【監修:歯科医師 / 矯正指導医 増岡尚哉】


アデノイド顔貌(がんぼう)は、外見面だけでなく健康面にも影響することがある症状です。自分やご家族がアデノイド顔貌なのでは?とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
アデノイド顔貌の特徴はどのようなものでしょうか?どこで検査をしてもらえるのでしょうか?
気になる治療方法や費用などに関する疑問にもお答えします。

【目次】
1、アデノイド顔貌とは?
 1-1 アデノイド顔貌の特徴
 1-2 アデノイド顔貌の原因
2、歯科矯正でアデノイド顔貌を治療する方法(大人の場合)
 2-1 ワイヤー矯正(表側矯正)
 2-2 マウスピース矯正
 2-3 裏側矯正(リンガル矯正)
 2-4 外科矯正
 2-5 アデノイド顔貌をインビザラインで治療するメリット
3、子どもの場合の治療法
 3-1 口呼吸の改善
 3-2 筋機能療法(MFT)
 3-3 拡大装置を使用した矯正
 3-4 ワイヤー矯正(表側矯正)
 3-5 アデノイド切除と歯科矯正の併用
4、保険が適用される条件

アデノイド顔貌とは?

アデノイド顔貌とは一体どのようなものでしょうか。以前から当てはまる気がしていたけど診察する機会がなかった方や、もしかしたらうちの子もそうではないかと悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

アデノイドとは鼻から喉につながる部分にあるリンパ組織のことを指し、咽頭扁桃(いんとうへんとう)とも呼ばれます。風邪をひいた時に扁桃腺が腫れることがありますが、アデノイドはさらに上部にあり、口を開けても直接見えません。

アデノイドには、扁桃腺と同様にウイルスや細菌が体内に入るのを防ぐ役割があります。過剰に反応すると大きくなり、口周りをはじめとして、顔つきにも影響を及ぼします。または口呼吸が習慣化してしまうと、アデノイド自体は正常な大きさであっても、同様の顔つきになることがあります。これをアデノイド顔貌と言います。

アデノイド顔貌の特徴


以下のような特徴に当てはまるかどうか、チェックしてみてください。

  • 口呼吸により口が少し開いたままになる。
  • 口の中が乾燥して細菌が増え、口臭や虫歯につながる。
  • 口周りの筋肉が弱まって下あごが引っ込むことで、前歯が出っ歯に見える。
  • あごの発達が悪くて小さすぎるため、歯並びが悪くなる。
  • 鼻が詰まりやすくなり、鼻水も多い。
  • 鼻の下が伸びて面長になる。
  • 中耳炎になることが多い。
  • 首と顔の境目がはっきりしなくなったり、二重あごになったりする。
  • 下唇が厚ぼったく見える。
  • いびきをかきやすく、睡眠時無呼吸症候群になることもある。

当てはまる項目が多ければ、アデノイド顔貌である可能性が高いといえます。とはいえ、検査をしてみないと確定的なことは言えませんので、一度診察してもらってくださいね。気になる症状に応じて、矯正歯科や耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。診察では、外見や症状からの判断とともに、必要に合わせて内視鏡検査や、レントゲン検査が行われます。

アデノイド顔貌のため歯並びに問題が生じているため、歯科矯正に関心のある方は、当院の初回カウンセリング(無料)をお気軽にご利用ください。

無料カウンセリングについて

アデノイド顔貌の原因

6歳くらいまでの幼児期には、鼻から入るウイルスや細菌に反応してアデノイドが大きくなりやすいものです。成長するにつれて体全体の免疫力が上がり、アデノイドは徐々に小さくなっていきます。しかし中学生や高校生になっても大きいままの場合があります。

鼻呼吸ではなく口呼吸が習慣化したことで、口から入るウイルスや細菌が多く、アデノイドが過剰に反応して大きくなると考えられます。アデノイドが大きいと鼻の奥がふさがれて鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸がさらに常態化する、という悪循環に陥ってしまいます。

