COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】


口元が前に突き出ている、太っていないのに二重顎に見える、顎と首の境目が分かりにくい、などの顔つきはもしかしたら「アデノイド顔貌」かもしれません。

「アデノイド顔貌」とは?なぜなるのか?など、大人と子供のそれぞれ適した治療方法まで詳しくお話していきます。

【目次】
1、アデノイド顔貌の特徴と原因
2、アデノイド顔貌の見分け方・セルフチェック方法
  ・アデノイド顔貌と「口ゴボ」「出っ歯」は別物
3、アデノイド顔貌を放置するリスク
4、アデノイド顔貌の治し方
  ①大人(中高生以降)
  ②子供(小学生まで)
  ・アデノイド顔貌改善には矯正治療が有効な場合も

アデノイド顔貌の特徴と原因

アデノイドは鼻の奥と喉の交わる部分「咽頭扁桃」のことを指します。この部分が肥大することによって生じる顔つきを「アデノイド顔貌」と言います。

アデノイドの肥大は2歳~5歳くらいまでの子供に多く見られる症状で、成長段階で徐々に大きくなり10歳くらいになると自然と小さくなることが多いです。風邪をひいたときにリンパ組織であるアデノイドが細菌感染することなども肥大する原因の1つと考えられています。

しかし、アデノイドの肥大=アデノイド顔貌ではありません。アデノイドの肥大によって鼻への空気の通り道が塞がれることで口呼吸になりやすくなり、これが長く続くことで生じる顔つきとなります。

子供の頃の口呼吸が大人になっても続いていると成長とともにアデノイド顔貌になりやすくなります。

アデノイド顔貌は横顔を見ると分かりやすく、口元が前に出たり下顎が上顎より引っ込んだような顔つきになる傾向にあります。このような顔つきは「アデノイド顔貌」と呼ばれています。

アデノイド顔貌の見分け方・セルフチェック方法

アデノイド顔貌は口呼吸が長く続くと起こりやすいのですが、鼻腔が塞がれることで様々な症状を伴う特徴があります。アデノイドが肥大することで口呼吸が長く続くと顔周りの筋肉が発達しないため、上顎が前に出やすくなったり、下顎の成長不足によって顎が小さいままとなり歯並びも悪くなります。

また普段からポカンと口が開いたままになると口腔内が乾燥しやすくなるので唾液での自浄作用が低下して虫歯のリスクも上がります。

チェック項目を挙げます。

  • 横顔を見た時口元がEライン(鼻と顎を結ぶ線)より前に突き出ている
  • 下顎が上顎より引っ込んでいる(後退している)
  • 下顎から首の境目が分かりにくい
  • 二重顎になっている
  • 口呼吸をしている
  • いつも口が開いているポカン口になっている
  • いびきをかきやすい
  • 歯並びが悪い
  • 鼻が詰まりやすい

これらのチェック項目に当てはまるものが多いとアデノイド顔貌の可能性があります。詳しくは歯科医院での精密な検査を受けることをおすすめします。

アデノイド顔貌と「口ゴボ」「出っ歯」は別物

「口ゴボ」は「口元」が「ゴボ」っと前に出ている状態を表し、主に上下の顎が前に出ている歯並びや骨格の状態を口ゴボと言います。目安となるのが、横顔を見た時にEラインと呼ばれる鼻と顎を結んだラインから口元が大きく突き出ているかどうかによって口ゴボと判断されることが多いようです。

出っ歯は上顎の前歯が下の歯に比べて大きく前に出て生えている、あるいは上顎の骨格自体が前に出ているという特徴があります。

アデノイド顔貌は口元全体が前に突き出ていて、下顎が上顎より小さく、顎から首にかけての境目が分かりにくいという特徴を持ちます。

出っ歯もアデノイド顔貌も口元が前に出るという意味では口ゴボの1つとして考えられますが、それぞれ特徴が違うということが言えます。

アデノイド顔貌を放置するリスク

アデノイドの肥大は先述の通り、2~5歳に多く見られ10歳くらいにかけて徐々に小さくなっていきます。アデノイドの肥大が長く続くと鼻呼吸がしづらいため口呼吸に慣れてしまったり、肥大の影響によって様々な身体の不調に繋がります。

