COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】


歯周病の症状としては歯茎の腫れや出血が見られます。厚生労働省の報告によると、日本国民の全ての年齢層で約4割は歯茎からの出血が確認されています。

歯周病には進行段階があり「歯肉炎」→「軽度の歯周病」→「中等度の歯周病」→「重度の歯周病」と進んでいくため、歯茎に出血が確認されても早い段階で気づくことができれば治療で状態を改善できることもあります。

歯周病は加齢による免疫力の低下も原因となるため年齢とともに歯周病にかかるリスクは高くなります。特に30代以降から歯周病にかかる人は増加傾向にあります。

今回は「歯周病の進行段階」「歯周病の治療法及び予防法」などについてお伝えします。よろしければご参考にしてください。

【目次】
1、歯周病ってどんな病気?
2、歯周病の4つの進行段階について
  進行段階Ⅰ:歯肉炎
  進行段階Ⅱ:軽度の歯周病
  進行段階Ⅲ:中等度の歯周病
  進行段階Ⅳ:重度の歯周病
3、歯周病を予防する方法について
  ①歯の形にそった正しい歯磨き
  ②歯科衛生士によるクリーニング
  ③生活習慣を見直す
  ④歯列矯正治療により歯並びを整える
4、歯周病予防にはインビザラインもおすすめです!
5、当院では、「後悔のない」矯正に向けて事前説明を重視しています

歯周病ってどんな病気?

歯茎が腫れる原因は主に2つ。「歯肉炎」と「歯周病(歯周炎)」があります。この2つの違いは腫れている(炎症が起きている)範囲にあります。

「歯肉炎」は炎症が起きている範囲が歯茎のみにとどまり、歯を支えている骨(歯槽骨)には影響がでていない状態です。

「歯周病(歯周炎)」は、炎症の影響が歯茎だけではなく歯槽骨にまで及び、レントゲン写真で歯槽骨の吸収が確認できる状態です。歯肉炎になったら必ず歯周病になるわけではありませんが歯肉炎が進行してしまうと歯周病になります。

歯肉炎や歯周病は細菌に感染することにより起こります。細菌は歯と歯茎の間にある溝(歯周ポケット)に生息しています。そのため、歯磨きが不十分で歯と歯茎の間にプラーク(歯垢)や歯石が溜まると細菌が増殖しやすくなります。細菌が増殖すると歯茎の炎症が歯槽骨まで及び歯槽骨が吸収され骨の量が少なくなります。そうなると、歯を支えることができなくなりグラグラと揺れて最終的には抜けてしまうこともあります。歯周病は虫歯と違って痛みがでにくいので知らないうちに重症化してしまうこともあります。

歯周病に早めに気づくことができれば進行を防げる可能性もあります。歯茎が腫れていたり歯磨きの時に出血がみられる方は、一度歯科医院を受診されることをおすすめします。

歯周病の4つの進行段階について

歯周病は段階的に進行します。その進行段階は4つに分類され「歯肉炎」→「軽度の歯周病」→「中等度の歯周病」→「重度の歯周病」というように歯茎や歯槽骨の状態で判断されます。

こちらの項目では、それぞれの段階での症状や治療法についてお伝えします。

進行段階Ⅰ:歯肉炎

歯肉炎は歯周病になる一歩手前の段階で、歯茎には炎症がみられますが歯槽骨には炎症の影響が及んでいない状態をいいます。歯と歯茎の間の溝にプラーク(歯垢)が蓄積し、プラーク中の細菌により細菌感染が生じ歯茎の炎症が引き起こされます。違和感を感じることはあっても痛みを感じにくいため、歯科医院に行くタイミングを逃してしまう方もいるかもしれません。ただし、歯肉炎をそのままにしておくと歯周病に進行するリスクを高めてしまいます。

【症状】
歯茎が赤くプクッと腫れあがり、歯ブラシなどで触れると出血します。歯と歯の間の歯茎は先が尖った形をしていますが、それが丸みを帯びた形状で赤くなっている場合は歯茎が腫れている可能性があります。

【治療】
歯科医院でクリーニングを受けることと毎日の歯磨きが重要になります。歯科医院でのクリーニングでは、歯と歯茎の間の溝などご自身でのケアがしにくい部分まで洗浄してもらえるのでお口の中の細菌が激減します。ただし、放っておくとお口の状態は元に戻るので定期的にクリーニングを受けるのがおすすめです。それと一緒に正しい歯磨きの方法について教えてもらうと、毎日の歯磨きでプラークを除去しやすく歯肉炎の改善や再発の予防に効果的です。歯肉炎はできる限りプラークを除去し細菌を減らすことで完治させることもできます。

