歯が重なっていたり歯列のアーチからはみ出したりしてガタガタしている歯並びを、専門用語で「叢生(そうせい)」と言います。叢生は前歯で起こりやすく、口元を開けた時に見えやすいことからコンプレックスに感じる方も多くいらっしゃいます。

現在では、短期間で行える治療や、期間はかかるけど歯並びと咬み合わせを根本的に治せる方法など、患者さんのお口の中の状態や生活に合わせて治療方法を選択していただくことが可能です(条件があるため、歯科医師の診断が必要です)。

今回は、叢生の「原因」「治療方法」「実際の治療症例」について解説します。

【目次】
1.ガタガタの歯並び「叢生」に悩まれる方は多いです!
 1-1 八重歯(やえば)や捻転歯(ねんてんし)も叢生の1種
2.歯並びがガタガタになる要因
 2-1 ①先天的な要因
 2-2 ②後天的な要因
3.ガタガタの歯並び「叢生」が及ぼす悪影響について
4.ガタガタの歯並びは短期間で治せる?
 4-1 修復治療での注意点について
5.ガタガタの歯並びを根本から治す治療法
 5-1 マウスピース矯正
 5-2 ワイヤー矯正
6.当院で行った叢生の矯正治療症例をご紹介

ガタガタの歯並び「叢生」に悩まれる方は多いです!

歯並びや咬み合わせが悪いことを「不正咬合」と言います。その中でも日本人に一番多いのが「叢生」(別名「乱杭歯(らんぐいば)」や「ガチャ歯」)で、不正咬合のうち約40%を占めています。

叢生になる原因は様々で、大半は、いくつかの原因が重なって引き起こされます。
主な原因として、歯と顎のサイズのバランスが悪いことが挙げられます。顎のサイズに対して歯が大きかったり、歯のサイズに対して顎が小さかったりする場合、歯が生えるスペースが十分に確保されないことで、歯が生える本来の位置からずれてしまいます。その結果、歯並びがガタガタになってしまうのです。

叢生は、整った歯並びに比べると歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まりやすいため注意が必要です。

八重歯(やえば)や捻転歯(ねんてんし)も叢生の1種

犬歯が唇側に押し出されるようにして生えている「八重歯」や、歯が斜めに捻れるようにして生えている「捻転歯」も、叢生に含まれます。
それぞれの症状について解説します。

■八重歯
八重歯とは、犬歯が唇側に押し出され、歯が並ぶアーチからずれてしまっている状態のことを言います。

八重歯と犬歯について、詳しくはこちら

犬歯は、前歯の真ん中から数えて3番目に位置する歯で、別名「糸切り歯」とも呼ばれています。歯根(歯の根っこ)が長く、歯ぎしりなどの横向きの力や咬む力による衝撃に強いため、他の歯に比べると寿命が長いです。
また、上下の歯が咬み合う時に、最初に接触するという特徴もあります。
以上のことから、犬歯の役割として、咬み合わせの位置を誘導すること、奥歯のすり減りを防ぐことなどが挙げられます。

この様な重要な役割をもった犬歯が八重歯になると、上下の犬歯が正常に咬み合わなくなるため、他の歯がダメージを受けることにも繋がります。
また、犬歯と隣の歯が重なることによって、歯と歯の間にプラーク(歯垢)が蓄積しやすく、虫歯や歯周病リスクが高まりやすいです。

■捻転歯
捻転歯(ねんてんし)とは、歯が外側や内側に捻れたように斜めに生えている状態のことを言います。特に、前歯で起こりやすく、症状が強い場合は90度近く捻れている場合もあります。
原因としては、「乳歯が抜けるのが遅かった」「歯が生えるスペースの不足」「過剰歯の存在」などが挙げられます。

捻転歯の中でも多いのは、前歯の真ん中の2本(中切歯)が左右対称に捻れ、翼を広げたような状態で生える「翼状捻転歯(よくじょうねんてんし)」です。
前歯が前方に出ていて目立ちやすいので、見た目を気にされる方も多いです。

また、隣の歯との重なりが大きく歯磨きがしづらいため、プラーク(歯垢)が蓄積しやすく虫歯や歯周病のリスクが高まりやすいです。

歯並びがガタガタになる要因

歯並びを決める要因は、生まれつき備わった性質である「先天的要因」と、生まれた後で備わる性質の「後天的要因」に分類できます。
これら2つの要因についてみていきましょう。

①先天的な要因

◎歯と顎のサイズのバランス
生まれつき、歯と顎のサイズのバランスが悪いことが考えられます。顎のサイズに対して歯のサイズが小さい、もしくは、歯のサイズに対して顎が小さい場合、歯が生えるスペースが確保されず叢生になりやすいです。

