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歯列矯正の基礎知識コラム

私たちの歯は、矯正治療をしてもしていなくても、生涯動き続けているということをご存知でしょうか?過去に歯列矯正をしたものの後戻りをしてしまった、という方のお話を伺うと「リテーナーが面倒でさぼってしまった」「失くしたり壊れたりして途中でやめてしまった」という経験をお持ちの方も少なくありません。今回は、きれいな歯並びを保つための正しいリテーナーの使い方や使用期間をご紹介します。

【目次】
1、なぜ、リテーナーが必要なのか?
2、私たちの歯は生涯動き続けています
3、リテーナーの種類は大きく分けて2タイプです。
  ▶固定式リテーナー(フィックスタイプ)
  ▶可撤式リテーナー(ホーレータイプ)
   ・透明マウスピース型のリテーナー
4、リテーナーは一日何時間くらい装着するのが良いか?
  ▶リテーナーをサボってしまうとどうなる?
5、リテーナーを清潔に保つためのお手入れ方法について
  ▶固定式リテーナーのお手入れ方法
  ▶可撤式リテーナーのお手入れ方法
6、後戻りに悩まないためにリテーナーを活用しましょう

なぜ、リテーナーが必要なのか?

矯正治療が終わった後、歯を新しい位置に定着させ・歯並びを保つために使用するのが「リテーナー(保定装置)」です。これは、矯正治療の種類(ワイヤーやマウスピースなど)に関わらず、どんな矯正治療でも必ず必要になります。

矯正治療では歯に一定の力をかけながら歯を動かしていきます。このとき、歯の周りの骨(歯槽骨・しそうこつ)が一方では溶け、一方では再生することで歯が動いています。そのため、矯正治療が終わった後も、リテーナーを装着して歯の周りの骨がしっかりと固まって安定するまで固定していきます。

特に、歯と歯茎を結んでいる繊維(歯根膜といいます)が新しい歯ならびに馴染むまでには時間がかかります。矯正する前の歯の位置を記憶しているため、リテーナーを使用しないと、歯が元に戻ろうと動き出してしまいます。

私たちの歯は生涯動き続けています

「矯正治療が終わった後も装置をつける」というと、大変に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし実は、どんな方でも歯は少しずつ動いています。

いろいろな要因が考えられますが、その一つに加齢に伴う口腔内の変化が考えられます。

年齢に伴って歯茎がやせてしまう(歯を支える骨の現象)、虫歯治療によって形・噛み合わせが変わる、食事や歯ぎしりによって歯が摩耗する、舌や唇の筋肉バランスが変化するなど、歯をとりまく環境が変わることで歯が動いていきます。

そのため「若い頃より歯並びが悪くなった気がする」「歯のずれが大きくなってきた気がする」というご相談にみえる方も多くいらっしゃいます。

矯正治療を受ける・受けないに関わらず、「経年による歯ならびの変化」はどなたでも起こるものであり、一種の生理現象ともいえます。

美しい歯並びをキープするために「体のメインテナンス」としてリテーナーを使用することは非常に大切なことです。

リテーナーの種類は大きく分けて2タイプです。

現在、リテーナーにはさまざまな形や形があります。

大きく分けると、歯に固定する「固定式リテーナー」と、取り外しが可能な「可撤式リテーナー」の2種類があり、材質や装着方法によって細かく分類されます。

先ほどもご説明した通り、保定装置は積極的に取り入れることが理想的です。

「子供の頃にワイヤー矯正をしたけど、ワイヤーが何年も口の中にあるストレスで保定装置を途中でやめてしまった」という方は非常に多くいらっしゃいます。そしてその結果、後戻りが生じているケースも多く見受けられます。

ですから、リテーナーを選ばれる際には「無理なく続けられるもの」を選択されることがオススメです。リテーナーの種類について、それぞれ簡単にご説明させていただきます。

固定式リテーナー(フィックスタイプ)

固定式のリテーナーは主に、下の歯の歯ならびを保つために使用します。下の前歯は歯が小さく、歯の根っこも細く短いため周りの歯の影響を受けやすく、歯並びが戻りやすいためです。

固定式リテーナーを装着する場合は、装置と歯の間に汚れが溜まりやすい点に注意が必要です。磨き残しや汚れが蓄積すると虫歯・歯周病の原因となりますので、きちんとメインテナンスを受けられることをお勧めします。

可撤式リテーナー(ホーレータイプ)

取り外しができるタイプのリテーナーはベッグタイプ・ホーレータイプとも言われます。取り外して食事やお手入れができますが、使用時間・使用方法については担当医の指示に従う必要があります。

