COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修医:矯正歯科学会 認定医&指導医 増岡 尚哉】


赤ちゃんが指をくわえたままスヤスヤ眠っている姿を見るととても癒されますね。指しゃぶりは赤ちゃんが成長していく過程には必要な行動ですが、指しゃぶりが長く続くと歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。

指しゃぶりはいつまでにやめさせたらいいの?どうしたら指しゃぶりをしなくなる?

ここでは指しゃぶりと歯並びとの関係を詳しくお話していきます。

【目次】
1、どうして指しゃぶりで歯並びが悪くなるの?
   ・上顎前突・出っ歯
   ・開咬
2、指しゃぶりの放置は危険?大人になっても続く悪影響
3、何歳までにやめさせたらいいの?
4、指しゃぶりをやめさせるためにご家庭でできること
5、指しゃぶりで歯並びが悪くなってしまったら

どうして指しゃぶりで歯並びが悪くなるの?

生後2~4ヶ月頃からみられるという指しゃぶりですが、実はお腹の中にいる時から赤ちゃんは指しゃぶりをしています。これは母乳を吸うための練習ともいわれています。

生後5~6ヶ月頃になると指だけではなく、自分の足や手にした物すべてをお口の中に入れようとします。赤ちゃんのお口の中はとても敏感なので、手にするものがどんなものなのかをお口の中に入れて確認をしています。

ある程度の月齢になってくると指しゃぶりや物をお口の中に入れる行動は自然と治まってきますが、3歳を過ぎて就学するまで続いているようでしたら注意が必要です。3歳頃から歯やあごの骨の成長が活発になる時期で、指を吸うと上の前歯に強い力がかかるので、歯を前方に押し出したり、吸う力で上あごが狭くなったりします。

指しゃぶりの期間が長いと歯並びが悪化することがあり、主に2つの不正咬合の症状が出やすいと考えられます。

上顎前突・出っ歯

上顎前突とは、歯を横から見るとわかりやすいのですが、上の前歯が大きく前に突き出している状態を言います。指しゃぶりで指をくわえると親指で上あごを前方に押し出すような強い力がかかるので、上あごの骨や上の前歯が前に出てしまいます。下の歯は内側に押されるような力がかかり下の前歯は内側に傾きやすくなります。

正常な歯列は、上の歯が下の歯より2~3mm程度前に出ているのが理想ですが、その割合が大きくなると上顎前突といわれます。上顎前突は唇が閉じにくいので口呼吸の原因にもなり、唇を無理に閉じようとするとあごにしわが寄り、怒ったような表情になってしまいます。笑った際には上唇がめくり上がりやすくなり歯茎まで見える「ガミースマイル」の状態になることもありえます。

開咬

開咬とは、奥歯で噛み合わせた時に上下の前歯がかみ合っていなく、隙間が空いている状態をいいます。前歯に隙間があるので麺類やハンバーガーなどの食べ物を前歯でかみ切ることができません。そのため食べ物を噛むときは主に奥歯を使うことで、将来的に奥歯に大きな負担をかけることになります。

また発音時に前歯の隙間から空気が漏れて発音がしにくくなります。特にサ行・タ行はその影響が大きいといえます。前歯の隙間に舌を入れる悪い癖によって、更に開咬がひどくなることもあります。口呼吸をする癖も同様に開咬を悪化させる悪い癖といわれています。

前歯でかみ合わない開咬は、見た目より非常に注意が必要な不正咬合です。奥歯に大きな負担がかかる事で歯の寿命を減らしてしまったり、顎関節などへも悪い影響を及ぼしたりする可能性があるので、早めに治療をしておきたい不正咬合です。

指しゃぶりの放置は危険?大人になっても続く悪影響

小学校に入ってからも指しゃぶりが続くとどうなるのでしょう。

大人の歯に生え代わっていく中でも上の前歯はどんどん前方に押し出され、前歯のかみ合わせが合わず、奥歯ばかりが強い力を受け止めることになります。奥歯に強い力がかかり続けると顎に痛みが出てきたり肩や首がこったりして、身体のゆがみの原因にもなることがあります。

