり、「骨格上の問題」は大人になってからの改善が難しいため、早めに矯正を始めた方が改善しやすいのです。

他にも、「叢生(そうせい)」「上顎前突(出っ歯)」「開咬(かいこう)」も6歳頃を目安に子供の矯正を検討してみましょう。

1)「叢生」
顎と歯の大きさがアンバランスになっていることで、歯並びがデコボコしている状態です。歯磨きがしにくいと磨き残しが溜まりやすく、虫歯になるリスクも高いため、日頃からのケアと定期的な歯科医院でのチェックを受けることが重要になってきます。

2)「上顎前突(出っ歯)」
唇が閉じにくく外傷のリスクが高くなりやすいと言われています。また、前歯が乾燥しやすいため、虫歯や歯周病のリスクも高まります。

3)「開咬(かいこう)」
奥歯で噛んでも前歯の上下に隙間ができてしまうため、「前歯で食べ物を噛み切れない」「サ行タ行などの発音がしづらい」という問題が出てきます。また、顎にかかる負担も大きいため顎関節症のリスクも伴います。

一方で、「歯が少し重なっているだけ」という場合は、経過観察をして早急な矯正は不要という場合もあります。

子どもの矯正におすすめの開始時期と治療法

未就学児

1)    骨格性の受け口の場合:3歳~4歳頃から治療を開始するのがベスト!
「上顎の成長を促し、口周りの筋肉のバランスを整えること」を目的に、受け口を改善していきます。
起きている間1時間+寝ている間だけ装着する「子供用マウスピース」、就寝時のみ装着する「ムーシールド」といった装置を使用します。

2)    叢生、出っ歯の場合:6歳頃から始めるのが最適です。
歯がガタガタになる原因は、顎が小さいことで歯が生えるスペースがないため。また、出っ歯の原因は指しゃぶり・口呼吸・上顎の成長不足・舌癖・下顎自体が後ろにあるということが考えられます。
治療は「歯が生えるスペースの確保」や「口呼吸や舌癖の改善」を目的に、「子供用マウスピース」を使用します。

小学生

小学生の矯正治療(第一期治療)の目的は主に3つあります。
「顎の成長を促進または抑制」「U字に並ぶ歯並びの拡大」「習慣的な悪癖の改善」

成長期の発育段階の時期に「顎を広げる」ことができるため、6歳臼歯が生えて前歯が数本生え変わる頃を目安に矯正をスタートするのがベストです。7~8歳ではすぐに始めた方が良いでしょう。
取り外しができる「マウスピース型矯正装置」や「急速拡大装置」や、固定式の「急速拡大装置」があり、お口の状態に合わせて矯正専門医の指示に従って使用します。

中高生

基本的には成人の矯正治療と同様で、「歯の移動」を目的として歯並びを整えます。
第二期治療を始めるのに、最も適している時期と言えます。
治療方法は、ワイヤーを使った固定式の「ブラケット矯正」や「舌側矯正」、取り外しができる「マウスピース型矯正装置」などがあります。


矯正が必要かどうかという見極めは自己判断では難しく、矯正専門医による診査診断を受けてみなければ分かりません。
しかし、早い段階で子供の歯並びに対して意識を持つことで、現在の状態を把握でき、矯正を始める(考える)タイミングを正しく判断することができます。
歯並びや顎の成長に関する悩みや心配ごとなど、お子さんの矯正に興味があれば一度相談してみてはいかがでしょうか。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。