COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】



”隙間なく綺麗に並ぶ乳歯列”この状態では、将来ガタガタの歯並びになってしまったり、むし歯のリスクを高める可能性があります。

乳歯列はどのような状態が正しいのか、隙間がないことが与える影響について解説します。

【目次】
1、なぜ歯に隙間が必要なのか
2、なぜ乳歯に隙間がないとどうなるの?
       ・永久歯列の歯並びへの影響
       ・むし歯のリスクを高める
3、乳歯が生えるためのスペースを作るには?
           ①予防矯正
          ②床矯正
          ③ヘッドギア
          ④ワイヤー矯正
           ⑤マウスピース型矯正装置
4、永久歯への生え変わり時期に気をつけたい点
5、乳歯の歯並びが気になったら歯科医へ相談を

なぜ乳歯に隙間が必要なのか

6〜7歳頃から永久歯への生え変わりが始まります。
後から生えてくる永久歯の大きさは、乳歯の1.5〜2倍です。
乳歯の時に隙間がないと、”永久歯が生えるスペース”がなくなってしまい、歯並びがガタガタ・八重歯になってしまいます。
そのため、乳歯列には”霊長空隙”・”発育空隙”と呼ばれる、永久歯が生えるための隙間があるのが正常です。
この隙間は、永久歯の生え変わり時期の前後に、上下の顎がうまくかみ合うように調整する役割も果たします。

<霊長空隙>
 ●上顎:乳犬歯と乳側切歯との間の隙間 
 ●下顎:乳犬歯と第一乳臼歯との間の隙間
<発育空隙>
 ● 霊長空隙以外の隙間のこと

しかし、乳歯が生え揃ってまもない頃は隙間がなくても、永久歯が生え始める頃に顎の成長も伴うので、この時期に隙間ができて永久歯が生えるスペースが確保されることもあります。

また、乳歯は歯の性質上、永久歯よりむし歯になりやすいです。隙間がないと歯間の清掃性が低下し、むし歯のリスクがより高まってしまいます。
むし歯が大きくなり、通常の歯牙交換期よりも早く歯が脱落してしまった場合、乳歯の位置関係が崩れてしまい、永久歯の歯並びに影響することもあるります。
隙間がない場合は、”むし歯”にも気を付ける必要があります。

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なぜ乳歯に隙間がないとどうなるの?

<永久歯列の歯並びへの影響>

乳歯の時に隙間がないと、”永久歯が生えるスペース”がなくなってしまい、歯並びがガタガタ(叢生)・八重歯になってしまいます。
また、隙間がないとこで生え変わりの際に、かみ合わせがズレ、”上顎前突”・”反対咬合”の原因になってしまうこともあります。

<むし歯のリスクを高める>

隙間がないと歯間の清掃性が低下し、むし歯のリスクがより高まってしまいます。

永久歯が生えるためのスペースを作るには?

隙間なく乳歯が生えてしまっていたら….。
永久歯に悪影響を及ぼさないように隙間を作るための処置が必須となります。

永久歯が生えるためのスペース確保のためにできることを詳しくご紹介します。

① 予防矯正

専用のマウスピース装置とトレーニングを行うことで、歯列不正の原因である口呼吸や
低位舌の改善・飲み込み・姿勢等を改善し、正しい顎の発達による綺麗な歯列を獲得する治療のことです。

歯列不正の”原因にアプローチ”し、歯並びが悪くなる原因を取り除きます。

 <プレオルソ>
日中1時間+就寝時にポリウレタン樹脂製のマウスピース型機能矯正装置を装着。
口周りの筋肉の使い方・舌が正しい位置でキープできるようにし、筋肉・顎骨の
バランスを整えます。

▼対象年齢:3歳〜10歳前後(ベストタイミングは5〜6歳)

▼治療期間:1年〜2年半(個人差あり)

 <予防矯正のメリット>
●悪い癖を取り除くことで正しい成長を促せられる  
●健康に良い影響がある
●抜歯せずに歯列を正すことができる        
●従来の矯正治療より早く終わる
●むし歯や歯周病になりにくくしてくれる      
●正しい舌の位置・正しい口腔周囲筋の使い方が身につけられる
●痛みが少なく治療を進められる          
●後戻りが少ない
●価格が安価
悪い歯並びの原因である悪習癖・生活習慣から改善する予防矯正はとても重要であるといえます。

② 床矯正

ネジのついた取り外し可能な装置を口腔内に入れて、顎を広げて歯を並べる矯正方法。
ネジは1週間のうちに数回、自宅で回してもらいます。

10歳頃までに始めるのが望ましいといわれています。
顎骨の成長を利用しながら歯列を広げていくため、骨の成長が止まる・身長の伸びが止まると、治療が難しくなります。

●側方拡大装置
●前方拡大装置 
●閉鎖型装置 
●後方拡大装置 
等があります

 <側方拡大装置>
床矯正の中で1番多く使用される装置です。平行タイプと、中切歯〜犬歯までの拡大を
対象としたファンタイプがあります。
1つの装置で7㎜程度広げることが可能です。