歯科矯正でアデノイド顔貌を治療する方法(大人の場合)

アデノイド顔貌の治療には、歯列矯正が効果的です。口呼吸を鼻呼吸に戻すことで、顎の発育や顔つきが改善されます。アデノイド顔貌は特に子どもの頃に見つかることが多いですが、大人でも矯正治療によって改善が期待できます。以下に、代表的な矯正治療の方法をご紹介します。

1. ワイヤー矯正(表側矯正)

ワイヤー矯正は、歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーで歯を動かす一般的な矯正方法です。アデノイド顔貌においては、口呼吸によって引き起こされる上顎の狭さや前突、歯列の乱れに対して効果的です。特に中度から重度の歯列不正に適しており、顎の成長を促しながら咬み合わせを改善します。

治療期間は約1.5年から3年で、費用はおおよそ50万〜100万円程度です。

メリットとしては、強力な矯正力があり、顎の成長や歯並びの改善が期待できる点が挙げられます。一方で、装置が外から目立ちやすく、口内に不快感を感じることがあるというデメリットもあります。

2. マウスピース矯正

マウスピース矯正は、インビザラインなどの透明なプラスチック製マウスピースを使用する方法で、アデノイド顔貌による軽度から中程度の不正咬合や鼻呼吸の改善に効果的です。顎骨の発育に大きな問題がない場合や、歯列の軽度な乱れを矯正する際に適しています。

治療期間は約1.5年から3年で、費用はおおよそ60万〜100万円程度です。

メリットとしては、透明で目立たないことや、取り外しができるため、食事や歯磨きがしやすい点があります。しかし、重度の歯列不正には対応が難しく、患者自身が1日20時間以上の装着を守る必要があるため、装着時間を守らないと治療が長引く可能性もあります。

3. 裏側矯正(リンガル矯正)

裏側矯正は、歯の裏側にブラケットを装着するため、見た目を気にせずに矯正治療ができる方法です。
アデノイド顔貌による中程度から重度の不正咬合にも対応でき、特に口呼吸が原因となる顎骨の成長不良や歯列の乱れに効果が期待されます。

治療期間はおおよそ2〜3年で、費用は80万〜150万円と他の矯正方法に比べて高額です。

メリットとして、装置が目立たず、また歯の裏側は唾液が多く分泌されるため虫歯になりにくい点が挙げられます。しかし、デメリットとしては、装置が裏側にあることで滑舌に影響が出ることがあり、また技術的に難しいため費用が高くなる点が挙げられます。

4. 外科矯正

外科矯正は、顎骨の手術と歯列矯正を併用する治療方法で、アデノイド顔貌の重度な症例に対して特に有効です。顎骨の成長異常や顎変形症に対応し、外科的に顎の骨を切開して位置を調整し、咬み合わせや顔貌を根本的に改善します。

特に、鼻呼吸が困難で顎の形状や位置に問題がある場合に適応されます。

治療期間は2〜3年が一般的で、費用は保険適用の場合30万〜50万円、保険適用外では100万〜300万円ほどかかります。

メリットとして、顎骨の根本的な問題を解決でき、見た目や機能の大幅な改善が期待されます。ただし、全身麻酔を伴う手術のリスクや、長期にわたる入院・回復期間が必要であることがデメリットです。

アデノイド顔貌をインビザラインで治療するメリット

アデノイド顔貌が原因で口呼吸が習慣化している場合、歯並びを改善することで鼻呼吸しやすくなります。しかも同時に外見上の問題も改善できる可能性があります。

歯科矯正と聞くと、目立つ器具を長期間装着することに抵抗を感じる方も少なくありません。その点、インビザラインなら周りの人に気づかれずに治療可能です。
治療期間は年齢や症状の程度によって異なりますが、1~3年ほどです。当院では、子供なら1年弱、大人なら2年程度が目安です。

気になる費用についてですが、一般的には50~100万円ほどといわれています。当院の場合、子供の矯正治療や大人の矯正でも軽度のものなら40万円、大人の矯正治療は80万円が相場です。分割払いやクレジットカード払いにも対応しています。

