COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】



「八重歯」と「犬歯」は、よく同じ意味として使用されますが、実は別の意味を持っています。犬歯とは前歯から3番目に生えている歯のことを指しますが、八重歯とは歯が重なりあって生えている状態を指します。犬歯が八重歯になりやすいことで、この二つが混同して使われてしまうことがあるのです。本記事では、八重歯と犬歯の違い、尖った犬歯が気になる方へ有効な治療方法をご紹介いたします。

【目次】
1、犬歯と八重歯は全く別物
2、犬歯が八重歯になる理由
3、八重歯を放置するリスク
4、八重歯は治療した方がいい?
5、尖った歯並びを改善する治療方法
 ・矯正治療
 ・修復治療
6、八重歯になった犬歯を抜いた方がいいの?
7、尖っている犬歯を削ることができる?
8、尖った八重歯はマウスピース型矯正装置でも改善が可能です

犬歯と八重歯は全く別物

犬歯とは前から3番目に生えているひし型の歯で、糸切り歯ともいわれる歯です。
永久歯の中でも根っこが長いため比較的最後まで残ることが多い歯でもあり、根っこが長いため横からの力に強い特徴を持っています。
下の顎を横にずらしたときに、上下の犬歯が当たることで奥歯を守る役割がある歯です。
糸切り歯と呼ばれるように鋭い先端で食べ物を噛み砕くことができるのも重要な役割といえるでしょう。

一方、八重歯とは本来の歯並びの外側に他の歯と重なって生えている歯のことをいいます。
見た目では「かわいい」チャームポイント!と思われがちですが、海外ではあまりいい印象はなく就職や結婚にも悪影響があるといわれるほど・・・
八重歯によって歯みがきが難しくなり虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。

犬歯とは歯の名前、八重歯は歯並びの状態を表すことであり役割などはまったく別物であることがわかります。

犬歯が八重歯になる理由

八重歯になりやすい犬歯。尖っているように見えるため、見た目を気になさる方も多くいらっしゃいます。
犬歯が八重歯になる理由は、大きく分けて遺伝などの先天的要素と食生活など後天的な要素があります。

【先天的要素】
もともと顎が小さい場合、犬歯が生えるためのスペースがなく、歯が埋没してしまい、八重歯になる可能性があります。
また、過剰歯といって、歯が多く生えてくる症例があります。この場合も犬歯が生えるスペースがないため、八重歯になりやすいです。

【後天的要素】
食生活や歯の症状などの後天的な理由で八重歯になることもあります。
例えば、やわらかいものばかりを食べていると、噛む力が育たず、顎の成長が不十分となります。結果、顎が小さいがために、犬歯が生えるスペースが十分に確保できずに、歯列からはみ出してしまい八重歯になってしまうのです。
また、虫歯などで乳歯が先に抜けてしまい、犬歯の生え変わるタイミングが遅れると、他の歯にスペースを占領させてしまい、本来のスペースではない違うスペースから重なるように生えてしまうこともあります。

八重歯を放置するリスク

八重歯を放置しておくと、見た目のコンプレックスだけではなく、以下のようなリスクも生じます。

1.むし歯や歯周病のリスク
他の歯並びとは違った位置にあるため、歯みがきがしにくくなってしまい磨き残しが原因でむし歯や歯周病になってしまうこともあります。


2.他の歯への負担
八重歯になっている歯は、噛み合わせに参加している状態ではありません。そのため噛める歯が減ってしまいます。1本あたりにかかる負担が大きくなり、将来的にみるとその力の負担が長く続いてしまうことにより、歯を支えている歯槽骨に影響が出てしまい歯を失う要因になってしまいます。


3.口内炎のリスク
位置や向きによっては、頬や唇が八重歯にあたって口内炎の原因になることがあります。
転倒や事故の際、八重歯が原因で唇を切ってしまう可能性なども考えられます。


4.口呼吸への影響
八重歯があることで唇が閉じにくくなってしまうことがあります。
口呼吸になり、口の中が乾燥します。唾液の量が減ってしまうと、細菌や汚れを流したり、繁殖を抑える抗菌作用が低下してしまうためむし歯になりやすくなってしまいます。

八重歯は見た目のコンプレックスだけに目が行きがちですが、それ以上にリスクが大きいといえるでしょう。

八重歯は治療した方がいい?

