奥歯が噛み合わない?インビザライン
こんにちは、エムアンドアソシエイツ矯正歯科の増岡です。
当院には、他院から転院されての治療継続を希望されて来院される患者様が数多くいらっしゃいます。
もちろん様々な理由があってのことですが、中でも多いのが
「奥歯が噛み合わなくなってしまい治らない」
というものです。
この「奥歯が噛み合わない」という症状は、インビザラインを含めたマウスピース型の矯正装置で治療をする場合に生じる特有の症状ではなく、従来のワイヤー矯正でも起こりうることです。
しかし、治療計画であるクリンチェック・シミュレーションには反映されおらず、予期せず起こるため、マウスピース矯正の治療経験が少ない先生からも、どのように治したらよいのかわからない、といった質問を受けることがあります。
マウスピース矯正におけるいわゆる「奥歯が噛み合わない」状態になってしまう原因としては大きく以下の理由が挙げられます。
このような場合は対処法がそれぞれ異なるため、正しく対処しませんといつまでたっても奥歯が噛み合うようになりません。
マウスピースを装着していることで奥歯が沈み込んでしまい(圧下)噛み合わない
マウスピースを装着するとマウスピースの厚みの分(約0.75mm)だけ奥歯が先に当たるようになります。マウスピース矯正では1日20時間程度マウスピースを装着していただくため、常に奥歯にはかみ合わせの力による沈み込み圧力が加わりやすくなります。
このような理由からマウスピースを装着されている患者さんは、皆さま、矯正治療中に奥歯がしっかりと噛み合わないとお感じになられます。
この場合は、マウスピースの装着時間を短くしたり、強く当たる奥歯部分だけをカットしたマウスピースを装着していただくことで通常のかみ合わせに戻ります。
当院でも矯正治療終了間際の患者さんや、治療途中でもマウスピースの作り直しを予定している患者さんなどでは、夜間就寝時のみ装着していただくなど、装着時間を短くしてかみ合わせが安定するかどうかを確認することがあります。

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最終の段階で奥歯のかみ合わせをより緊密にするために2週間、夜間のみマウスピースを装着していただきました。
このように、奥歯が噛み合わないといっても、マウスピースの厚み分程度の量であれば装着時間の調整などで対応することが可能です。
マウスピースと奥歯がずれてしまい、その歯だけ噛み合わない。
ほとんどの歯はピッタリとマウスピースが合っているのに一部の歯だけがずれてしまい噛み合わないという場合、これは以前のブログでご紹介したズレが生じる原因のうち
- 取り外しの回数が多い
- 歯の形からズレが生じやすい
- 移動量が多い
- 難しい移動を行っている
に加えて、マウスピースを噛んではめてしまっていることなどが原因と考えられます。
対処法としては部分的にワイヤーを装着したり、顎間ゴムを使用するなどリカバリーで対応する場合と、全体の型どりをやり直して追加アライナーを作製する場合とが考えられます。

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下の奥歯が1本ずれてしまったため部分的にワイヤーを装着してリカバリーを行いました。

1本だけずれてしまった場合、このようにゴム掛けを行ってマウスピースとのずれを解消することもあります。その際には赤線のようにマウスピースを部分的にカットして使用していただきます。

マウスピース矯正の途中で下の奥歯だけがズレてしまい、上の歯とかみ合っていません。
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追加アライナーを作製して治療計画を修正してかみ合わせを整えました。
ほかの歯が先に当たってしまうために奥歯が噛み合わない。
マウスピース矯正では特に前歯を内側に移動させる際に前歯が先に当たるようになってしまい、奥歯が噛み合わない状態になってしまうことがあります。
元々、交叉咬合(上の歯が下の歯の内側にある状態)であった部分を改善する途中でもこのように奥歯が噛み合わない状態になることがあります。
このような場合にはマウスピースの作り直し(追加アライナー)を行い、計画の修正を行う場合があります。

上あごの横の前歯が下の歯よりも奥に入ってしまっており交叉咬合(クロスバイト)の状態です。
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歯並びは整ってきましたが奥に入っていた上の前歯が下の歯と先に当たってしまい奥歯が噛めない状態です。
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追加アライナーを作製して全体のかみ合わせが緊密になりました。
また、特に抜歯をして歯並びを整える治療計画の場合には前歯を内側に引き込む際にマウスピースが大きく歪んでしまい、前歯だけが強く干渉してしまうことがあるため、これがインビザラインでは抜歯を伴う治療では注意が必要だと言われている理由の一つです。
マウスピースにズレがない場合でも、適切に治療計画を修正しませんと奥歯が前に倒れてしまってさらに噛み合わなくなり、元に戻すにもかなりの時間が必要になってしまいます。

他院で歯を抜いて矯正治療を開始されましたが治療途中で当院に転院された患者様です。奥歯が噛み合わず、倒れてしまっている状態です。

このように奥歯が噛まないという状態はマウスピース矯正の治療中に生じる一時的なものですので、何故そうなってしまったのか原因がはっきりしていれば、適切な対応により理想的なかみ合わせを得ることが可能です。