COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】


”審美性”や”清掃性”の面から選択されることが多いマウスピース型矯正装置による矯正治療。

しかし、”こんな予定ではなかった”というネガティブな言葉も目にします。インビザライン矯正を考えている方に、後悔しないで矯正治療をすすめるために知っておくべきことをご紹介します。

【目次】
1.ネットで聞かれる後悔の声
  ・後悔の声①”動いている実感が得られない”
  ・後悔の声②”思った以上に手入れが面倒だった”
  ・後悔の声③”矯正後に後戻りしてしまった”
  ・後悔の声④”歯の根元が歯槽骨から出るなど歯茎が下がってしまった”
  ・後悔の声⑤”矯正治療が長引いている”
  ・後悔の声⑥”思うような仕上がりになっていない”
  ・後悔の声⑦”装着時間が守れない、自己管理が難しい”
  ・後悔の声⑧”矯正器具を装着すると痛い、違和感がある”
  ・後悔の声⑨”矯正中に虫歯や歯周病が進行した”
  ・後悔の声⑩”矯正中に輪郭が変わった”
2.後悔しないためにすべきこと
  ・①リスクや仕上がりイメージをしっかり確認しておく
  ・②実績があり、信頼のおける医院を選ぶ
  ・③装着時間、保定期間をしっかりと守る
  ・④口内をきれいに保つ
  ・⑤定期的に通院する
  ・⑥痛みや違和感を感じたらかかりつけ医に相談する
  ・⑦治療に納得がいかなかったらセカンドオピニオンを聞く
3.矯正治療をやってよかったと感じていただくための当院の取り組み

ネットで聞かれる後悔の声

インビザライン矯正についてインターネットで検索すると、”後悔”・”失敗”の言葉も目にすることもあります。どのような点で後悔ポイントが高くなってしまっているのか、10の項目に分け、詳しく解説します。

後悔の声①”動いている実感が得られない”

安全に歯を動かすために、1つのマウスピースで動く歯の移動距離は0.25ミリに設定されています。

加えて、臼歯(奥歯)から順番に動かすことが多いため、「前歯の変化を求めている方」「口元の突出感を下げたい方」の場合、”なかなか動いている実感がない”と感じられることが多いと考えられます。

これに関しては、矯正を始める前に「私の場合、いつ頃から変化が分かりますか?」などと聞いていただくのが一番良いと思います。

インビザラインは事前に3Dシミュレーションが可能なので、大体いつ頃から目に見える変化が現れるかも事前に予測することが可能です。

あくまで一般的な目安ですが、早い方では半年くらいからご自身で分かるくらいの変化が現れることが多いです。

その他の考えられることとしては、

・1日20時間以上という装着時間が守れていなかった
・きちんとマウスピースがはまっていなかった

といった装着ミスによって治療が進みにくくなり、歯が動いている実感が得られない場合もあります。

後悔の声②”思った以上に手入れが面倒だった”

マウスピース矯正は、装置の取り外しが可能というメリットがありますが、逆を言えば食事の度に毎回取り外す必要があります。

基本的には、水を飲むとき以外には装置を外していただくことが望ましいため、間食を取ることがある方や、水以外の飲み物をよく飲まれる方の場合、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。

また食事の後はそのままマウスピースをつけるのではなく、虫歯予防のためにもうがいや歯磨きをしていただいた方が良いです。職場や学校では、そういったひと手間が面倒に感じる場面があるのかもしれません。

ワイヤー矯正は固定式でこういったストレスはありませんが、繊維の多い食事やワイヤー装置に絡まるような食事を避ける必要があり、それぞれにメリット・デメリットが挙げられます。

後悔の声③”矯正後、後戻りしてしまった”

矯正治療が終わった直後の歯は、元の位置に戻ろうとする働きがあります。

これはマウスピース型矯正装置による矯正治療に限った話ではありませんが、矯正完了後は”保定期間”といって、歯並びを固定するために「リテーナー」という装置を一定期間つける必要があります。