一般的に日本では「八重歯=かわいい」というイメージがあり、八重歯は治療しなくてもよいのでは?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先ほどお伝えしたように、八重歯を放置した場合、さまざまなリスクがあります。また犬歯が八重歯になることで、「噛み砕く」という犬歯の本来の目的を達成できないため、胃荒れなどの原因になることもあるのです。
八重歯は見た目よりも、「犬歯の機能不全」という意味で深刻な問題です。早めの治療をおすすめします。

初診カウンセリングを予約する

尖った犬歯を改善する治療方法

犬歯が八重歯になっていると、犬歯がより強調され、「尖っているように見える」と気にされる方もいらっしゃいます。
尖った犬歯を改善する方法には「矯正治療」と「修復治療」があります。
それぞれの主な治療法を見ていきましょう。

矯正治療

犬歯が尖ったように見える八重歯は、歯並びの不自然な重なりによって起こるため、歯並びを根本から治す矯正治療が一般的な治療法といえます。
八重歯の矯正治療には外にはみ出てしまってしまっている犬歯を並ばせるためのスペースが必要です。そのため、抜歯を必要とするケースがありますが、八重歯になりやすい犬歯を抜歯することはありません。一般的に、八重歯の矯正治療時には第一小臼歯か第二小臼歯を抜歯するケースがほとんどです。

矯正治療には以下の2つの方法があります。

①ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットと呼ばれる突起のようなものを歯の表面につけ、その間をワイヤーで通して、歯を矯正していく方法です。最も古い矯正方法であり、主に歯の表側に矯正装置をつける表側矯正と歯の裏側につける裏側矯正があります。
強い力をかけて歯並びを矯正していくため、対応症例が幅広いといったメリットがあります。その反面、装着の違和感や痛みを感じやすく、表側矯正の場合、矯正器具が目立つといったデメリットもあります。

➁マウスピース矯正
透明なマウスピースを装着して歯を動かしていくもので、比較的新しい矯正方法です。ワイヤー矯正と比べて、目立たない、脱着可能で食事中に外せる、歯が磨きやすい、通院回数が2~3ヶ月に1回程度ですむなどのメリットがあります。
デメリットとしては、脱着可能なため自己管理が難しい、重症な歯並びには対応できないなどが挙げられます。

関連記事:
マウスピース矯正のメリットとデメリット とは?ワイヤー矯正と比較

修復治療

歯にCR(コンポジットレジン)やセラミックなどで被せ物をして平らに見せる方法です。修復治療は、矯正治療と比べて短期間で治療が終了し、見た目を綺麗にすることはできますが、天然歯を削る必要があります。修復治療は即効性もあるものの、被せ物が壊れてしまうケースも多く、また自身の天然歯を削ることで、さまざまなリスク(後述)が生じるため、慎重な判断が求められます。

八重歯になった犬歯を抜いた方がいいの?

犬歯には「奥歯を守る」という役割があり、強い力に耐えられるよう長い根っこを持っている特別な歯です。

そのため、八重歯が気になるからといって安易に犬歯を抜いてしまうことはあまりおすすめできません。矯正医の診断をしっかりと聞いて、納得できる説明でなければ、抜歯するのは一旦待っていただくことをおすすめします。

少なくとも、非抜歯で治療ができないかを一度検討していただいてからでも遅くないと思います。

尖っている犬歯を削ることができる?

犬歯が尖っていて削って形を改善し治療をすることはできます。
ただし、歯の表面のエナメル質という部分を削る必要があります。この、エナメル質は人間の身体のなかでも最も硬い部分です。その部分を削って被せ物をすることで、神経を抜く可能性がでてきます。
神経を取ってしまうと歯が弱くなってしまいむし歯のリスクや歯が割れてしまい失ってしまう可能性もあります。
歯を削って改善する事は期間的にも短期間でできますがリスクも伴う治療なのであまりオススメはできません。

尖った八重歯はマウスピース型矯正装置でも改善が可能です

八重歯はチャームポイントでかわいいイメージがありますが、見た目、むし歯、歯周病のリスクなどデメリットも多いものです。

見た目を改善するのに、安易に八重歯を抜いてしまう・被せ物で治してしまうといったことは、本来は避けていただきたいと思ってます。

八重歯になっている犬歯は噛み合わせでは、非常に大切な役割を持っています。この犬歯を残しながら、全体の噛み合わせを改善するには、矯正治療という選択肢があります。

矯正装置の中ではワイヤーを使った矯正治療が一般的ですが、装置が見えてしまい気になってしまう・・・装置が唇に当たって傷になってしまう・・・などが気になられる方には、マウスピース矯正矯正装置という選択肢もございます。

成人矯正の場合には、犬歯以外の歯(第一小臼歯、第二小臼歯)を抜歯するなどのケースもありますが、八重歯になる原因はスペース不足によるものです。

もし幼児~小学生の時期に治療を始めることができれば、顎の発育を促し、歯が生えてくるスペース自体を確保することもできます。本来必要なスペースが確保できれば、歯並びを治すために抜歯をしてスペースを作る必要もありません。お子様のうちから、お口の中の環境を整えることは成人にはないメリットがあります。

八重歯で悩んでいる、コンプレックスがあるという方、そしてお子さまの八重歯が気になるという方も、一度当院の「初診カウンセリング」でお話をお聞かせください。

ご予約やインターネットまたはお電話からご連絡をお待ちしております。

初診カウンセリングを予約する





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。