子どもの歯列矯正、後悔しないために知っておきたいこと
- 公開日:2021/10/30
- 監修者:増岡尚哉
- 更新日:2025/12/01
小児矯正は、費用や期間、装置管理の大変さ、仕上がりが想像と違うといった理由で「やらなければよかった」と感じる方もいます。
しかし、正しい情報と適切な治療計画があれば、多くの後悔は防ぐことができます。ここでは、後悔しないためのポイントや注意すべき事例をご紹介します。
【目次】
1、小児矯正はなぜ必要なのか?
2、小児矯正、やらなけらばよかったと思う7つの理由
①治療に時間がかかりすぎた
②想像以上にお金がかかった
③矯正後に後戻りしてしまった
④想像した仕上がりにならなかった、治療が不適切だった
⑤子どもが嫌がり、ケアが大変だった
⑥不必要な抜歯
⑦拡大床の不適切な使用
3、小児矯正、後悔しないためのポイント
・信頼できる医院を選ぶ
・矯正後には保定期間があることを知る
・治療計画は変化しやすいものであると理解しておく
・最後まで続ける覚悟をもって臨む
・治療計画に納得できない場合はセカンドオピニオンを受けてみる
・子どもに寄り添い、サポートする
4、子どもの矯正に関するよくある質問
5、当院では、「後悔のない」矯正に向けて事前説明を重視しています
小児矯正はなぜ必要なのか?
お子さまの歯並びや噛み合わせは、見た目だけでなく、発音・咀嚼機能・顎の発達に直結します。成長期に歯列と顎のバランスを整えることで、将来の抜歯リスクや大がかりな成人矯正を避けられることもあります。
小児矯正の必要性は以下の通りです。
- 顎の成長を利用し歯列を整える
- 永久歯が正しく並ぶスペースを確保する
- 顎関節や顔のバランス改善
- 成人矯正の負担軽減または不要化
小児矯正、やらなけらばよかったと思う7つの理由
①治療に時間がかかりすぎた
子どもの歯列矯正は、成長段階、歯列、かみ合わせによって治療法が異なります。
- 永久歯が生えそろう前に行う”1期治療”
- 永久歯が生えそろってから始める”2期治療”
の2つに分けられます。
【1期治療 】
”顎・骨の成長を利用し、綺麗な歯列にするための準備治療”
顎の成長を正しく導き、生えてくる永久歯がきれいに生えそろうようにすることです。この時期は骨が柔らかく、簡単な装置で骨格に成長アプローチをすることができます。
【対象年齢】
永久歯が生え始める6歳〜生えそろう12歳頃まで
【使用器具・装置】
拡大床、ヘッドギア 、リンガルアーチ、上顎前方牽引装置等
【2期治療】
”歯列を整え、かみ合わせを改善する治療”
全て永久歯に生え変わるとスタートできます。ワイヤーやマウスピース等で永久歯に力をかけて歯のデコボコやかみ合わせを調整する治療です。
【対象年齢】
小学校高学年(平均)〜大人まで
【使用器具・装置】
ワイヤーブラケット、マウスピース等
6〜10歳の混合歯列期は、生え方の予測が難しいため治療が長引き数年に渡ることもあります。
治療期間については、事前に”最短”の期間と”最長”の期間を担当医に聞いておく必要があります。
②想像以上にお金がかかった
矯正治療は基本的に保険適用外です。小児矯正も同様です。
”医療費控除”の対象になる場合もあるので、矯正歯科医院に確認をし制度を利用することで費用を抑える方法や、デンタルローンのシステムを導入している医院であれあればローンの利用ができます。
| 1期治療で使用する装置の費用の相場 (1期治療の相場:10〜50万円) |
2期治療で使用する装置の費用の相場 (2期治療の相場:20〜100万円) |
||
| 拡大床 | 20〜40万円 | ワイヤーブラケット | 20〜100万円 |
| ヘッドギア | 10〜30万円 | インビザライン | 50〜100万円 |
| リンガルアーチ | 3〜15万円 | ||
| 上顎前方牽引装置 | 10〜45万円 | ||
上記費用はあくまで一例であり、装置の種類・歯科医院ごとに費用は異なります。
費用に関しても、担当医にきちんと治療計画を立ててもらった上で確認をしましょう。
③矯正後に後戻りしてしまった
矯正治療を受けても治療した歯が元に戻ってしまう”後戻り”。
後戻りの主な原因は、”メインテナンス不足”が挙げられます。矯正治療が終了しても歯は元の位置に戻ろうとするので、マウスピースをはじめとした保定装置を使用して後戻りを防ぐ必要があります。
担当医の指示通り保定装置を使用していなかったり使用を中断してしまうと歯並びは元に戻ってしまいます。
