COLUMN

歯列矯正の基礎知識コラム

【監修:増岡尚哉】



内側から生えてきてしまうこともある永久歯。珍しい現象ではありませんが、状況によっては注意が必要な場合もあります。様子を見ても良い場合、どのような状態では注意が必要なのかを詳しく解説していきます。

【目次】
1、ひとまず様子を見ていても大丈夫
 ・子どもの永久歯が内側から生えてくる理由
2、こんなときには注意
 ・なかなか乳歯が抜けない
 ・乳歯が抜けたのになかなか改善しない
3、治療の方法
 ・マウスピース型矯正装置による小児矯正
 ・歯並びを整えるために「予防する矯正」
4、内側に生えてきた永久歯を放置するリスク
5、「矯正が必要かな?」と思ったら当院の矯正相談を活用

ひとまず様子を見ていても大丈夫

内側から永久歯が生えてくることは、”生え変わりの時期”にはよく起こることで珍しくはありません。生えたばかりの時は、内側に位置していても成長過程で舌に押されて、正しい位置に並ぶことも多いため、一度様子を見ても問題ないと言えるでしょう。

乳歯が残った状態で永久歯が内側から生えてきてしまっても、乳歯がぐらぐらですぐに抜けそうな場合は無理に抜歯をする必要はありません、無理に抜歯をすることでお子様に恐怖心を与えてします可能性があるからです。

しかし、乳歯の動揺が少ない場合は、乳歯の歯根が長く残っている可能性が高く、脱落まで時間を要することが考えられます。その場合は、抜歯を検討する必要があります。

食事が取りづらい、永久歯が完全萌出していてなかなか乳歯が抜ける様子がない場合は、歯科医院の受診をおすすめします。

子どもの永久歯が内側から生えてくる理由

<顎骨の成長がゆっくり>

顎の成長がゆっくりで顎が小さく、歯がきちんと並ぶスペースがないために内側から生えてきてしまうと考えられています。
永久歯は並ぶスペースがないと、別の場所からでも生えてこようとするために、本来生えてくるべき場所とは異なる場所から生えてきてしまいます。

<歯が生える順番によってスペースがなくなる>


右記の図は、永久歯に生え変わるおおよその年齢を表した表です。

しかし、人によって生え変わる年齢や順番は異なります。
必ずしも順番通りでなければならないということはありませんが、順番が前後することで後から生えてくる歯のスペースがなくなってしまい、本来生えてくるべき場所
とは異なる場所から生えてきてしまう可能性もあります。

こんなときには注意

なかなか乳歯が抜けない

歯茎の中で永久歯の位置がズレてしまい、乳歯の根っこをうまく溶かすことができないと乳歯は動揺せず、脱落しません。このような状態で、乳歯が抜けずに永久歯が生えてきてしまった場合は、乳歯が長く残ってしまい、永久歯の萌出に悪影響を及ぼします。

  • 乳歯が動揺していないのに永久歯が生えてきてしまった
  • ぐらぐらしていてもその状態で長期間乳歯が抜けずに残っている

このような場合は、早めに歯科医院の受診・抜歯の検討が必要です。

乳歯が抜けたのになかなか改善しない

乳歯が抜けずに内側から永久歯が生えてきてしまっても、乳歯が抜け次第、徐々に正しい位置に移動をします。しかし、顎の成長が不十分なために、スペースが不足していると、内側に生えている永久歯は正しい位置に移動することはできません。
顎の成長に伴って、徐々に永久歯が移動することもありますが、歯列矯正が必要となる場合が多いので、注意が必要です。

治療の方法

ワイヤーブラケット
ブラケットと呼ばれる器具を歯1つ1つに接着させ、ブラケットにワイヤーをつけ、歯を移動させる治療法のこと。一度接着させると簡単には外すことはできません。
部分矯正の場合は、ブラケットを治したい部分にだけつけます。

< 治療期間 >
・部分:3ヶ月〜1年半
・全体:2〜3年
※部分矯正・全体矯正共に個人差はあります。

< 費 用 >
・部分:30〜45万円
・全体:70〜150万円

<メリット>
・歯列矯正の効果が得られやすい
・歯列を細かく調整することが可能

<デメリット>
・費用が高い
・取り外しができないため、歯磨きがしにくく虫歯や歯茎の腫れを引き起こしやすい
・ワイヤー調整後は痛みが出やすい
・痛みにより、食事や睡眠に支障をきたすことがある

マウスピース型矯正装置
一人ひとりに合わせたマウスピースで歯を動かす治療方法。
(マウスピースは1週間〜10日ごとに交換、1日20時間以上つける必要があります。)

< 治療期間 >
・部分:3ヶ月〜1年
・全体:2〜3年
※部分矯正・全体矯正共に個人差はあります。

< 費 用 >
・部分:10〜70万円
・全体:70〜100万円

<メリット>
・目立ちにくい
・取り外しが可能なので食事・歯磨きがしやすい
・ワイヤー矯正に比べて痛みを感じにくい
・金属アレルギーの心配がない
・口内炎等の口腔内トラブルがワイヤー矯正より起きにくい

<デメリット>
・取り外しが可能な分、矯正治療の効果はご自身の頑張り次第となってしまう
・装着中は飲食ができない

マウスピース型矯正装置による小児矯正

ワイヤーや拡大床で行うことと同様な治療をマウスピース型矯正装置で行うこともできます。

金属アレルギーをお持ちのお子様や虫歯リスクが高く取り外し式の矯正装置をご希望される場合などはマウスピース型矯正装置をお選びいただくのも選択肢の一つです。

取り外しが可能な反面、装着時間の自己管理が必要になるという点も注意が必要です。

歯並びを整えるために「予防する矯正」

<予防矯正とは>
専用のマウスピース装置とトレーニングを行うことで、歯列不正の原因である口呼吸や
低位舌の改善・飲み込み・姿勢等を改善し、正しい顎の発達による綺麗な歯列を獲得する治療のことです。

<予防矯正のメリット>

  • 悪い癖を取り除くことで正しい成長を促せられる
  • 健康に良い影響がある
  • 抜歯せずに歯列を正すことができる
  • 従来の矯正治療より早く終わる
  • むし歯や歯周病になりにくくしてくれる
  • 価格が安価
  • 正しい舌の位置・正しい口腔周囲筋の使い方が身につけられる
  • 痛みが少なく治療を進められる
  • 後戻りが少ない

悪い歯並びの原因である悪習癖・生活習慣から改善する予防矯正はとても重要であるといえます。

内側に生えてきた永久歯を放置するリスク

  • 歯ブラシが行き届きにくいため清掃性が低下しむし歯・歯肉炎のリスクを高める
  • 歯並びやかみ合わせのズレにつながることがある
  • 咀嚼がうまくできない・栄養バランスが偏ってしまう
  • かみ合わせがズレることで背骨などの骨格にズレることで全身へ悪影響を及ぼす(姿勢が悪くなる・頭痛・運動機能低下など)
  • 八重歯や二重歯列になってしまい、コンプレックスの原因になってしまう

内側に生えてきた永久歯を放置すると上記のようなリスクがあります。

「矯正が必要かな?」と思ったら当院の矯正相談を活用

当院では、矯正医が実際に口腔内の状態を確認し、カウンセリング・治療の提案をさせていただきます。

随時、お子様の矯正治療・予防矯正などに関してのカウンセリング・ご相談を受け付けております。

お気軽に足を運んでいただき、まずはカウンセリングでご希望や心配点や・疑問点などお聞かせ下さい。

それではあなたからのご相談をお待ちしております。

初診カウンセリングはこちらから





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。