歯や顎のサイズ決定には遺伝が関係しており、両親や祖父母が叢生の場合、その子供や孫も叢生になりやすい傾向があります。
叢生そのものが遺伝するのではなく、骨格や歯のサイズが遺伝することで、同じような歯並びになるのです。

◎生まれつきの歯の本数
乳歯は全部で20本、永久歯は全部で28~32本(親知らず1~4本を含む)あります。この本数以上に多く存在する歯を「過剰歯(かじょうし)」と言います。
歯が多いと、その分永久歯が生えるスペースが少なくなってしまうため、叢生になりやすいです。

②後天的な要因

◎歯の生え換わりタイミング
乳歯が生えている部分の下の骨の中には、永久歯の卵(歯胚)が存在しています。骨の中で永久歯が成長すると、乳歯の根っこが吸収されてグラつき、自然に抜けます。そうして空いたスペースに、永久歯が生えてきます。これが、乳歯から永久歯への生え変わりのメカニズムです。

しかし、乳歯は、大きな虫歯や外的要因(転倒、遊具や友達との衝突など)によって大きなダメージが加わると、早い時期に抜けてしまうことがあります。

乳歯が抜けるタイミングが早いと、永久歯がまだ育っておらず、スペースが空いたままになります。長期間その状態が続くと、隣の歯が徐々に傾いてしまい、永久歯が生えるスペースが狭くなり、永久歯が生える位置がズレて叢生になりやすいです。

◎口周りの癖
「爪噛み」や「舌で前歯を押し出す癖」「頬杖をつく癖」があると、正常な位置に生えている歯でも徐々にずれていくことがあります。小さな力が歯や顎に継続的に加わることで、歯が移動してしまうからです。
無意識に行ってしまいやすい癖は、歯の生え換わりが始まる前に改善していただくと、歯並びに影響しにくくなります。

ガタガタの歯並び「叢生」が及ぼす悪影響について

叢生は、歯と歯が歯が重なり合っていてプラーク(歯垢)が溜まりやすかったり、咬み合わせが悪くなったりするため、お口のトラブルに繋がりやすいです。

◆口元にコンプレックスを感じる
口を開けた時に見えるガタガタの歯並びが気になって、人前で思いっきり笑うことに恥ずかしさを感じたり、食事や会話の時に口元を手で隠したりする方がいらっしゃいます。
こうした口元のコンプレックスにより、せっかくの食事や会話を思い切り楽しむことができなくなってしまいます。自信が持てず、対人関係に消極的になることもあります。

◆虫歯や歯周病の原因になりやすい
歯が重なっていたり傾いたりしてガタガタしていると、歯磨きが難しくなります。毎日磨いていても、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目が磨きにくく、知らないうちにプラーク(歯垢)が蓄積しやすいです。その結果、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。
歯ブラシ以外にもフロスや歯間ブラシなどの清掃補助用具を使用して、より丁寧な歯磨きが必要です。

◆口臭が強くなりやすい
プラーク(歯垢)は細菌の温床で、1mgあたり一億個以上の細菌が存在します。それらの細菌は口臭の原因にもなるため、歯磨きがしにくくプラークが付着したままだと、口臭の悪化にも繋がります。

◆口内炎ができやすい
歯が唇側に出ていると、食事などの時に誤って唇の内側を噛んでしまうことがあります。その傷が口内炎になり、わずかに腫れることで、同じ部分を噛みやすくなってしまい、症状が長引くことがあります。

◆咀嚼が不十分になりやすい
正常な歯並びの場合は、全ての歯がバランスよく咬み合っているため、食べ物をしっかりと咀嚼することができます。そうすると、消化もスムーズで栄養も吸収されやすいです。
しかし、歯並びがガタガタだと、咀嚼が不十分な状態で食べ物を飲み込むことになるため、消化器官へ負担がかかりやすいです。
また、咀嚼による脳への刺激が減ることで満腹感が感じられにくく、食べ過ぎに繋がることもあります。

・将来的に顎関節症が起こる可能性がある
歯並びがガタガタしていると、咬み合わせも悪くなり、顎や顎の関節への負担が大きくなります。
顎関節症は、口を開ける際に痛みを感じたり、食べ物を噛んだ時に痛みがあったり、顎の関節から(こめかみ付近)コキコキあるいはジャリジャリという音がする、などの症状が起こります。
痛みや口の開けづらさを感じる場合は、一度、歯科医院を受診しましょう。

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ガタガタの歯並びは短期間で治せる?

