COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修医:矯正歯科学会 認定医&指導医 増岡 尚哉】


頬を押さえる女性

矯正治療を行うか悩まれている方の不安要素のうちの1つに、「痛み」というものがあるかと思います。矯正治療には痛みを伴うことがありますが、矯正治療で使用する装置によっては痛みを感じなくてすんだり、痛みの程度を軽減させたりすることが可能です。
ここでは、矯正治療においてどんな時に痛みを感じるか、どうすれば痛みを抑えることができるかなどをご説明していきます。

【目次】
1、ワイヤー矯正が痛いといわれる理由
2、マウスピース型矯正装置の痛みの特徴

ワイヤー矯正が痛いといわれる理由

矯正治療は、元々「ブラケット」と呼ばれる金属を歯の表面につけ、それに金属の形状記憶ワイヤーを通し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を動かす「ワイヤー矯正」が主流でした。最もスタンダードな方法で、基本的にはどのような歯並びのお悩みにも対応することができます。

矯正治療に伴う痛みの種類を大きく分けると、

  • 歯が動く痛み
  • ものを噛む痛み
  • 装置があたる痛み

などが挙げられます。
ワイヤー矯正は、この中でも3つ目の「装置があたる痛み」を感じる方が非常に多いというのも、特徴のうちの1つです。
歯が動く痛みやものを噛む痛みは、矯正治療を行うにあたってどうしても伴ってしまうものです。しかし、装置があたる痛みは、矯正治療に使用する装置によっては軽減させることが可能なのです。
そもそも、なぜワイヤー矯正では装置にあたる痛みを感じてしまうのでしょうか?

ワイヤー矯正の種類

ワイヤー矯正では、歯を動かすために歯の表面にブラケットという装置を接着剤でつけます。外れてしまうことはあっても、自分で外すことはできません。


ワイヤー矯正をしている口元

ブラケットには金属のものとセラミックのものがあります。
金属のブラケットは金属色で目立つものの、セラミックに比べるとブラケットの厚みを薄くすることができ、違和感を減らせます。また、金属同士で摩擦抵抗に優れることから、ワイヤーとブラケットの固定方法によっては歯の移動に有利になります。
セラミックのブラケットは白くて金属のものよりも目立ちにくいため、審美的な視点からするとメリットがあります。しかし、セラミックという素材でブラケットを作るには、強度を保つためにある程度の厚みが必要になります。そのため、金属の物に比べて頬や唇の裏側にあたる感触は強くなります。

どちらを使用するにしても、ブラケットをつければ必然的に歯の表面には凸凹ができます。
そこに頬や唇の裏などがあたって痛んだり、擦れることで口内炎になりそれが痛んだりするのです。結紮線(けっさつせん)という、ブラケットと形状記憶ワイヤーを固定するために使用するごく細いワイヤーが飛び出してしまい、それが頬に刺さって痛みを感じるということも中にはあります。
これは、多少慣れてはいけるものの装置をつけている限りずっと続きます。
装置の構造上、ワイヤー矯正を行うにあたって避けられない痛みなのです。

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マウスピース型矯正装置の痛みの特徴

マウスピースを用いた矯正治療(インビザライン )とワイヤー矯正との大きな違いは、歯に装置を固定しないことです。
インビザラインで使用するマウスピースは透明で薄いプラスチック(ポリウレタン)で作られています。使用始めは窮屈感や違和感(マウスピースをはめづらい感じ)を感じることがあっても、ワイヤー矯正のように装置があたって痛いと感じることはないでしょう。そして、窮屈感や違和感も2~3日ほどで慣れ、長く続くことはありません。
また、矯正治療においてどうしても感じてしまう「歯を動かす痛み」や「ものを噛む痛み」も、ワイヤー矯正は歯を動かす力がブラケット部分一点に集中するのに対し、マウスピース矯正は装置が歯の全体を覆って圧力が分散されるため優しくなります。
感じ方は人それぞれですが、1つのマウスピースで動かす距が短いため歯に無理な力がかからず「少し気になる程度にしか感じなかった」と言われる方もいらっしゃるくらいです。

歯磨きのしやすさにも違いがある

また、薄さや力のかかり方以外に「取り外しが可能」ということも、マウスピース矯正のメリットといえるでしょう。1日20時間以上の使用を推奨されていますが、食事と歯磨きの際には外すことができます。
ワイヤー矯正は装置が固定されているため、ものを噛むのにも慣れが必要ですし、歯磨きを行うにしても十分な注意が必要ですが、マウスピース矯正では装置を取り外すことで「矯正治療をしていない状態」で食事や歯磨きができるのです。
また、マウスピースは2週間程度使用したら新しいものに交換していくため、衛生面でもあります。

矯正治療において避けては通れない「痛み」も、使用する装置が変わることによってなくしたり軽減させたりすることが可能です。
もし、「痛み」が気になり矯正治療を悩まれているようでしたら、マウスピース矯正について歯科でお話を聞かれてみてはいかがでしょうか。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。