マウスピース型矯正装置による矯正治療でもワイヤー矯正でも、リテーナーを正しく装着しないと、後戻りしてしまう可能性があります。

その他に考えられることとしては、治療計画の時点で無理があった可能性も考えられます。

歯はかみ合わせによってバランスが保たれています。見た目だけがきれいになったとしても、かみ合わせまでしっかり計算されていなければ、時間と共に歯並びがもとに戻ってきてしまう可能性があります。

実際に、当院にも「過去に他院で矯正治療をしたが、すぐに戻ってきてしまった」という再治療のご相談をいただくことは少なくありません。

後戻りしないためには、きちんとした治療計画で歯を動かし、治療後のリテーナーをしっかりと装着することが大切なポイントとなります。

後悔の声④”歯の根元が歯槽骨から出るなど歯茎が下がってしまった”

矯正治療は、力をかけて歯を動かすため、歯には負担がかかります。

マウスピース型矯正装置による矯正治療に限ったことではありませんが、適正な力で歯を動かすことが出来ていれば問題ありませんが、無理な力をかけたり、顎骨の厚みや歯根の位置を無視して歯を動かしたりすると、歯根が露出する・歯がしみ続ける・歯ぐきが下がってお顔の印象が変わるといったことに繋がります。

マウスピースでは光学カメラでお口をスキャンし、AIによるシミュレーションを行うことができますが、そのデータには「顎の骨の厚み」「歯根の長さ」といったデータは含まれていません。

歯は、顎の骨の中に埋まっています。顎の骨の範囲の中でしか歯を動かすことはできません。

そのため、本来であれば別途撮影したCTやレントゲンのデータと照らし合わせながら、安全で無駄なく歯を動かせるように検討する必要があります。

AIは優れたテクノロジーですが、やはりそれだけでは不十分。矯正医の知識・経験と組み合わせて使用する必要があるのです。

もしどうしても心配な場合には、

「歯が歯ぐきから飛び出すことがあると聞いたのですが、私は大丈夫でしょうか?」
「この治療計画は、顎の骨や歯根のデータも踏まえて立てられていますか?」

などと聞いてみると良いかと思います。

後悔の声⑤”矯正治療が長引いている”

治療期間が延びてしまう原因として、以下のようなパターンが考えられます。

  • マウスピースを紛失し、再作製になってしまった
  • アタッチメント(歯の表面のポッチ)が外れたまま放置してしまった
  • 1日20時間以上装着出来ていなかった
  • 指示通りの通院を怠ってしまった
  • 矯正治療中に虫歯になってしまい、一時的に矯正を中断することになった 等...

マウスピース型矯正装置による矯正治療で治療期間を早く終わらせるための方法は

治療期間に無駄がないドクターを選ぶ

そして、

装置を毎日正しく装着する

この2つです。とてもシンプルですが、どちらもママウスピース型矯正装置による矯正治療では非常に重要なポイントです。

もちろん、ときにはどうしてもマウスピースを装着できない日もあるかと思います。その際には、担当医に連絡をし、指示を仰ぐようにしてください。早い段階で相談いただければ、そのまま問題なく治療を進められることもあります。

もしあなたが一日でも早く理想の歯並びを手に入れたいなら、

・治療前に、担当医に治療期間を確認すること
・矯正中はとにかく装着時間を守ること

この二つを徹底することが最短ルートと言えるでしょう。

後悔の声⑥”思うような仕上がりになっていない”

・1日20時間以上装着出来ていない
・マウスピースの交換時期を守れていない

など、装着時間や交換のルールが守れていないと、思うように治療が進まないことがあります。

矯正治療中に虫歯になってしまうと装置を外して虫歯治療を優先しなければならなくなります。

歯列矯正と直接関係ないように思えるかもしれませんが、日ごろから虫歯予防をする、風邪などを引かないように体調管理をするといったことも、結果的に理想の仕上がりにするためには重要です。

後悔の声⑦”装着時間が守れない、自己管理が難しい”

