COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:歯科医師 / 矯正指導医 増岡尚哉】


下の顎が前に出ている「しゃくれ」は、噛み合わせや発音にも異常を生じる場合があります。そして、顔貌(がんぼう、と読みます。いわゆる「顔つき」のことです)に悩みを持つ人が多いのではないでしょうか?今回は「しゃくれ」のタイプやその原因、そして予防する方法やしゃくれを治す矯正治療についてお話していきたいと思います。


【目次】
しゃくれの主な原因と治療方法
①歯並びに問題のあるケース】
②下の顎の位置や大きさに異常があるケース】
“横顔美人”を左右するEライン
Eラインを目指すにはインビザラインがおすすめ
・習癖を治すことでしゃくれ改善も期待できる
子供のしゃくれにもインビザラインは有効
・子供の歯列矯正を始めるにはいつ頃がいい?


しゃくれの主な原因と治療方法

「しゃくれ」には2タイプがあります。

【①歯並びに問題のあるケース】

骨格的に問題がなく、歯並びが「しゃくれ」の原因になることがあります。前歯は上の歯が下の歯を少し覆うような位置に生えているケースを「反対咬合」と呼びます。

前歯が内向きに生える、下の歯が外向きに生えることで、前歯の噛み合わせが反対になる場合があります。噛むときに顎を前に突き出す、舌で下顎の前歯を押し出すなど幼少期の癖が長期的に続いてしまった場合があります。

しゃくれの原因が歯並びのみにある場合であれば、矯正治療によって歯並びを変えることで症状を改善します。簡単なイメージにはなりますが、取り外し式または固定式の装置を使い、上の前歯を前に押し出して反対咬合を改善します。

未成年期など、骨格がまだ成長期にある場合には、下顎の成長を抑える装置や上顎の前方成長を誘導する装置を使用し、上下顎の成長バランスを整えながら咬み合わせを改善していきます。

成人の場合には上顎歯列を前に出し下顎歯列を後ろに下げる治療になり、場合によっては抜歯が必要となることもあります。

【②下の顎の位置や大きさに異常があるケース】

下の顎の位置や大きさに異常がある「下顎前突症」のケースです。下顎の骨が前方に突き出し、それによって噛み合わせも全体に前方へずれてしまいます。

下顎前突症のように骨格的に異常があるしゃくれは、その原因に遺伝的要素が関係しています。人種的に見ても、日本人を含む黄色人種は、他の人種よりも下顎前突の人が多いようです。

指しゃぶりや舌を前に突き出すような習癖によっても引き起こされることもあり、口呼吸も顎をしゃくれさせる大きな原因です。

遺伝的な要素のある場合はこうした悪習癖が骨格的な受け口に移行しやすい特徴があり、できるだけ早い時期から受け口のコントロールをする必要があります。

お子様であれが悪習癖の改善や口腔機能のトレーニングが有効ですが、成人の方で大きく顎の位置を変えるようなケースでは、矯正治療に加えて外科的治療(顎の手術)を伴うことがあります。

外科的矯正における手術は10~14日ほどの入院が必要となり、手術の術前矯正と術後矯正を行うことが必要になります。治療開始から終了まで通常の矯正治療より長い期間がかかる場合があります。

①と②が複合的に組み合わさった症例もあり、両方へのアプローチが必要になることもあります。正確な治療方法については、歯科医師による診査・診断が必要です。

“横顔美人”を左右するEライン

Eラインは横顔の鼻先と下あごの突端部を直線で結んだラインのことを言います。この線上や内側に唇が納まっている横顔が美しいといわれています。

「しゃくれ」というと骨格的に問題があるように思ってしまいますが、全ての方が外科手術が必要なわけではありません。当院はマウスピース矯正「インビザライン」の専門クリニックですが、歯並びの矯正によって下顎前突を治療した実績も豊富にございますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

Eラインを目指すにはインビザラインがおすすめ

矯正治療には大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。

従来のワイヤー矯正と違い、透明なマウスピース型のため治療中でも目立ちにくく、痛みや違和感が少ない。取外しが出来るため虫歯、歯周病などのリスクを軽減できます。

関連記事:
マウスピース矯正ではどのように歯を動かしているのか?

習癖を治すことでしゃくれ改善も期待できる

しゃくれには習癖が原因で引き起こされる場合があります。「癖」がある方は、そのくせを見直す事で予防につながります。

例えば、しゃくれを引き起こしやすい原因の1つが舌の位置です。

舌は安静にしている時に、上の顎と接触している状態が正しい位置になります。しかし舌が上の顎ではなく、下の顎の内側にすっぽりと入り込んでいる場合、舌が下顎を前に突き出す力が加わり、しゃくれの原因になります。

指しゃぶりや爪噛み、または下の顎をわざと突き出すといった行為によっても引き起こされます。特に成長過程の子供には注意が必要です。早いうちにこのような癖を治しておく必要があります。

子供のしゃくれにもインビザラインは有効

インビザラインでの治療をはじめる事が出来る目安は、基本的に永久歯が生え揃ってからとなります。お口の中の状態が永久歯に生えそろっていれば年齢に関係なくインビザラインで治療をする事が可能です。

子供の歯列矯正を始めるにはいつ頃がいい?

子供の矯正治療には2段階に分かれています。

まずは小学生の頃に骨格矯正と言って顎の大きさやバランスを整える治療を行ないます。そして中学生から高校生くらいで、歯の位置や向きを動かす歯列矯正を行います。

第1期:6〜10歳
この時期は、まだ顎の骨が柔らかく成長もしており、この時期にしかできない「顎の調整」をする事ができます。

第2機:11〜15歳
永久歯が生え揃ってから行う矯正治療です。ワイヤーやマウスピースなどで治療をします。第1期を治療しておくことで、永久歯が不正な位置から生えることなくおおよそ正しく並ぶようになります。

「無料カウンセリング」で、矯正認定医に相談してみませんか?

当院では、歯並びや口元でお悩みの全ての患者様に「無料カウンセリング」を行っております。

・自分の横顔は矯正でどこまで治るのか?
・マウスピース矯正とワイヤー矯正はどう違うのか?

など、どんなことでもご相談ください。

エムアンドアソシエイツ矯正歯科は全国主要都市に展開する矯正専門のクリニックです。経験豊富な矯正医に直接ご相談いただけますので、どのような治療方法が最適なのかを一緒に検討していきましょう。

無料初診カウンセリングを予約する





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。