大きい前歯は削るしかない?自分に合った最善の治療法とは?
ウサギのように大きい前歯。「小動物みたいで可愛い」と言われることがあるかもしれませんが、一方で、前歯だけが目立つため「いっそ削った方がよいかな」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
でも、ご自身の大切な歯ですから、できれば削らずに保持したいものですよね。
今回は、歯を削らずに治療できるケース、削らないといけないケースを具体的に解説します。ぜひ、最後まで読んで、ご自身の症状にあった最善の治療法を見つけてください。
大きい前歯に見える原因
前歯が大きく見える主な原因には、歯自体のサイズが平均より大きい場合と、相対的な見え方によって大きく感じる場合の2パターンがあります。以下にそれぞれの原因について詳しく説明します。
①歯(上顎中切歯)自体が大きい
上顎中切歯、つまり前歯の平均的な幅は日本人男性で約8.6mm、女性で約8.5mm程度です。
また、歯の長さは10〜11mm程度が一般的です。しかし、遺伝や歯の過剰成長(過剰歯)、歯の形状異常などによって、このサイズが平均より大きくなることがあります。
具体的には、前歯の長さが12mm以上、幅が10mm以上である場合、前歯の見た目に影響を与えることがあります。
A.隣の歯が標準より小さい
側切歯など前歯の隣にある歯が極端に小さい場合、前歯が強調されて大きく見えることがあります。このような歯は「矮小歯」と呼ばれ、遺伝やビタミンD不足等が原因と考えられています。
B.隣の歯が舌側に後退している
顎骨が小さかったり、前歯を前に押してしまう舌癖があったりすると、隣の歯が舌側に後退し、前歯が突出することで大きく見えることがあります。
C.前歯が出ている
いわゆる「出っ歯」という状態です。上顎骨の過剰成長や下顎の成長不足など、上下の顎のバランスの悪さに加え、指しゃぶりや口呼吸などの癖・習慣により、上の前歯が下の前歯よりも大きく前に出ていることにより、前歯が異常に大きく見える場合があります。
D.歯茎が下がって見える(歯肉退縮)
年齢を重ねるにつれて、歯肉が下がり、歯根が目立つことで前歯が大きく見える場合があります。これは「歯肉退縮」と呼ばれ、加齢や歯周病、過剰なブラッシング、歯ぎしりや食いしばりなどが原因とされています。
実は、前歯が大きいという悩みを抱えている患者さんには、実際に前歯が大きいケース①よりも、周りの歯などの影響で前歯が大きく見えてしまっているケース②に当てはまる方が圧倒的に多いといえます。
歯を削らずに改善することはできる?
①のように歯自体が大きい場合には、歯を削る可能性もあります。
しかし、前述した通り、前歯の大きい原因のほとんどは歯並びや歯列の影響によるものです。その場合、歯を削ることなく、歯列矯正によって治療が可能なケースも多くあります。
原因別!大きい前歯を改善する治療法
①歯(上顎中切歯)自体が大きい
やすりのようなもので歯のエナメル質の表面を削るディスキング(IPR)という方法がとられます。削り幅は最大0.5mm程度です。エナメル質の厚さは平均2〜3mm程度で、歯の強度や神経に影響を与えることはほとんどありません。
ただし、このディスキングは、施術する医師の腕にたよるところが大きいです。ディスキングへの不安がある場合は、事前にかかりつけ医や矯正医に納得がいくまで相談するようにしましょう。
関連記事:そのディスキング(IPR)は本当に必要?後悔しないために知っておくべきこと
②相対的に前歯が大きく見えてしまう場合
A.隣の歯が平均より小さい
隣の歯が小さい場合には、歯列矯正によって前歯の位置を調整します。矯正だけで調整できない場合には、被せ物や詰め物を施します。主に以下の3つの方法があります。
- ダイレクトボンディング…小さい歯に直接レジンを被せ、歯の形を整える。施術する医師の技量に左右され、かみ合わせに影響を与えやすい。
- ラミネートベニア…歯の表面を0.3〜0.5mm程度薄く削り、薄いセラミックを歯に接着する。セラミッククラウンよりもろく、かみ合わせが悪くなることも。
- セラミッククラウン…歯の表面を1.5〜2㎜程度削り、セラミックを被せる方法。ラミネートべニアより削るため、歯が折れるリスクや神経を抜く場合も出てくる。
セラミックを選択すれば見た目に美しい状態を作ることが可能ですが、やはり歯を削るデメリットがあります。
当院では歯並びを整えることで全体の見た目やバランスを整えていきます。
B.隣の歯が舌側に後退している
この場合は、歯列矯正で改善できます。歯列矯正で、下側に後退した隣の歯を前に出し、歯並びを調整していきます。歯列矯正は歯並びの見た目に加え、かみ合わせも改善できるため、顎関節症や頭痛・肩こりなど、かみ合わせによる副次的リスクも解消できます。
また、この症状の原因が舌癖によるものであれば、矯正と平行して、舌のトレーニング(MFT)も行っていきます。詳しくは、以下の記事をご参考ください。
関連記事:知っておきたい「正しい舌の位置」セルフチェック法と舌癖改善トレーニング方法を解説
C.前歯が出ている
前歯が出ている場合も、歯列矯正が有効です。場合によっては、ディスキングや抜歯を必要とする場合もありますが、当院の場合は、非抜歯や非ディスキングによる矯正方法も提案しています。
関連記事:出っ歯の前歯だけ部分的に矯正することは可能?矯正医が詳しく解説
D.歯茎が下がって見える(歯肉退縮)
歯肉が一度下がってしまうと自然回復が難しくなります。特に、歯肉退縮がひどい場合は、他の部位から採取した歯茎の組織を移植し、退縮した歯茎を回復する再生治療が施されます。回復までに6か月~1年間かかります。
歯肉退縮で露出した歯の根が虫歯や歯周病になりやすくなり、最悪の場合、歯が抜け落ちる可能性もあるので、早めの治療をおすすめします。
全体矯正ではなく部分矯正という選択肢も!部分矯正の注意点
治療費や治療期間を気にする人には、一般的な部分矯正の選択肢もあります。部分矯正では、すべての歯を動かす必要がありません。そのため、必要な部分のみの治療となります。
メリットは、費用も治療期間も全体矯正に比べて大幅に抑えられる点です。
部分矯正でも見た目をキレイに改善できることが多いので、体への負担も小さいでしょう。しかし、部分矯正では上下の歯の噛み合わせは治療できません。
前歯のみの問題であれば影響はありませんが、全体の噛み合わせが悪い場合は全体矯正を行う必要が考えられます。
大きい歯の治療法は、現在の歯並びや目指すゴール状態によっても変わってきます。まずはどんな治療方法があるか、かかりつけの歯科医院で相談してみてくださいね。