COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:歯科医師・増岡尚哉】



矯正治療の1つに「床矯正」と言われる方法があります。

これは顎の骨を広げて歯が綺麗に並ぶためのスペースを作る治療です。

歯を抜かなくても歯並びを良くできる方法で、主に子どもの矯正治療に適用されます。歯を抜かなくてもいい矯正なら大人でもしたいですよね。

ここでは「大人でも床矯正はできる?」を解説していきます。

【目次】
1、そもそも床矯正とは?
2、床矯正を子供に進める理由
3.大人になっても床矯正は可能なのか?
4.床矯正の種類
 ・側方拡大装置
 ・前方拡大装置
 ・閉鎖型装置
 ・後方移動装置
5.大人の床矯正のデメリットと注意点

そもそも床矯正とは?

床矯正とは、顎が小さいために歯が綺麗に並びにくい場合、お口の中に装置を装着して顎の骨を広げ、歯を抜かなくても綺麗に並ぶためのスペースを作る矯正治療の1つです。

その装置とは、入れ歯のような形をしている装置にネジが付いていて、顎の骨を広げるにはネジを締めて調整をします。

歯の内側から圧力がかかるのである程度の歯並びを整えることはできますが、直接歯を動かすことはありません。

基本的には子どもの骨の成長と共に顎の骨を広げる補助の器具で、床矯正を始めるには顎の成長が著しい幼児期から小学校低学年頃までが適した年齢といわれています。

床矯正の装置は取り外しが可能となっています。

食事や歯磨きの際は取り外すことができるので、ワイヤー矯正などのように口の中に固定されている矯正装置に比べると装着にストレスは少ないと思われます。

ですが、装着時間が短くならないように自分で管理する必要があります。

床矯正を子供に進める理由

床矯正は、6歳~11歳の成長期に当たる時期に始めるのが望ましいとされています。

乳歯と永久歯がお口の中で混在する混合歯列期と言われる時期で、顎の成長に合わせて歯が正しい位置に生えるスペースを確保するにはこの時期が適しているといわれています。

骨の成長が止まる前に永久歯の生える位置を正しい位置にガイドすることで、抜歯を避けて歯並びを整えられる可能性があります。

また床矯正には、猫背や口を開けたままのポカン口、扁桃炎やいびき、口呼吸などが改善される場合があります。

床矯正で上顎を広げることにより頭や首のバランスが整うので猫背などの姿勢が改善されます。

そして鼻腔が広がることにより鼻呼吸がしやすくなるので口呼吸やポカン口が改善され、口呼吸で細菌が入りやすいために起こっていた扁桃炎も少なくなり、息苦しさから寝ている間にしていたいびきが改善されるというメリットもあります。

早い時期から始めることで治療の効果が高くなり悪い習癖の改善も見込めます。

大人になっても床矯正は可能なのか?

主に成長期の子どもの治療に適しているとお話してきましたが、大人でも顎の骨格の状態、歯並びの状態によっては床矯正ができる場合があります。

顎の骨を広げて歯がきれいに並ぶスペースができれば、歯を抜かずに歯並びを整えられます。床矯正の装置は取り外しができるので12時間以上の装着が守られるのであれば、仕事や学校などの外出の際に外すことができます。

ただし、顎の成長が止まっている大人の場合、顎を広げるにも限界があり、歯の移動は斜めに傾ける程度になる事が多く、25歳くらいまでであれば効果が期待できる場合もあります。

歯を大きく動かさなければならない場合やかみ合わせが大きくずれている場合などは、床矯正のあとにワイヤー矯正やマウスピース矯正などの歯を動かす治療も併用することがあります。

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床矯正の種類

床矯正にはどのような種類があるのか以下に挙げます。

・側方拡大装置

最も多く使用されている床装置です。

側方(横方向)に顎を広げるための装置で、装置に付いているネジを拡大方向に回して調整します。

・前方拡大装置

前歯部を前方向に押し出すことを目的とした装置で、側方拡大装置のネジに対して90度回転した位置にネジが付いています。

主に受け口(反対咬合)の患者さんに使用します。

・閉鎖型装置

拡大装置の治療で歯が並ぶスペースができた後、歯並びを整えるための装置です。

顎を広げるためのネジは付いてなく、ワイヤーで歯を挟み込んで固定し、歯並びを整えて保定します。

・後方移動装置

臼歯部を後ろ方向に移動させるための装置です。

後ろ側へ移動する方向と平行にネジが付いています。

大人は骨の成長が止まっているため、子どもの床矯正のように骨格から広げるというよりはすでに成長した顎の骨で歯並び、かみ合わせを整える治療になるケースが多いです。

床矯正では治せない歯のねじれは、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置による矯正治療でいどうすることになります。

大人の矯正について気になる事、悩んでいることがあれば、初回カウンセリングを行っている当院に何でもご相談ください。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。