マウスピース型矯正装置による矯正治療のメリットは、自身で着脱ができるため、清掃性が高いという点ですが、自身で着脱の管理をしなければなりません。

先ほどもご説明した通り、マウスピース型矯正装置による矯正治療で患者様に守っていただくべき最も重要なポイントは、”装着時間”です。

・1日20時間以上装着すること
・適正な時期(1週間〜10日)にマウスピースを交換すること

これを徹底していきましょう。

ライフスタイル的に、どうしても一日の装着時間が20時間を切ってしまいそうな場合は、無理をせず事前にドクターに相談すると良いでしょう。

後悔の声⑧”矯正器具を装着すると痛い、違和感がある”

マウスピース矯正でワイヤー矯正でも同じで、歯を動かす時の痛みはゼロではありません。残念ながら、違和感や痛みが「全くない」矯正治療方法はないでしょう。

マウスピース矯正で痛みを感じやすいタイミングとしては、新しいマウスピースへ交換してから日が浅いときに違和感を感じやすいです。

数日で落ち着けば問題はありませんが、痛みが長引いたり、歯の色が変わってきたような気がするなど、何か変化に気づいたときには、無理をせず早めに歯科医院を受診することをお勧めいたします。

後悔の声⑨”矯正中に虫歯や歯周病が進行した”

マウスピース矯正をしていると、歯の表面はマウスピースに覆われていて唾液が行き届かなくなります。

唾液には、

●再石灰化作用(砂糖などの食事で溶けた歯の表面を修復してくれる作用)
●自浄作用(口腔内の汚れを洗い流し、きれいに保つ作用)
●抗菌作用(抗菌物質によって、粘膜等を保護する作用)
●緩衝作用(細菌の繁殖を抑える作用)

といった作用があり、細菌の増殖を防ぐ、虫歯・歯周病、口臭を予防するなどの役割があります。

マウスピースは着脱が可能なので清掃性は高いですが、唾液が行き届きにくくなってしまうため、デンタルフロスなどの補助用具も用いて口腔内のケアをしっかりしていきましょう。

マウスピースをつけたままジュースを飲んだり、装着する前の口腔内が不衛生だと虫歯のリスクが高まることが考えられるため、お勧めできません。

後悔の声⑩”矯正中に輪郭が変わった”

矯正治療を施すことで、噛み合わせが変わります。その結果、咬筋が発達してエラの張りが目立ったように感じる、あるいは、咬筋が緩み、頬がやつれたように見えることがあります。

また、マウスピース型矯正装置による矯正治療に限らず、矯正治療のために抜歯をした際、頬がやつれたり、ほうれい線が濃くなったと感じることがあります。

しかし、マウスピース型矯正装置による矯正治療は、ワイヤー矯正に比べて緩やかに歯を移動させるので、急激な顔立ちや輪郭の変化は引き起こしにくいとされています。

抜歯が必要と言われたり、輪郭の変化について心配に感じた場合には

「輪郭やほうれい線はどこまで変わってしまうのか?」

といった質問をしたり、ご自身と似た症例のビフォーアフターを見せてもらったりするとより安心できるかと思います。

後悔しないためにすべきこと

矯正治療は、安いものではありませんし、半年~2年という期間を要します。”やらなきゃよかった”と失敗や後悔しないために、マウスピース型矯正装置による矯正治療の特徴を理解し、気をつけるべき7つのポイントをお伝えします。

①リスクや仕上がりイメージをしっかり確認しておく

矯正治療終了後のイメージが思っていたものと違ったと感じることがあります。
事前に治療ゴールのシミュレーションを担当医と確認し、自分のイメージと合っているのか照らし合わせましょう。