 <前方拡大装置>
ネジが側方拡大装置と90度反転して付与された装置。前歯部を前方に押し出すために
使用され、主に反対咬合の治療に用いられます。

 <閉鎖型装置>
仕上げ用に用いられる装置。歯軸を整えたり、保定として用いられます。

 <後方移動装置>
臼歯部を後方移動するために使用する装置。後方移動する方向に対して平行にネジが
ついています。
▼開始年齢:成長段階にあり、混合歯列期のお子さん。5〜10歳頃まで
▼治療期間:1年〜1年半(個人差あり)

③ ヘッドギア

成長の適切な時期に使用することで、上顎の過成長を抑制し、下顎骨の成長を正しく
導く効果があります。その他にも、奥歯の位置を後ろに動かすことで、将来生える永久歯のスペースを確保する効果があります。

 <使用方法>
上顎6歳臼歯にバンドと呼ばれる金属の輪っかを装着し、そのバンドの外側にはチューブが溶接されています。
そこに、フェイスボウと呼ばれる装置を差し込みます。
次に、フェイスボウの外側に、首から回したゴムのバンドor頭に被った帽子から伸びたゴムを引っ掛けます。
上顎6歳臼歯に対して後方へ引っ張る力をかけます。使用は在宅時のみです。

▼開始年齢:6〜8歳
▼治療期間:半年〜1年(個人差あり)

④ ワイヤー矯正

ブラケットと呼ばれる器具を歯1つ1つに接着させ、ブラケットにワイヤーをつけ、歯を移動させる治療法のこと。
一度接着させると簡単には外すことはできません。

▼開始年齢:12歳〜
▼ 治療期間 :2〜3年(個人差あり)

 <メリット>
●歯列矯正の効果が得られやすい    
●歯列を細かく調整することが可能

⑤ マウスピース型矯正装置

一人ひとりに合わせたマウスピースで歯を動かす治療方法。
(マウスピースは1週間〜10日ごとに交換、1日20時間以上つける必要があります。)

小児向けマウスピース型矯正装置がございます。

​​​​混合歯列期(乳歯と永久歯の交換期)のお子さまもマウスピース矯正型矯正装置をお選びいただくことができます。

”顎を拡大させながら、歯列不正・不正咬合の治療を同時に行う”ことが可能です。

口腔内スキャナーによってスキャンしたデータを元に、治療のスタートからゴールまで事前にシミュレーションを行います。

シミュレーションを元に矯正治療が順調に進んでいるかをチェックしながら進めていきます。

▼開始年齢:おおよそ 7〜9歳
(混合歯列期前期から。6歳臼歯と前歯2/3萌出している必要があります。
▼治療期間 :2〜3年(個人差あり)

 <メリット>
●目立ちにくい
●取り外しが可能なので食事・歯磨きがしやすい
●ワイヤー矯正に比べて痛みを感じにくい
●金属アレルギーの心配がない

永久歯への生え変わり時期に気をつけたい点

▼口腔習癖 ”指しゃぶり”
指しゃぶりは安心感を得るため・精神安定をはかるために行っていることが多いです。
永久歯の生え変わりの時期まで、指しゃぶりを続けてしまっていると、出っ歯や不正咬合
顎骨の変形を引き起こしてしまう可能性があります。
3〜4歳までにはやめられるようにしましょう。

▼噛む力を鍛えること
やわらかい食べ物を食事でとっていると、咀嚼力がつきません。咀嚼力がつかないと
顎が発達せず、歯列不正を引き起こしてしまうことがあります。
噛む力を養うための食事をとりましょう。 

▼永久歯が生える時期を確認
乳歯は、永久歯が生える場所を確保して、生えてくるのを待っているため、早く抜けてしまうと歯並びが悪くなってしまいます。
また、乳歯が抜けるべき時期に抜けずに残ってしまうと、永久歯がきちんと生えてくることができません。

▼”きちんと”抜けているか
乳歯が残ったまま永久歯の萌出が進むと、本来あるべき位置に永久歯が萌出できなくなってしまいます。
必要に応じて乳歯の抜歯を行った方が良い場合もあります。

▼永久歯のむし歯と生える際の歯肉炎
生えたばかりの永久歯はむし歯になりや必要、特に”生えてから2年間”はより注意が必要です。
また、萌出途中の歯は一部が歯茎に覆われていて、ブラッシングがしにくく、汚れや食べかすが溜まってしまい
歯茎に炎症、”歯肉炎”が起きやすいです。
むし歯や歯肉炎にならないように、ブラッシング・仕上げ磨き・間食への配慮・定期検診等を心がけましょう。

乳歯の歯並びが気になったら歯科医へ相談を

”隙間がない”・”ガタガタに生えている”等、乳歯の歯並びで気になる点があれば、早めに歯科医院の受診をしましょう。
早めの受診で治療の選択肢が増えることもあります。
また、何も問題がなく、成長とともに改善していくものであったと確認ができるかもしれません。
東京日本橋エムアンドアソシエイツ矯正歯科ではお子さんの歯科相談について随時、カウンセリング・ご相談を受け付けております。

お気軽に足を運んでいただき、まずはカウンセリングでご希望や心配点・疑問点などお聞かせ下さい。
それではあなたからのご相談をお待ちしております。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。