矯正治療が終了したら何もしなくても良い訳ではありません。指示通りに保定装置を使用し定期的にメインテナンスを受けましょう。
④想像した仕上がりにならなかった、治療が不適切だった
小児矯正はある程度期間が長くなりますが、初期状態から大きな変化がない場合は治療が不適切な場合があります。治療を続けているのに歯並びが改善されていない場合は注意が必要です。
”装置がずっと同じもの”、”歯並びに変化がない”状態が続く場合は、セカンドオピニオンも検討してみましょう。
経験と実績のある小児専門医・矯正認定医を選ぶ
日本矯正歯科学会の認定医がいること。認定医になるためには5年以上の専門的な研修を受け、学会の試験に合格しなければなりません。
認定を持っているということは矯正治療の経験と知識が豊富であることを表しています。日本矯正学会のホームページで認定医の確認ができます。
来院する前に一度確認すると良いでしょう。
⑤子どもが嫌がり、ケアが大変だった
矯正治療は治療を行うお子さん本人の協力が必須です。しかし、”装置を嫌がる”、着脱可能な装置を”適正時間つけられない”等、本人にやる気がなかったり、嫌がってしまうと途中で断念せざるを得ないことも後悔ポイントとして多く挙げられます。
また、矯正治療中は口腔内に装置が入ることで歯磨きがしにくく、むし歯や歯肉炎のリスクが高まります。そのため、仕上げ磨きをはじめとする保護者の方のサポートが必須です。このケアも装置で複雑になっている口腔内のケアなので親御さんの負担となってしまうこともあります。
装置使用への協力に関しては、言葉が理解できる年齢であれば根気よく矯正治療の必要性やメリットを伝えてみましょう。
自己管理が難しい場合は、着脱可能な装置の使用を避けてみるのも良いでしょう。
お子さんの性格や年齢に合わせて適切な装置を担当医と話し合って決めましょう。
⑥不必要な抜歯
小児矯正では、永久歯をきれいに並べるスペースが不足している場合に便宜抜歯が選択されることがあります。しかし、成長期の顎の発育を活かせば、本来抜かなくても済むケースが少なくありません。
ところが、事前の成長予測やスペース確保の計画が不十分なまま治療を進めた結果、Ⅰ期治療後に予想外の便宜抜歯が必要となり、保護者が「抜かなくても良かったのでは」と後悔する例が見られます。
不必要な抜歯を避けるには、初期段階で精密な診断と成長予測を行い、非抜歯での治療可能性を正確に評価することが重要です。
顎の幅を広げる、歯の傾斜を改善する、成長方向を誘導するなど複数のアプローチを組み合わせることで、抜歯を回避できる可能性が高まります。
また、成長の経過に応じて計画を柔軟に見直し、必要に応じて治療方針を早期に変更することで、最終的な抜歯リスクを低減できます。
⑦拡大床の不適切な使用
“拡大床”は顎骨ではなく歯を傾斜移動させて歯列を広げる装置です。そのため、顎が小さい状態で無理に使用すると、歯がぎゅうぎゅうに外側へ傾斜してしまい、「顎が狭いのに無理に広げた」ことにより、不正咬合を引き起こすリスクがあります。
結果的に咬み合わせの不調や見た目の違和感を生み、再治療が必要になるケースも多く報告されています。これは、担当医が検査・診断・治療計画を適切に行わず、安易に拡大床を使用したことが原因です。
拡大床の使用が妥当かどうかは厳密な検査・分析・診断に基づいた治療計画立案のもとで判断する必要があります。特に矯正専門教育を受けた矯正認定医による診断が重要です。適応症例には慎重に選び、装着中も定期的に咬合状態をモニターし、不適切な歯の傾斜やスペース不足を早期に発見して調整することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
小児矯正、後悔しないためのポイント
信頼できる医院を選ぶ
上記でも述べたように、大事なことは”経験と実績のある歯科医院や歯科医師を選ぶ”ことです。
どんな医院でも小児矯正を得意としているわけではありません。成人の矯正と違い治療を始める時期の見極めが非常に重要であり、装置の使い分けなども一人ひとりに合わせて選択する必要があるのです。
ですから、歯並びの相談や矯正をお考えの場合は小児矯正の知識や治療経験が豊富な歯科医院や歯科医師を選んで相談することが大切です。
場合によっては一件ではなく、複数の医院を回ってより納得できる回答を探していただくのも良いかと思います。