②実績があり、信頼のおける医院を選ぶ

マウスピース型矯正装置による矯正治療は長期間に及びます。

  • 症例の見極め
  • 治療中のトラブルへの対処法
  • マウスピース型矯正装置への習熟度

が重要です。実績があり、信頼のおける歯科医院を選びましょう。

信頼ができ、実績のある歯科医師であれば、予期せぬトラブルの際にも柔軟に対応してくれます。

③装着時間、保定期間をしっかりと守る

失敗に終わったケースで最も多い原因は”装着時間の不足”です。

マウスピースの装着時間は1日20時間以上です。この装着時間を守ることが出来なければ歯は治療計画通りに動かず、治療期間が延びてしまいます。

装着時間は必ず守るようにしましょう。

矯正完了後、”保定期間”を終えることで矯正治療は終了となります。リテーナーの装着を怠ると後戻りはしてしまいます。

自己判断でリテーナーの装着を中断しないようにしましょう。

④口内をきれいに保つ

矯正治療中に虫歯や歯周病になってしまうと装置を外して治療を優先しなければならなくなります。装置を外すということは、矯正治療期間も延びてしまいます。

虫歯や歯周病に罹患して矯正治療期間が延びることがないように、ブラッシングだけではなく、デンタルフロスなどの補助用具も用いて口腔内のケアに努める必要があります。

装着する前も、念入りなブラッシングをはじめとした口腔ケアに努めましょう。

⑤定期的に通院する

マウスピース型矯正装置による矯正治療では、定期的に通院し、歯を少しずつ動かしていきます。通院を怠ると、次のステップに入るのが遅くなってしまいます。

⑥痛みや違和感を感じたらかかりつけ医に相談する

上記で述べたように、新しいマウスピースへ交換してから日が浅いと痛みや違和感を感じやすいです。数日で落ち着けば問題はありませんが、長引く場合は、虫歯や歯周病の可能性もあります。

”噛むと違和感がある”・”痛みが強い”・”痛みが長引く”などがあれば、我慢をせず、早めに受診をしましょう。

⑦治療に納得がいかなかったらセカンドオピニオンを聞く

セカンドオピニオンを受けることで選択肢が広がったり、同じ結論が出て、治療内容に納得することができたり、治療への理解が深まります。

<セカンドオピニオン>
セカンドオピニオンとは、納得のいく治療方法を選べるように、主治医とは違う医師に
診断・治療方針について求める”第二の意見”のことです。セカンドオピニオンを聞くことで、患者さん自身が治療への理解を深め、最善の治療方法を選択できます。

<セカンドオピニオンの流れ>
① 主治医の意見をよく聞いてから理解する
② セカンドオピニオンを受ける医院を決める
③ 主治医にセカンドオピニオンを受けることを伝え、紹介状・必要データを受け取る
④ セカンドオピニオンを受ける
⑤ 主治医に、セカンドオピニオンを受けた医師から受け取った書類を渡し、結果を
 伝えて相談する
⑥ 治療する医院を決め、主治医にご自身の出した結論を伝える

治療に不安があったり、納得できな場合はセカンドオピニオンを聞くのも一つの手です。

矯正治療をやってよかったと感じていただくための当院の取り組み

当院では、矯正歯科医が実際の口腔内の状態を確認し、カウンセリング・治療方法のご提案をさせていただいております。

初診カウンセリングでは、

  • 口腔内診察・写真撮影
  • 光学印象:光学印象を元に簡単なシミュレーションを作成し、治療後のイメージをご覧いただきます。

以上のことを実施しております。

また、当院では患者様がご自身の治療のゴールを明確にイメージできるよう、以下の取り組みも行っております。

① 頭部全体のエックス線撮影をするセファロ検査を実施
② CTスキャンを使用し、歯根・顎骨を踏まえた多角的な検査を実施
③ 精密検査を実施し、分析診断した上での治療
④ 治療計画・トータルでかかる費用について詳しく説明
⑤ 治療後2年間の後戻りの保証
⑥リスクと予防方法についてのご説明
⑦ご自身と似た症例のビフォーアフターをご紹介
⑧納得がいくまで説明をし、同意を得た上で治療をすすめます。

来院診察以外にもオンライン診療やメール相談など様々なご相談方法をご用意しております。気軽に足を運んでいただき、まずはご希望をお聞かせ下さい。

それではあなたからのご相談をお待ちしております。

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【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。