就職活動、仕事、結婚式などの関係で、できるだけ早めに歯並びを治したいと思われる方には、「修復治療」という方法があります。

虫歯治療などにも使用される「コンポジットレジン(歯科専用の白い樹脂)」を用いた修復治療であれば、最短1日で治療可能です。

セラミックなどの被せ物を使用する場合は、早くて1ヶ月程で治療を完了させることができます。
比較的、軽度の叢生であれば即効性が高いです。

修復治療での注意点について

修復治療には注意点もあります。それは、「健康な歯を削らなければならない」ということです。

コンポジットレジンによる治療では、歯を削る量は少ないです。しかし、セラミックによる治療では歯を大きく削る必要があります。そのため、歯がしみたり、歯の神経へダメージが及んだりすることがあります。

また、セラミックは歯質に近い素材ですが、それでも天然歯の方が強度が高いです。したがって、天然歯を削ってセラミックの被せ物を装着すると、欠けたり、はずれたりするリスクも考えられます。

一方、矯正治療では、歯並びや咬み合わせを根本的に改善することができます。以下の項目で詳しく解説します。

ガタガタの歯並びを根本から治す治療法

矯正治療は、見た目はもちろん、咬み合わせも根本的に改善できる治療方法です。期間や費用はかかりますが、歯をより長持ちさせ、治療完了後も快適に過ごしていただくことができるようになります。

矯正治療には、主に「マウスピース矯正」と「ワイヤー矯正」があります。それぞれについて解説します。

マウスピース矯正

◇特徴
透明なマウスピース型矯正装置を使用する治療方法です。
装置が目立ちにくく、取り外しもできるため、矯正治療中でも歯磨きや食事をいつも通りに行うことができます。

マウスピース矯正にはいくつか種類があり、中でもアメリカのアラインテクノロジー社が開発した「インビザライン」は世界のトップシェアを誇ります。

3Dスキャナーで歯の型を読み取り、その場で簡単なシミュレーションを行うことも可能です。シミュレーションでは治療完了後の状態はもちろん、動画により治療経過を確認することができるため、イメージがしやすいです。

ただし、マウスピース矯正装着の装着時間(1日20時間以上)、交換時期(基本的には2週間に1回)を自己管理する必要があります。

◇治療期間
部分矯正であれば半年〜1年くらい
全体矯正であれば約2〜3年くらい
(歯の動きや歯並びの状態によって変動します)

◇費用目安
部分矯正であれば30万円〜60万円くらい
全体矯正であれば80万円〜120万円くらい
(基本料金に追加して毎月の処置料がかかる場合があるので事前に確認しておきましょう)

ワイヤー矯正

◇特徴
ワイヤー矯正とは、歯の面に装置を装着して歯を動かす治療方法です。この方法は2つに分けられ、歯の表面に装置を装着する方法を「表側矯正」、歯の裏側に装置を装着する方法を「裏側矯正」と言います。
表側矯正は装置が目立ちやすいですが、オプションで白や透明の装置を選べる医院もあります。裏側矯正は口を開けても装置が目立ちにくいですが、施術する歯科医師の高い技術が必要です。

歯を大きく動かすことが可能で、難易度の高い症例でも適応できます。ただ、装置が固定されているため、食事や歯磨きのしにくさを感じやすいです。また、歯だけではなく装置周りもしっかりケアできないと、虫歯や歯周病のリスクが高まるというデメリットがあります。

◇治療期間
部分矯正であれば半年〜1年くらい
全体矯正であれば約2〜3年くらい
(歯の動きや歯並びの状態によって変動します)

◇費用目安
部分矯正であれば20万円〜70万円くらい
全体矯正であれば60万円〜120万円くらい
(裏側矯正は高い技術が必要なため費用が高額になりやすく、全体矯正で100~150万円くらいが目安です。矯正治療では基本料金に追加して毎月の処置料がかかる場合があるので事前に確認しておきましょう)

当院で行った叢生の矯正治療症例をご紹介

当院で行った症例について、以下のページでご紹介しております。ご自身の歯並びに近いものが参考になれば幸いです。

症例・治療例はこちらから

当院には、叢生でお悩みの方が多くご来院されています。なかなか治療まで踏み出せない方は、ぜひ一度、当院へご相談ください。

矯正治療では、見た目はもちろん、咬み合わせや歯磨きのしやすさも改善可能で、将来的な虫歯や歯周病リスクを軽減することができます。
矯正治療が完了した際には、「口元を気にせず思いっきり笑えることが嬉しい」と伝えてくれた患者さんもいらっしゃいました。
患者さんが素敵な笑顔を取り戻すお手伝いができれば幸いです。

無料カウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください!

無料メール相談はこちらから


監修者:増岡尚哉

歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

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