進行段階Ⅱ:軽度の歯周病

歯肉炎が進行すると軽度の歯周病になります。歯肉炎では炎症が起こるのは歯茎のみですが、軽度の歯周病では炎症の影響が歯を支えている骨(歯槽骨)にも及びます。歯周病により吸収した骨や退縮した歯茎は元に戻すことは難しいです。

健康な歯と歯茎の間には溝がありこれを歯肉溝(しにくこう)と呼びますが、歯周病が進行するとこの溝が深くなり歯周ポケットを形成し始めます。健康な状態での歯肉溝の深さは1~2mm、歯肉炎や初期の歯周病になり歯周ポケットが形成されると2~4mmくらいの深さになります。歯周ポケットが深くなると歯と歯茎の間にプラーク(歯垢)や歯石が蓄積し細菌が増殖しやすくなり、そのままにしておくと歯周病の進行が加速していきます。そのため、歯科医院での歯周病治療により進行を防ぐことが必要になります。

【症状】

  • 歯茎が腫れ赤くなり、歯ブラシなどで触れると出血します。
  • レントゲン写真上でわずかではありますが骨の吸収が確認できます。
  • 歯周病が進行しても歯磨き時に多少の痛みや違和感を感じることはありますが、強い痛みはでにくいため気づきにくいです。

【治療】
スケーラーを使用して歯と歯茎の間や歯周ポケットの内部に付着したプラーク(歯垢)や歯石を除去し細菌をできる限り少なくします。歯や歯の根っこの間や表面は歯石が付着するとザラザラした状態になり細菌の足場となりやすいです。それをスケーラーを使って除去し表面をツルツルにすることによって再度プラークや歯石が付着しにくいようにします。治療と並行してご自身での歯磨きを正しく行うことで歯茎を改善でき、歯周病の進行を防ぐこともできます。

進行段階Ⅲ:中等度の歯周病

軽度歯周病が進行した次の段階は中等度の歯周病になります。この段階では、骨の吸収がさらに進み骨量が少なくなります。歯周ポケットの深さも4~6mmとなるため、プラーク(歯垢)や歯石がポケット内に入り込み蓄積しやすくなります。歯磨きを頑張るだけでは、深くなった歯周ポケット内部の歯垢や歯石を除去することはできません。そのままにしておくと歯周病が進行し重症化してしまうことも考えられます。歯周病の怖さは少しずつ進行していくためにほとんど痛みが出ないことにもあります。進行を防ぐには、歯科医院でお口の状況に合った治療を受けていただくことが必要になります。

【症状】

  • 歯茎が腫れて赤くなり、歯と歯茎の間にある歯周ポケットから出血が見られ、薄黄色の膿が出てくる事もあります。
  • 炎症が繰り返されることで、歯茎が下がり、歯が長くなったように感じることもあります。
  • 歯周病の進行により内部の骨が減少することで、歯がグラグラと揺れてくることがあります。
  • 歯周病菌は口臭の原因物質を作り出す働きもあるため、歯周病菌が増加し歯周病が進行すると口臭が強くなりやすいです。

【治療】
スケーラーを使用して歯と歯茎の間や歯周ポケットの内部に付着したプラーク(歯垢)や歯石を除去します。ポケット内部のプラーク(歯垢)や歯石も除去するため痛みを伴うこともあります。痛みが強い場合は麻酔を行ってから治療を進めます。歯周ポケット内部深くに歯石が付着していたり付着量が多い場合は、歯茎を切開して歯石を除去する外科治療を行うこともあります。これらの治療と共に自宅で正しい歯磨きを行うことで歯周病の進行を防ぎます。

進行段階Ⅳ:重度の歯周病

歯周病が重症化すると歯を支えている骨(歯槽骨)の吸収が進み骨の量も減ってきます。そうすると歯がグラグラと揺れてきます。重度の歯周病の歯周ポケットの深さは6mm以上とかなり深くなるので、歯石やプラーク(歯垢)がさらに蓄積しやすくなります。重度の歯周病になるとそのまま歯が抜けてしまうこともあります。治療を行っても元の健康な歯茎や骨の状態まで改善することは難しいですが、ご自身の歯をなるべく長く使えるように進行を防ぐことが大切です。また、歯周病菌は全身にも影響を及ぼすことがあるので、歯周病治療により細菌の量をできるだけ減らすことはご自身の健康にも大切なことです。

