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歯列矯正の基礎知識コラム

芝生で寛ぐ外国の老夫婦

歯列矯正をする際に抜歯の必要がある人も多いかもしれません。抜歯をすると歯の本数が減るため、抵抗を感じることもあると思います。ところが、抜歯をして矯正することには、噛み合わせが改善して逆に歯の寿命が延びるというメリットもあります。
今回は、抜歯を伴う歯列矯正のメリットやリスク、また老後の歯の健康について解説していきます。

【目次】
1、老後も健康な歯を維持したい!歯列矯正の魅力とは
2、老後はどうなる?抜歯が必要な歯列矯正の特徴

老後も健康な歯を維持したい!歯列矯正の魅力とは

現在、厚生労働省と日本歯科医師会によって「8020運動」が推奨されています(「8020運動」とは、80歳で歯が20本以上残っていることを目標にする運動のこと)。

80歳で歯が20本以上残っていれば、ある程度硬い食べ物でも不自由なく食べられます。問題なく外食もできるため、気軽に友人と会ったり、旅行に出かけたりと、社交的で活発な生活を送ることができるでしょう。

実際、老後に後悔している健康上の悩みとして「歯」に関することを挙げる年配の方は多く、高齢化が進む日本において、健康な歯を維持することはとても重要な課題であることがわかります。


抜歯を伴う矯正に不安を感じる人も多いのではないでしょうか。抜歯をすると、単純に歯の本数は減ってしまいますので、今、抜いてしまっては老後に後悔するかもしれないと思う気持ちはわかります。ところが、老後に健康な歯を多く残すには、歯並びによっては抜歯も念頭に置いて矯正したほうがいいといわれているのです。

80歳で歯が20本以上残っている人のほとんどは、歯並びがよく、噛み合わせがしっかりしているという特徴があります。そのため、多くの健康な歯を残すには、必要最小限の抜歯と矯正で歯並びを改善することが望ましいのです。

8020が叶う歯列矯正のメリット

歯並びや噛み合わせが悪い「不正咬合(ふせいこうごう)」は、口元だけではなく、身体のあちらこちらに影響を及ぼす不具合です。近年は、60歳以上でも矯正治療を受けられる「大人の歯列矯正」が増えてきていますが、不正咬合の人が歯列矯正を行うと、歯や顎から全身にかけて、健康面でさまざまなメリットが生じるといわれています。下記に歯科矯正が必要な症例と、歯科矯正のメリットをそれぞれ書き出してみました。
矯正で噛み合わせを改善すれば、8020にかなり近づけるかもしれません。

【歯列矯正の必要な不正咬合】

  • 歯がデコボコに生えている「叢生(そうせい)」
  • 歯と歯の間に隙間がある「すきっ歯」
  • 歯を噛み合わせたときに上下の前歯の間に隙間が空いている「開咬(かいこう)」
  • 歯が前に出ている「出っ歯」
  • 上の前歯が下の前歯に被さるように噛み合わせが深い「過蓋咬合(かがいこうごう)」
  • 上の歯よりも下の歯が前に出ている「受け口」
  • 歯の中心のずれ など

【歯列矯正のメリット】

  • 歯並びが整い、美容面が改善
  • 虫歯や歯周病の予防
  • 食べ物を噛む機能の改善
  • 歯が出ていることで閉じられなかった唇の改善
  • 歯の隙間からの空気漏れを改善し、発音が明瞭化
  • 噛み合わせ、顎関節のずれなどによる顎関節症の予防と改善
  • 運動能力や身体のバランスの改善
  • 一般歯科の治療が受けやすくなる など

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老後はどうなる?抜歯が必要な歯列矯正の特徴

いつまでも健康に暮らすためには、丈夫な歯で栄養のある食事をとることが大切です。噛み合わせのよい歯でよく噛むことは脳の活性化につながるため、認知症の予防にも役立つでしょう。

とくに高齢になると、口の中の状態は徐々に変化していきます。普段から十分に口の中をケアしていないと、歯の健康を保つことはできません。

歯並びのバラバラな口内環境は、細部までケアが行き届かないので、虫歯や歯周病につながる可能性があります。しかしその点、歯列矯正後の歯並びのよい口内環境なら安心です。ケアがしやすく、歯の健康を保つことができるでしょう。年配の方に起こりがちの口内のトラブルを挙げておきます。

【年配の方に起こりやすい口内トラブル】

  • 歯と歯肉の境目のすり減りなどから歯茎が下がる
  • 唾液の分泌量が減り、口臭が起きやすくなる
  • 歯茎が下がって露出した歯根部に歯垢や歯石がつきやすい
  • 歯や入れ歯についた細菌が増殖しやすい など

抜歯をするメリット

歯列矯正には抜歯が必要な矯正と抜歯が必要のない矯正があります。

顎にスペースが少ないと、歯が「おしくらまんじゅう」のように窮屈に並んでしまい、歯並びが悪くなります。このような状況を変えるには、抜歯がベストの選択肢です。矯正前に抜歯をすることで、歯並びが無理なく整えられ、後戻りもしにくくなります。

抜歯をしないデメリット

もしも、抜歯をしないで無理やり歯並びを整えようとすると、歯が土台から外れて歯茎が下がったり、並びきれない歯が前にせり出したりすることがあります。歯が混雑してスペースがないために奥歯までずれてしまうと、今度は健康維持に重要な役割を果たす噛み合わせに大きな影響が出る可能性があります。

多くの方が抜歯による痛みや歯が減ることに不安を感じます。ただ、状況によっては歯列矯正をするために抜歯が必要なのです。その後の歯列矯正により歯並びが美しく改善されたなら、8020、いやさらにその上を行く健康的な歯を手に入れることも夢ではありません。抜歯は大きなメリットにつながるのです。

老後を健康に過ごすには、歯並びはとても大切です。当院では、抜歯・非抜歯両方のシミュレーションを行った上で、一人ひとりにあった治療プランを提案を行っています。噛み合わせに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。