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歯列矯正の基礎知識コラム

マウスピースを嵌めようとする女性の口元

ワイヤーを使ったブラケット装置による矯正に比べて、マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、通院回数が少ないということをご存知でしょうか?今回は、インビザライン治療の治療期間の平均的な目安と、治療を早めるポイントをご紹介していきます。

【目次】
1、インビザライン治療期間の平均はどのくらい?
2、インビザラインの治療期間を早めるには

インビザライン治療期間の平均はどのくらい?

一般的な歯列矯正の治療期間は、1.5年~3年程の間、毎月約1回の通院をしていただきます。加えて、装置の不具合や痛みがある場合にはその都度通院が必要になります。

一方、マウスピース型矯正装置(インビザライン)の場合は、

  • 定期的な通院が少ない(歯を動かしている治療期間は1~2か月に1回、保定期間は4~6カ月に1回)
  • 緊急性の高い不具合(装置による痛みなど)が少ない

など、通院回数は一般的な矯正治療に比べて少ないのです。毎月の通院は大変…という方には、嬉しいメリットですね。歯並びの状態によっては、ワイヤーを使った矯正治療よりも早く終わったというケースもあります。

子供と大人で異なる治療期間

一般的な矯正治療によって歯が移動するスピードは、月に1.0mm程度と言われています。人間のもつ「新陳代謝機能」を利用して歯を動かしているためであり、これ以上の移動はできません。大きく歯を動かすほど、歯への負担や痛みが伴います。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)では、装置が歯の全体を覆うため歯にかかる力が優しく「痛みが少ない」のが特徴です。
1枚のマウスピースでの歯の移動量は0.25mm。これは歯と骨の間に存在する隙間と同じで、歯を動かすのに適した優しい力が設計されているのです。
ゆっくりと時間をかけて予定する位置まで歯を動かすので、動かす距離や本数が多いほど時間はかかってしまいます。

子供の場合は、治療期間は6ヶ月~2年程。若いお口の中は歯周組織のダメージが少なく、骨の代謝も活発なことから大人より治療期間が短くなるケースも多いです。また、成長発育を利用して顎を広げていくので、歯並びのスペースをしっかりと作ることができ、大人に比べて抜歯をするリスクは少なくなります。

大人の場合は、治療期間は2年~3年程。顎の骨の成長は止まっているので、歯を動かすために抜歯が必要になるケースもあります。部分矯正やごく一部の矯正の場合は、6ヶ月~1年程度で治療を行うことも可能です。

症例別目安の治療期間

歯並びのタイプや年齢によって治療期間は異なるため、一概に「この治療はこのくらいの期間」ということは言いきれません。目安として、当院で治療を受けられた方の治療期間を一部ご紹介いたします。

<部分矯正>

  • 治療期間:10カ月(28歳、前歯の交叉咬合を伴う叢生、インビザラインライトを使用)
  • 治療期間:6カ月(23歳、叢生を伴う骨格性上顎前突、非抜歯、マウスピース矯正)

<子供>

  • 叢生     (7歳:治療期間9カ月)
  • 前歯部反対咬合(7歳:治療期間6カ月)
  • 上顎前突   (8歳:治療期間10カ月)

<大人>

  • 過蓋咬合、非抜歯(23歳:治療期間2年)
  • 叢生、抜歯   (25歳:治療期間2年)
  • 開咬、抜歯   (28歳:治療期間2年)
  • 開咬、非抜歯  (25歳:治療期間2年6カ月)

症例実績ページで詳しくご紹介しています

歯や歯茎が健康であったり、治療を始めるタイミングが発育成長を利用できる時期であったりすると、スムーズにいくケースも多くみられます。

ただ、これはあくまで一例であり、症例や年齢によって治療期間は変わります。また、治療期間は主に歯の移動量によって決まるため、抜歯をしたからといって一概に治療期間が伸びるというわけではありません。

インビザラインの治療期間を早めるには

「装着時間と通院日を守る」「虫歯予防」「後戻りを防ぐ」。歯列矯正を予定よりも早く終えるためには、この3つのポイントが重要となります。

①    装着時間と通院日
インビザラインの装置は自分で取り外しが可能なので、付け忘れや決められた時間(1日20時間が目安)よりも装着時間を短くしてしまう人もいらっしゃいます。
しかし、装着時間を守らないと歯が計画通りに移動せず治療の失敗につながるため、気を付けましょう。
他にも、マウスピースは7~14日に1度ご自身で交換する必要もあり、患者様の自己管理が重要になってきます。

また、インビザライン治療は1~2ヶ月に1度の通院です。
治療を終えるまでの期間中は、予定外の用事や急なお仕事などで予約を変更せざるを得ない場合もあるかと思います。
計画通りに治療を終わらせるためには、できるだけ矯正日の予約を優先し、変更する場合は最短で取れる日にちにすることが1番の近道でしょう。


②    虫歯予防
矯正治療の途中で虫歯が見つかった場合、矯正を中断して虫歯治療を行う必要があります。
虫歯が大きかったり、被せ物などの再治療などで歯の形が変わってしまったりすると、マウスピースの再製作が必要になることも。そうなると、矯正の治療期間もその分延期になってしまいます。
インビザライン治療は長時間マウスピースで歯を覆うことになるため、歯磨きの際はデンタルフロスやワンタフトブラシなどを使い、念入りに行いましょう。


③    きちんと保定をして後戻りを防ぐ
矯正治療で歯を動かした後は、その位置に歯を定着・安定させるための「保定」の期間が必要になります。
歯は、矯正装置によって力をかけて動きますが、負荷から解放されると元の位置に戻ろうとする「後戻り」をします。理想の歯並びを維持するためには、目的の位置に歯を動かした後、歯を安定させ後戻りしないように保定を行うのです。
個人差はありますが、一般的には「歯を動かすのにかかったのと同じくらいの期間」保定することが大切です。

日常習慣の改善も大切なポイント

舌や口周りの悪い癖を改善する
口呼吸、前歯を舌で押す、頬杖、唇を噛むなど、心当たりはありませんか?これらは歯並びや咬み合わせに悪影響を及ぼすことが多く、注意が必要です。

●体の新陳代謝を高める
歯周組織の新陳代謝が活発であれば、それだけ歯の動きもスムーズになり矯正治療の効果が得られます。食生活や睡眠時間などに気を付けて、規則正しい生活を心がけましょう。

●過度な喫煙をしない
喫煙は血流を悪くするので、歯の移動が遅くなるといわれています。タバコは控えましょう。

●自分に合った正しい歯磨きを身に付ける
歯科医院では、歯科衛生士があなたに合った歯ブラシや磨き方の指導をしてくれます。自分では磨けていると思っても、汚れが残っていることもあります。一度、セルフケアの仕方を確認してみてはいかがでしょうか。


マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療期間は、年齢や歯並びの状態など個人差もありますが平均して1年半~3年ほどです。できるだけスムーズに治療を終えるためにも、矯正専門医の指示を守り、セルフケアをしっかりと行いましょう。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。