【症状】

  • 歯茎が腫れて赤くなり、歯茎にイジイジと違和感を感じたり、食べ物を噛んだときに痛みを感じることがあります。
  • 歯と歯茎の間にある歯周ポケットから出血が見られ、薄黄色の膿が出てくる事もあります。
  • 炎症が繰り返されることで、歯茎が下がり、歯が長くなったように感じることもあります。
  • 歯周病の進行により内部の骨が減少することで、歯がグラグラと揺れてくることがあります。
  • 歯の揺れが大きくなってくるとそのまま抜けてしまうこともあります。
  • 歯周病菌は口臭の原因物質を作り出す働きもあるため、歯周病菌が増加し歯周病が進行すると口臭が強くなりやすいです。

【治療】
歯がグラグラ揺れている場合は、隣の歯に一時的に固定して揺れを最小限にしてからスケーラーを使用して歯と歯茎の間や歯周ポケットの内部に付着したプラーク(歯垢)や歯石を除去することもあります。痛みが強い場合は超音波スケーラで軽く洗浄した後、抗生物質(細菌の働きを弱める薬)を直接歯周ポケットに注入して、ある程度痛みがひいてから日を改めて治療を進めることもあります。重度の歯周病では歯の揺れと痛みに注意しながら治療を進めます。

歯周病の進行がひどく歯石取りのみでは歯茎の炎症が改善しない場合は、ご本人から採取した骨あるいは人工骨を移植するなどの歯周外科治療を行うこともあります。これらの治療と共に自宅で正しい歯磨きを行うことで歯周病の進行を防ぎます。

我慢できないような痛みが続いたり歯のグラつきにより食事がしにくいと感じられる場合は抜歯を行うこともあります。抜歯を行った後は人工的に歯を補う治療方法を患者さんと相談しながら決めていきます。

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歯周病を予防する方法について

歯周病の原因は細菌感染です。なるべくお口の中の細菌の量を減らすことが重要になります。そのためには歯磨きのやり方を見直す、定期的にクリーニングを受ける、生活習慣・歯並びの改善を行うことで歯周病リスクを下げることができます。ここでは4つの項目についてそれぞれ詳しくお伝えします。

①歯の形にそった正しい歯磨き

歯周病の原因は細菌感染でその大元の原因はプラーク(歯垢)にあります。細菌が集合するとネバネバとした膜を形成し、外からの刺激(薬剤や免疫機能など)を受けにくくなります。これをバイオフィルムとよびプラーク(歯垢)もバイオフィルムの一種です。バイオフィルムはネバネバしているのでさらに汚れや細菌がつきやすく、歯周ポケットに蓄積すると歯周病のリスクを高めます。

バイオフィルムを除去するのに有効なのは、「毎日の歯磨き」です。歯の丸みに合わせて歯磨きを当てたり、歯と歯の間にはフロスや歯間ブラシを使用していただくと効果的です。また歯と歯茎の間まで歯ブラシで磨くことも大切です。この時に歯茎を傷つけないように気をつけましょう。

最後に舌で歯の表面を触ってみて、ヌルヌルした感じではなくツルツルになっているかどうか確認してみましょう。

②歯科衛生士によるクリーニング

歯と歯茎の間にある溝や歯と歯の間など歯磨きでは磨ききれない部分もあります。歯科医院でのクリーニングではそのような部分を専用の機械で洗浄してバイオフィルム(歯垢)をしっかり除去します。他にも、虫歯や歯茎の腫れ、プラークや歯石が蓄積していないか、歯周ポケットが形成されてないか、深くなっていないか、などについても確認します。

クリーニングを受けていただくとお口の中の細菌は激減しますが数ヶ月たつと元に戻りやすいです。そのため、3ヶ月前後を目安に定期的なクリーニングを受けていただくことをおすすめします。

③生活習慣を見直す

◎免疫力を高める生活習慣を身につけましょう
体の免疫機能を高めるには風邪の予防と同じで、睡眠時間をしっかりとる、バランスの良い食事をとる、適度な運動を心がけることが大切になります。お仕事などでストレスが溜まると、食事の内容や睡眠時間が乱れてしまうことがあると思います。毎日は難しくても、お休みの日だけでも規則正しい習慣を身につけ体の免疫力を少しずつ高められるようにしましょう。食事の面では、抗酸化作用の効果があるビタミンCや血行促進の効果があるビタミンEなどの栄養素を意識的にとっていただくこともおすすめです。