その際の注意点としては、小児矯正を始めるのであれば早期の方がメリットが多いので、相談はあまり先延ばしにせず一気に複数の医院を受診して話を聞くのが良いかと思います。
まずは電話予約の際に「小児矯正の相談が可能か」「いろいろな治療方法に対応しているか」など一度聞いてみると良いでしょう。
【歯列矯正を始める前の注意点】
- 頭部全体のエックス線撮影をするセファロ検査を実施していること
- 精密検査を実施し、分析診断した上で治療をしていること
- 治療計画・費用について詳しく説明していること
- 矯正医との連携があること
- 専門知識がある歯科衛生士・スタッフがいること
- 治療中の転医、その際の対応について教えてもらえるか
当院では、上記で挙げた条件を全て満たしているので安心して通院していただけます。
矯正後には保定期間があることを知る
矯正治療後が終了しても、綺麗な歯並びを維持するためには”保定期間”が必要です。
舌癖や食いしばり、歯のすり減りなどで歯は元の位置に戻ろうとするので、マウスピースをはじめとした保定装置を使用して後戻りを防ぐ必要があります。
担当医の指示通り保定装置を使用していなかったり使用を中断してしまうと歯並びは元に戻ってしまいます。
指示通りに保定装置を使用し、定期的に後戻りのチェックを受けましょう。
治療計画は変化しやすいものであると理解しておく
成長段階にあるお子さんの口腔内・歯の状態は変化しやすく治療計画はその時々の成長や口腔内の状態に合わせて調整するため、治療内容の変更や治療期間が長引くこともあります。
”成長段階にあるお子さんの歯列矯正は治療計画が変化しやすい”という点を理解しておきましょう。
一人ひとりに対して起こりうるあらゆるリスクや治療の説明があり、信頼のおける歯科医院を選ぶことが大切ですね。
最後まで続ける覚悟をもって臨む
小児矯正は矯正をするお子さん本人のモチベーションが保てないと矯正治療の継続が難しい場合があります。
長期間にわたる通院・装置装着が必要となります。継続できないと思っていた結果が得られなかったり、計画通りに治療がすすみません。
せっかく始めたのに途中断念せざるを得ないということがないように、お子さんと話をし”最後まで続ける覚悟をもって”矯正治療に臨みましょう。
お子さんだけではなく親御さんも共に最後まで続ける覚悟を持ちましょう!
治療計画に納得できない場合はセカンドオピニオンを受けてみる
矯正治療は保険が効かないため費用も安くありません。治療も長期間に及びます。
思うように治療の効果・結果が得られていない、担当医の方針・治療計画に納得できない場合には、他院で”セカンドオピニオン”を受けてみるのも良いでしょう。
また、必要があれば転院も選択肢として挙げましょう。
【セカンドオピニオン】
セカンドオピニオンとは、納得のいく治療方法を選べるように主治医とは違う医師に診断・治療方針について求める”第二の意見”のことです。セカンドオピニオンを聞くことで、患者さん自身が治療への理解を深め、最善の治療方法を選択できます。
【セカンドオピニオンを受ける医院の探し方】
- 主治医に相談し、相談できる医療機関を紹介してもらう
- インターネット・雑誌などから自分で探す
- 民間の情報サービスを利用する
【セカンドオピニオンの流れ】
- 主治医の意見をよく聞いてから理解する
- セカンドオピニオンを受ける医院を決める
- 主治医にセカンドオピニオンを受けることを伝え、紹介状・必要データを受け取る
- セカンドオピニオンを受ける
- 主治医に、セカンドオピニオンを受けた医師から受け取った書類を渡し、結果を伝えて相談する
- 治療する医院を決め、主治医にご自身の出した結論を伝える
子どもに寄り添い、サポートする
矯正治療を始めた当初は、装置に違和感を感じたり、慣れない器具に不満をぶつけるお子さんがいるのも事実です。すぐに結果が出る訳ではないため、結果が見えなくてそれがストレスとなることもあります。
そんな時は、共感をしてから再度矯正治療のメリットを伝え、モチベーションの維持に努めましょう。
また、親御さんの言葉ひとつで大きく救われることもあります。モチベーションアップに繋がる言葉がけをしてあげましょう。
矯正治療中は口腔内に装置が入ることで歯磨きがしにくくなるため、仕上げ磨きで口腔内の清潔が保てるように装置の洗浄など親御さんがサポートしてあげましょう。
子どもの矯正に関するよくある質問
Q1. 小児矯正は何歳から始めるのが良いですか?