前歯が前に突出していると口が閉じにくくなることでいつも口呼吸となり、口腔内が乾燥しがちになります。そうすると唾液が歯や歯の周りに十分に行きわたらなくなるため、虫歯や歯周病になりやすくなることが考えられます。

前歯が開いていることで発音も不明瞭になるため、話すことへのコンプレックスや、見た目が気になって思いっきり笑えないなどの心の問題も生じます。

指しゃぶりは乳幼児期には大切な成長の行動ではあります。しかし、このように指しゃぶりが長く続き放置していると、大人になってからも歯のみならず様々な身体の痛みや不具合、問題が起こることが考えられるのです。

何歳までにやめさせたらいいの?

指しゃぶりはいつまでにやめさせたらいいのでしょう。

お腹にいるときから指をくわえて母乳を吸う練習をしている赤ちゃんは、生まれてからも自分の手や足をお口の中に入れます。1~2歳くらいまではおもちゃや目に入る物は何でもお口に入れて様々な学習をしていると言われています。

つかまり立ちや歩行ができるようになると頻度は減ってきますが、眠い時や不安な時、心寂しい時は指しゃぶりをする傾向があります。

3歳くらいまでは心の成長にも関与している行動なので異常ではありません。しかし3歳以降に長く指しゃぶりが続いていると気を付ける必要があります。3歳以降は歯や顎の成長が著しく、指しゃぶりによって歯並びやあごの形が変形する原因にもなり得ます。

とはいえ、急に指しゃぶりをやめさせるのも難しいことです。永久歯が生え変わる6歳ころまでには完全にやめられるように、3歳ころから徐々に指しゃぶりから卒業に向けて働きかけることが大切だと言えます。

無料カウンセリング予約

指しゃぶりをやめさせるためにご家庭でできること

指しゃぶりを子供に無理なくやめさせるためには、長い期間をかけることが重要です。

口に入れても大丈夫な苦いマニキュアやハンドクリームを指に付けること、?りつけてやめさせること、あるいは「オバケがやってくるよ」などと言って怖がらせることは心の成長に悪影響となる可能性があるので避けましょう。

指しゃぶりは寂しい時や愛情が欲しい時などのように精神的ストレスによって見られるとも言われています。

見つけた時や指しゃぶりをしそうな時は、愛情をもって

  • 指より違うものへ意識が向くようにやさしく話しかけること
  • 眠るときは手を握りながら歌を歌ったり、背中をトントンしたりして寝かし付けをする
  • スキンシップをしながら手遊びを一緒に行う
  • 指しゃぶりをしなかったときはしっかりほめてあげる

これらのように子供の安心感に繋がる行動をすることが大切です。

また、言葉がわかる年齢であれば、指しゃぶりがいけない理由をお話しして子供自身が納得することも重要と言われています。

指しゃぶりで歯並びが悪くなってしまったら

3歳を超えて長時間の指しゃぶりが見られるようでしたら、前述のように徐々に指しゃぶりから卒業できるように寄り添って対応していくことが望ましいです。

それでもやめられない、歯並びが悪くなっている気がすると思われたら、早めに当院にご相談下さい。

大人になってからの歯科矯正もできますが、長い期間かみ合わせが悪いままとなり、食事や発音がしにくく、口元に自信がないまま過ごす日々となることが考えられます。また場合によっては矯正のために抜歯が必要になることもあります。

それに比べて永久歯が生え揃う前の子供の歯科矯正は、歯やあごの骨の成長に合わせて行うので、歯並びの土台となる歯が生えるスペースを無理なく整えることができます。永久歯の生え変わる時、歯の移動が必要な時も骨がやわらかいうちにすることでスムースに治療が進みやすく、かみ合わせも正常に保つことができます。

また、指しゃぶりや頬杖、口呼吸のように歯やあごの骨に悪い影響のある癖を未然に防ぐことも大きなメリットなのです。

当院では無料のカウンセリングを行っております。お気軽にお問合せください。

関連記事:
インビザライン矯正とは?

無料カウンセリング予約





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。