アデノイド顔貌が原因で口呼吸が習慣化している場合、歯並びを改善することで鼻呼吸しやすくなります。しかも同時に外見上の問題も改善できる可能性があります。

歯科矯正と聞くと、目立つ器具を長期間装着することに抵抗を感じる方も少なくありません。その点、インビザラインなら周りの人に気づかれずに治療可能です。
治療期間は年齢や症状の程度によって異なりますが、1~3年ほどです。当院では、子供なら1年弱、大人なら2年程度が目安です。

気になる費用についてですが、一般的には50~100万円ほどといわれています。当院の場合、子供の矯正治療や大人の矯正でも軽度のものなら40万円、大人の矯正治療は80万円が相場です。分割払いやクレジットカード払いにも対応しています。

お支払い方法について

子どもの場合の治療法

アデノイド顔貌の子どもの場合、早期に治療を開始することが大切です。成長期の子どもは顎骨や顔面が成長段階であるため、適切な治療を行うことで大きな改善が期待できます。以下に、アデノイド顔貌の子どもの治療法について説明します。

1. 口呼吸の改善

アデノイド顔貌の主な原因の一つは口呼吸です。まずは耳鼻科や小児科でアデノイド(咽頭扁桃)の肥大や鼻詰まりがないか確認し、必要であれば治療を行います。アデノイドが肥大している場合は、アデノイド切除手術が推奨されることがあります。これにより、鼻呼吸を取り戻し、口呼吸が改善されれば、アデノイド顔貌の進行を防ぐことが可能です。

2. 筋機能療法(MFT)

口の周りの筋肉や舌の機能が弱まっている場合は、筋機能療法(MFT)が有効です。これは、正しい舌の位置や呼吸法、飲み込み方を学び、口周りの筋肉を強化するトレーニングです。筋機能を改善することで、自然に鼻呼吸を促し、アデノイド顔貌の進行を抑えます。

3. 拡大装置を使用した矯正

アデノイド顔貌の子どもでは、上顎が狭くなりやすく、これが咬み合わせや歯列に影響を及ぼすことがあります。こうした場合、上顎拡大装置を使用して上顎を広げ、適切な咬み合わせを形成する治療が行われます。この装置によって、歯列のスペースが確保され、歯が正しく並ぶための環境が整えられます。

4. ワイヤー矯正(表側矯正)

中度から重度の歯列不正や顎骨の成長不全がある場合、ワイヤー矯正が適用されます。特に成長期の子どもでは、顎の発育に合わせて咬み合わせや歯列を調整することが重要です。治療期間は約1.5年〜3年で、矯正力が強いため、顎の成長とともに顔貌の改善が期待できます。

5. アデノイド切除と歯科矯正の併用

アデノイドの肥大が顔貌や歯列に深刻な影響を与えている場合、アデノイド切除手術と歯科矯正を併用することがあります。アデノイドの切除により、鼻呼吸を改善し、矯正治療で顎や歯列の発育を促すことで、顔の形状や咬み合わせを整えます。

保険が適用される条件

歯科矯正は、従来のワイヤーによる治療でも、当院のようなインビザラインによる治療でも、健康保険の適用外です。もしも顎変形症(がくへんけいしょう)と診断されて、外科矯正治療としてオトガイ形成術などの手術を行う場合なら、健康保険が適用されます。保険適用になるか気になる方もぜひ当院にご相談ください。

大人になってからでも、歯科矯正で歯並びを直すことで鼻呼吸を促し、アデノイド顔貌を改善することは可能ですが期待できます。インビザラインによる矯正なら、矯正中の見た目を気にすることなく、徐々に解消されていきますよ。


監修者:増岡尚哉

歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。

プロフィールはこちら

この記事をシェアする

関連した記事

関連した記事はありません。

歯列矯正の基礎知識コラムトップ

その他の記事を見る




【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

PAGE
TOP