A. 一般的には 6〜12歳 が対象で、その中でも7〜8歳で始める方が多いです。この時期は永久歯が生え始め、顎の成長を利用して歯列を整えやすくなります。ただし、受け口(反対咬合)や開咬など顎の発育に関わる症状は3歳頃から早期に治療を始めることもあります。
Q2. 拡大床はすべての子どもに適していますか?
A. いいえ。拡大床は顎骨を広げるのではなく歯を傾斜させる装置です。顎が小さい状態で無理に使用すると、咬み合わせや見た目の不調和を招くリスクがあります。適応は厳密な検査・診断のもとで判断されるべきで、特に矯正認定医の診断を受けることが推奨されます。
Q3. 矯正後に歯並びが元に戻るのを防ぐには?
A. 治療終了後も歯は元の位置に戻ろうとします。保定装置(リテーナー)を指示通り使用し、定期的に後戻りのチェックを受けることが大切です。特に成長期のお子さんは顎や歯列が変化しやすいため、保定期間中のメンテナンスを怠らないようにしましょう。
Q3. 子どもが矯正を嫌がったらどうすればいいですか?
A. 装置の違和感や見た目への不安から、最初は嫌がるお子さんも少なくありません。まずは「なぜ矯正が必要なのか」を年齢に合わせてわかりやすく説明し、治療後のメリット(歯磨きしやすくなる、笑顔に自信が持てる等)を共有しましょう。また、装置選びの段階でお子さんの性格や生活スタイルに合った方法を相談すると、受け入れやすくなります。
Q4. 矯正装置装着後、子どもが痛みや違和感を訴えるときはどうしたら良いですか?
A. 装置を調整した直後や装着初期は、数日間の軽い痛みや違和感が出ることがあります。これは歯や顎が動いているサインです。やわらかい食事に切り替えたり、冷たい飲み物で口内を冷やすことで和らぎます。痛みが長く続いたり強すぎる場合は、無理をせず担当医に連絡しましょう。
Q5. 勉強や部活動に影響はありますか?
A. 矯正装置は初期に違和感がありますが、多くのお子さんは数日〜数週間で慣れ、日常生活に支障なく過ごせます。吹奏楽やスポーツなど特定の活動に影響が出る可能性がある場合は、口内を傷つけやすいワイヤーより、取り外しができてワイヤーより違和感の少ないマウスピースを使用するとよいでしょう。事前に担当医へ伝えることで、適切な装置や調整方法を提案してもらえます。
当院では、「後悔のない」矯正に向けて事前説明を重視しています
当院の矯正無料相談では矯正治療に関するあらゆるご相談にお答えしております。
当院ではしっかりと問診した上で治療計画を立て、丁寧な事前説明を行うように心がけていますのでリラックスしてお越しください。
また、来院診察以外にも無料メール相談からもご相談いただくことが可能です。
お気軽にお問い合わせいただき、まずはご希望をお聞かせ下さい。
それではあなたからのご相談をお待ちしております。

監修者:増岡尚哉
歯科医師・歯学博士(D.D.S. , Ph.D.)|マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(製品名インビザライン 完成物薬機法対象外)の講師として歯科医師向けに講義・講演活動をしています。
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