◎タバコの本数を減らす
喫煙は歯周病の大きなリスクとなります。1日10本以上タバコを吸う人と1日10本未満の人を比較すると、前者では歯周病にかかるリスクが5倍も高くなります。喫煙歴が10年以上になると、喫煙歴10年未満の人と比較すると歯周病リスクが4倍も高くなるというデータも報告されています。喫煙している方でも禁煙を行うことによって歯周病にかかるリスクが下がることもわかっています。タバコを吸う本数を減らすことや禁煙を行う事は体の健康と共に歯周病のリスクを下げることにも繋がります。

◎糖尿病にも要注意
糖尿病は血液の中の糖の量が増えるだけではなく、体の免疫機能を低下させます。血液中の糖が余っているのに体の中でその糖が利用されにくい状態にもなっています。歯の周りの組織(歯周組織)でも糖のエネルギーをうまく利用できず、糖の代謝産物が様々なところに沈着し組織の働きを弱めてしまいます。血管の働きを弱めたりコラーゲン代謝が上手くいかないと傷の治りが悪くなりやすいです。糖尿病の方で、生活習慣や食生活を改善できていないと歯周病のリスクも高まりやすいというデータも報告されています。このように生活習慣病の予防を心がけることも歯周病予防に繋がります。

◎食生活の改善
食事はよく咀嚼することで唾液の分泌が促進されます。唾液が多く分泌され循環が良くなるとお口の中の汚れを洗い流してくれる効果があります。1口につき30回の咀嚼を心がけると効果的です。柔らかい食べ物ばかり食べていると咀嚼回数が少なくなりやすいので歯ごたえのある食べ物がおすすめです。

他にも糖分の多い食べ物は控えましょう。食べ物に含まれる糖分はお口の中の細菌のエサとなります。細菌が増殖するとバイオフィルムの形成が促進され、プラークも蓄積しやすくなり、歯周病や虫歯のリスクを高めてしまいます。お菓子を食べる機会が多くなる場合は歯磨きの回数も増やしましょう。

④歯列矯正治療により歯並びを整える

歯列矯正を受けることも歯周病予防にも繋がります。歯並びが悪く咬み合わせが悪いと咬む力が一部に集中していることがあります。そうすると一部の歯に負荷がかかります。その歯に炎症が生じていると、負荷がかかることによってさらに炎症が進行しやすく歯周病のリスクを高めてしまうこともあります。

また、歯並びが悪いことにより歯磨きも難しくなります。特に歯が傾いていたり重なっているところは歯ブラシがあてにくく汚れが蓄積しやすいです。

歯列矯正により咬み合わせや歯並びを改善することで咬み合わせのバランスを良くし、歯並びを整えて歯磨きしやすくすることで歯周病の予防効果は高くなります。

歯周病が進行している方においては矯正治療が難しい場合もあります。一度歯科医院で相談してみましょう。

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歯周病予防にはインビザラインもおすすめです!

矯正治療と聞くと、歯の表面に金属の装置を装着して行うイメージが大きく抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在ではマウスピース矯正という治療方法があります。その1つにインビザラインがあり、世界で1500万人の患者さんが治療を受けています(2023年時点)。そのデータを元に技術の研究と改善を行いながら実績を積み重ねています。

インビザラインは、透明なマウスピースの装置を使用して行う矯正治療です。取り外しもできるため食事や歯磨きも普段と変わらず行うことができます。マウスピース自体も洗浄しやすく約2週間程で新しいものと交換しながら使用するので衛生を保ちやすいです。

歯周病にかかるリスクは30代以降から高まりやすいです。お仕事の関係で見た目が気になる方でもインビザラインなら矯正装置が目立ちにくいです。歯磨きも普段通り行うことができるためケアしやすく歯周病のリスクを減らすことにも繋がります。

インビザラインにより歯並びや咬み合わせを整えることは、見た目が良くなることはもちろん、咬み合わせのバランスを改善し、歯磨きがしやすくなることで歯周病予防の効果も高くなりやすいです。

当院では、「後悔のない」矯正に向けて事前説明を重視しています

当院の矯正無料相談では矯正治療に関するあらゆるご相談にお答えしております。

当院ではしっかりと問診した上で治療計画を立て、丁寧な事前説明を行うように心がけていますのでリラックスしてお越しください。

また、来院診察以外にも無料メール相談からもご相談いただくことが可能です。

お気軽にお問い合わせいただき、まずはご希望をお聞かせ下さい。

それではあなたからのご相談をお待ちしております。

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