【口呼吸】
口呼吸が続くと口周りの筋肉が使われないため、下顎の成長が進まずアデノイド顔貌がより進んでしまいます。二重顎になるのも口周りの筋肉の衰えによります。

【歯並びの悪化】
下顎が成長しないと歯が並ぶスペースが確保できなくなり、歯並びや噛み合わせが悪くなります。悪い歯並びを放置するとより口呼吸になるなど悪循環になります。

【いびきがひどい】
鼻へ空気が通りにくいためいびきをかきやすくなります。酷くなると無呼吸症候群になることがあるのでいびきがひどい場合は特に注意が必要です。

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アデノイド顔貌の治し方

10歳を超えてもアデノイドの肥大が続いている場合は耳鼻科を受診してアデノイドや鼻の治療が必要になりますが、アデノイド顔貌の治療は歯科で行うことができます。

成長が終わった大人と、顎を含め骨格の発育段階の子供ではそれぞれ適した治療方法があります。

①大人(中高生以降)

中学生から高校生の時期に骨格の成長は完了すると言われています。骨格の成長が終わった大人の場合は自然に骨格が改善されることは期待できません。

習慣になっている口呼吸や姿勢などの悪い癖を治すに越したことはないのですが、下の顎の成長や歯並びがよくなるということは考えにくいです。

このような大人の場合のアデノイド顔貌の治療は、矯正治療や外科手術で改善が期待できます。

【歯列矯正】
歯列矯正にはワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置による矯正治療があります。

・ワイヤー矯正:歯の表面にブラケットと呼ばれる器具とワイヤーを装着して歯並びを整える治療です。

・マウスピース型矯正装置による矯正治療:透明なプラスティックのマウスピースを装着して歯並びを整える治療です。

【外科手術】
歯を並べるために必要なスペースがない場合、小臼歯や親知らずを抜歯してスペースを作ることがあります。特に親知らずは20歳前後で生えてくる一番最後の歯で、歯並びを整えた後に生えてくると後ろから他の歯を押してガタガタにしてしまうリスクがあります。

②子供(小学生まで)

子供の骨格の成長に合わせて歯並びが悪くならないように「予防矯正」を進めることができます。予防矯正には主に以下の3つが挙げられます。

【MFT(口腔筋機能療法)】
悪い癖や習慣を取り除きながら口の周りを鍛えるMFTと言われるトレーニングを行います。

【プレオルソ】
プレオルソと言われるマウスピースのような形をした取り外しが可能な装置です。材質はゴムのような柔らかいものなので装着時の痛みはほとんどありません。出っ歯やガタガタの歯並び、受け口やかみ合わせた時に隙間ができるオープンバイトなど様々な症例に対応できる治療方法です。

【拡大床(バイオネーター)】
顎の成長が小さく歯列が狭い場合、バイオネーターという装置を装着して歯が生えるスペースができるように整えていきます。これらの治療を始めるのに適した時期は5歳頃からと言われていて、骨格の成長が緩やかになる12歳頃までが目安になります。

矯正のご相談はこちらから

アデノイド顔貌改善には矯正治療が有効な場合も

もしかしたら自分はアデノイド顔貌かもしれないと思ったら一度当院にご相談ください。大人のアデノイド顔貌を矯正治療で改善する場合にはマウスピース型矯正装置による矯正治療も選択できます。

マウスピース型矯正装置は取り外し可能な装置なので歯磨きや食事の際には取り外していつも通りにできます。また、ワイヤー矯正などの他の矯正方法よりも痛みが少ないことがわかっており、矯正治療中のストレスが少ないと言われている治療方法です。

当院の初診相談では矯正治療に関するあらゆるご相談にお答えしております。

当院ではしっかりと問診した上で治療計画を立て、丁寧な事前説明を行うように心がけていますのでリラックスしてお越しください。

また、来院診察以外にもメール相談からもご相談いただくことが可能です。

お気軽にお問い合わせいただき、まずはご希望をお聞かせ下さい。

それではあなたからのご相談をお待ちしております。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。