取り外しができるタイプのリテーナーは、ワイヤーを使ったものとマウスピース型のものがあります。

当院では患者様によって最適なリテーナーをご提案させていただきますが、主に使用するのはマウスピースタイプのリテーナーです。

・透明マウスピース型のリテーナー

透明なプラスチック製のリテーナーは、矯正治療で使用するマウスピースと見た目はほとんど同じですが、強度が高く耐久性に優れたリテーナーです。

お口の中をスキャンしたデータからリテーナーを作製することができるため何度も型取りで来院する必要はありません。また矯正治療中のスキャンデータを全て記録・保管していくので、歯並びが後戻りしていないかをチェックしていくことができます。

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リテーナーは一日何時間くらい装着するのが良いか?

一般的に、リテーナーを装着している期間は矯正治療(歯を動かす治療)にかかったのと同じくらいの期間がかかります。

矯正治療が終わったらはじめは1日中リテーナーを装着していただき、数ヶ月が経過した時点から担当医の判断のもとで装着時間を減らしていきます。最終的には、夜眠っている間だけリテーナーをつけるくらいに装着時間を減らしていき、医院へ通院する頻度も減っていきます。

ただし、矯正治療後にいつ歯列が安定するかというと、一概に「何日で保定が完了する」とい断言するのは難しい部分です。お一人おひとり骨が固まるまでの時間も異なり、加齢による変化、歯の形態の変化(虫歯治療、歯ぎしり・食いしばりなど)による個人差があるためです。

リテーナーは「使いすぎ」ということはありません。美しい歯並びを維持するために、体のメインテナンスの一環としてリテーナーを日常的に使い続けることはとても簡単で効果的な方法です。

リテーナーをサボってしまうとどうなる?

リテーナーを装着しない場合、治療後数年間であれば歯ならびが大きく変化することはほとんどありませんが、10年ほどするとご自身ではっきりと歯並びが戻っていることに気づくほどの変化が現れはじめます。

もし歯ならびが乱れたらまた治せば良いかというと、そうとも言えません。どんな治療でも、「再治療」というのは基本的に体に負担がかかっていることに変わりありません。

矯正治療で言えば、再治療を繰り返すと「歯根吸収(歯の根っこが短くなること)」のリスクが高まります。再治療によって歯を失う可能性が高いと考えられる場合には、患者様が希望されたとしても再治療をうけることができないケースもあります。

歯を動かす治療は、できるだけ少ない方が歯にとっては安心です。

リテーナーを清潔に保つためのお手入れ方法について

お口の中が不衛生だと、歯や歯ぐきにトラブルが生じるリスクが高まり、同時に口臭の原因にもなってしまいます。リテーナーを清潔に保つためのお手入れ方法についてご紹介させていただきます。

固定式リテーナーのお手入れ方法

固定されたリテーナーは取り外せないため、ご自身でもフロス(糸ようじ)を使用して汚れを取り除きましょう。日々のお手入れの中で取り切れない汚れはプラークや歯石を形成しますので、定期的にかかりつけの歯科医院でクリーニングや健診を受診されると安心です。

可撤式リテーナーのお手入れ方法

食事などの際に装置を取り外すたびにぬるま湯や歯ブラシで清掃してください。取りはずしてから時間が経ってしまうと、リテーナーについている食べ物や汚れが固まってしまう可能姿勢があるので、取り外したら唾液で濡れている間に清掃をしてください。

また、漬けおきタイプの洗浄液なども市販されていますので、臭いや変色などが気になるときには効果的です。

煮沸消毒はリテーナーを変形させる恐れがありますので、担当医やスタッフにご相談の上お手入れを行っていただくのが良いかと思います。

後戻りに悩まないためにリテーナーを活用しましょう

リテーナーは美しい歯ならびを保つためのメインテナンス方法です。ご自身にあったタイプの装置を選び、無理なく続けていきましょう。リテーナーは時間の経過とともに消耗し、お口の中に入るものなので一定期間がすぎたら交換していくと良いかと思います。

エムアンドアソシエイツグループでは、矯正治療後2年間の「後戻り保証」という制度もございます。

リテーナーをしっかりご使用していただいている患者様の場合、後戻りをする方はほとんどいらっしゃいませんが、もしも万が一矯正終了後に「リテーナーが合わなくなってきた」「一部の歯がずれている」などを感じた場合は、すぐにご相談いただければ対応させていただきます。





【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について】

① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。